サヴァイブ
□万華鏡
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あの太陽のような笑顔を守るためだったら、俺はなんだって出来る。
そんな風に思い始めたのはいつからだっただろうか。
***万華鏡***
「おはよう!」
後ろから聞こえた元気な声。振り向くと、そこには橙色の髪に笑顔を浮かべている彼女。走ってきたのかうっすら汗をかいている。
「ああ、おはよう。また寝坊か?」
彼女、ルナの笑顔を眩しそうに見やりながら返事を返す。
「あ、あはは」
苦笑いと共に、頭をポリポリとかいている。どうやら図星の様だ。
でも違うのよ聞いて、と彼女が一生懸命言い訳を始める。必死な姿は見ていて面白い。
だが、突然そのおしゃべりは止まり、何かを考える様にう〜んと唸りだした。
「どうした?」
と聞く自分も変わったな・・・などと一人思う。
昔だったらそのまま放置だっただろう。
「ねぇ?前にもこんなことなかった?」
「ルナが遅刻ギリギリなのは毎日だろう?」
「違うわよー!!」
頬を膨らませ怒る様子は、まるで小動物が怒るそれと一緒で思わず笑ってしまった。こんな風にルナをからかうのが楽しくなったのはいつからだろう。
もー、毎日じゃないわよ。などとぶつぶつ言う彼女。このままでは本当に臍を曲げてしまう。そうなると厄介な彼女に、何か手を打たないと。
「悪かった。それで?何が同じなんだ?」
話題を戻してみた。それしか出来ない自分の要領の悪さに泣けてくる。まぁ帰還前は、人と会話することも少なかったからな。
「ふふっ」
だが返事と別に薄く笑うルナ。
「どうかしたのか?」
本日2度目の同じ質問。芸がないな・・・。などと内心苦笑した。
「ううん。カオルはやっぱり変わらないなぁ〜って思って。初めて会った時だって・・・。」
「?」
また行動が止まった彼女。彼女の一挙一動に反応してしまう自分。
「あー!!このことだったのね!?納得!!」
訳が分からないが、同じ質問をするのも憚られて、ルナが説明してくれるまで待った。
「私とカオルが初めて会った状況と同じなのよ」
あぁ、なるほどと一人納得する。ルナと出会ったのは今いる校舎前の道だ。
その時も自分は同じ様に一人で歩いていた。
「走らないと遅刻しちゃうよ。」
名前も、顔も知らない女から突然声を掛けられた。
それがルナだ。
当時俺に話しかけて来るのは、根性の曲がったハワードとその取り巻きしか居なかった為、内心かなり驚いたことを覚えている。
返信が面倒で俺は、返事もせずに校舎の壁を飛び越えていった。
その時は、その彼女と今のような関係が築けると思わなかったな。