サヴァイブ

□恋音
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除夜の鐘。
人々の喧騒。
そんな音たちは周りから全て消えてしまった。
だってあなたの声しか聞こえないから。

****恋音*****




シャアラはウキウキしていた。

「金魚すくいやりましょうよ」と金魚すくいの屋台へ走ったり、「あれ取ってくれない?」と射的の屋台に向かってベルを引っ張ったりしていく内に、作戦通り二人だけになることが出来た。

ルナ、メノリと目論んだ「好きな人と二人っきりで年明け☆大作戦」が大成功して、シャアラは嬉しいのだ。
この作戦は他の誰でもない、あのメノリが言い出した作戦だった。

定期的に行われる女子による恋愛報告会。
何か進展があったり、悩みがあるの時に各面々で開かれる会だが、今まで一回も自分から開いたことのないメノリから招集がかかった。

「呼び出してしまってすまない。ちょっと話があってな・・・」
普段のメノリらしからぬ歯切れの悪さに、二人も自然と黙ってメノリが話し出すのを待つ。

紅茶を持って少し伏せていた目を上げ、紅茶を置き話し出した。
「ルナ。お前はサヴァイブの頃から、カオルとアダムの3人で親子にみえるぐらいカオルと仲がいいな?こっちに帰ってきてからも、お前たちは本当に仲が良いな。」

親子って・・・と言いながらまんざらでもない顔をして照れるルナ。

「そしてシャアラ。お前とベルは私が見る限り、もうひと押しの段階まで来ていると思う。」
その言葉に内心ドキッとした。
「・・・そんなことないわよ。」
本心と見栄を隠した精一杯の言葉だった。
「いや。そんなことはないと思うぞ。ベルとシャアラは最近雰囲気が変わってきている。いい方向にな。私がこの中で一番遅れていると思うのだ。ハワードはまだ恋愛に対して子供で、どれだけ私がアプローチしても毛ほども気づかないんだ。」

紅茶を手に持ち、それを一口含むメノリ。
「そこで二人に頼みがある。今年の年末みんなで初詣に行くだろう?そこで・・・」

メノリの頼みを聞いて了承し、帰り道でルナと別れたところでシャアラは先程のメノリの言葉を思い出していた。

"もうひと押し"ね・・・。

端から見たらそう見えるかもしれないことにちょっと嬉しくなりながら、シャアラはベルのことを考えた。
だがいつもベルを見ているシャアラには分かっていた。
ベルはまだルナが好きだ。
いやサヴァイブ遭難時よりその気持ちは落ち着き、今は"未練"という言葉が正しいだろう。
だがカオルとルナが二人でいる様子を見れば、誰もが諦めてしまう。
優しいベルもその一人だ。

シャアラはそんな優しさを持つベルのことが大好きだ。
だからこそシャアラは告白が出来ない。
彼女もまた優しい性格の持ち主だからだ。
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