サヴァイブ
□初詣
2ページ/2ページ
しばらくするとシンゴとチャコもはぐれ、残ったのはハワードとメノリだけになってしまった。
「ハワード。そんなに気を落とすな。あっ、ほら、向こうにお前の好きなりんご飴があるぞ!!」
メノリの指差す先には赤い艶々したあれが並んだ屋台。ハワードはりんご飴が大好物なのだ。
ハワードのあまりの落ち込み様に、気を使ったメノリ。
実はみんながはぐれたのは偶然ではないのだ。
恋する女の子3人組が、それぞれの想い人と最後は一緒にいたいという気持ちが一致し、現在の作戦を実行したのだ。
他のメンバーがどうしているのかは分からないが、きっとうまくいっているのだろう。
だがその作戦のせいでハワードが落ち込んでしまった。
メノリはどうすればいいか分からず、自分たちの満足の為に実行したことを少し後悔していた。
「あっ、あっちにはたこ焼きもあるぞ!お前好きだろう!ほら、向こうには綿菓子もある!今日は特別に私がおごってやるぞ!」
必死に励まし、近くにあり綿菓子の屋台へハワードを引っ張るメノリ。
とにかくせっかく2人でいるのだから、盛り上げなければと必死だ。
だが今のハワードには馬耳東風の様だ。
「メノリ・・・。」
忙しなく、堰を切ったように話していたメノリだったが、ハワードの弱々しい声に反応してピタリと止まった。
「どうした・・・?」
いつもと様子が違うハワードの様子に戸惑いながらもなんとか返事をする。
すでに両手いっぱいにメノリからのおごりである、たこ焼きとりんご飴を持っていたハワードだったが、俯いていた顔を上げた。
「・・・ぼくが今回2年詣りを企画したのはな・・・。やっと出来た自分の大切な仲間と過ごしたいと思ったからなんだよ。」
ゆっくり目を合わせながら話出した。
「僕は毎年僕の周りにいる奴らと年を越していたんだ。それは楽しかったけどいつもどこか虚しさがあったんだ・・・。・・・今年は僕が本当に心を許せるようなったお前らと一緒にいれると思ったから嬉しくて嬉しくて・・・。なのにみんないなくなっちゃって・・・。」
ぽつりぽつりと口に出したハワードの本心。
それは切ない気持ちだった。まるで迷子にでもあったような顔。普段のハワードからは想像つかない。
「ハワード・・・。」
帰還前のハワードの寂しい生活を思い出し、メノリは苦虫を噛み潰した顔をした。やはりやらなければよかったと・・・。
「「「おーい!!」」」
そこに聞こえた大勢な元気な声たち。
目線を上げるとそこにはいつもの5人と1匹。
隣を見ると彼の顔には笑顔が浮かんでいた。
『よかった・・・。でもあとで謝らないとな・・・。』
そう思いながらも、やっと見れたハワードの笑顔に安心したメノリ。
やはり今の彼には7人全員が揃っていなければダメなようだ。
「早くしないと年明けちゃうよー!!」
「ハワードどこに行ってたのー!?早く初詣しようよ!!」
「ハワードあっちのジュースおごってーな!うちお腹空いてしもうた・・・。」
「メノリー!あっちで御守り買いに行きましょう!」
それぞれハワードとメノリに向かって声を掛けながら手を振っている。
「うるせー!今行くよ!!」
さっきまでの悲しい顔なんてどこえやら。
ハワードはメノリの手を引きながら、みんなが待つ場所へ走った。
いつまで僕ら全員でいれるか分からない。
そんなかけがえのない時間を慈しむように、輝くように過ごしていこう。
今はまだ"みんな"で。
************
あけましておめでとうございます!!
2011.1.1 まめ