ふたご姫
□星霜記〜序章@〜
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「・・・ィン」
「ん〜」
「・・・ァイン」
「んん〜」
「ファインったら!」
「えっ!?わぁ〜!!!」
ドカッ
突然の大声にビックリしたファインは、目を開けた先に頬を膨らませたレインがいるのに気づいた。
更にレインが逆さになっているのに気付き、更に驚いた。
「あれ?レイン?」
「もぅファインったら〜。30分の寝坊よ。」
「なんで逆さまなの?」
「私じゃなくて、ファ・イ・ン・が逆さまなのよ!」
そう言われ、自分の体を確認してみる。
なるほど、レインの言った通り、ファインの体は畳まれた布団の上に下半身だけ仰向けの状態で乗っかり、布団からはみ出した頭は逆さになっていた。
布団はどうやらレインが畳んだらしい。
「あれだけ今日は早く起きてって言ったのに〜!」
文句を言うレインをよそに、ファインは1人安心していた。
『よかった〜!!!
元の世界に帰ってこれたんだ〜!!!
やっぱりあれはただの夢だったんだ!
ホントによかった〜。』
はぁ〜と安堵の溜め息を吐くファインに、レインは気づいた。
「どうかしたの?」
「えっ?」
「溜め息なんてついてるから」
「ん〜ん。なんでもない。変な夢見ちゃっただけなんだ。」
「変な夢?」
「あのね〜」
ファインは夢の内容を話そうとした。怖い夢は人に話すと良いと聞いたことがあったからだ。
しかしレインの出した突然の悲鳴でそれは叶わなかった。
「あ〜〜〜〜〜!!!」
「え!?な、なに?」
「時間!」
「え?」
「時間がな〜い!!!」
時間がないことに気づいたレインに、半ば無理やり着替えを促された。
まだ寝ていたかったファインだが、急いで着替えを始める。
いつも着ている赤が基調の着物に腕を通し、これまた赤の帯と帯留めをし、着付けを完了させる。
ちなみにレインはファインとは対照的に青を基調とした着物を身に付けていた。
着物を着ると、気が引き締まり、新たな気持ちになるためファインは着物が大好きだった。
「行くわよ!ファイン!早くしないと最初のお客様がいらっしゃるわよ〜」
「あっ、待ってよレイン〜!!!」
急いで部屋を飛び出した2人はお客様を迎えるため、玄関へ向かった。