「あ、あと10秒!」



ディアッカの発した言葉から程なく
オレはその腕の中に抱かれ


そっと顎に手を添えられて


「おめでとう、イザーク」


日付が変わった0時ちょうどに、キスをされた







たぶん、口付けていた時間は3秒くらい


合わさっていた唇は意外にもすぐに離れ
鼻の頭にもう一度キスをされた


「おめでとう」


ディアッカは幸せそうな顔でこちらを見つめる


「…あまり見るなっ」

「なんで?こんなにめでたくて最高な日に、その主役を見つめて何がいけないの?」


返す言葉がなくて、少しだけ顔が熱くなった
顔が熱いから言葉が出てこないのかもしれないが
ああもう、わけがわからない


別に、見られるのが嫌いなわけじゃない



…恥ずかしいだけだ



そんなオレの気持ちを知ってか知らずか
ディアッカはいつにも増した笑みでまたこちらを見てくる


「…だからっ、その主役よりにやけている顔をどうにかしろと言ってるんだ!」

「だって、オレ凄く幸せなんだもん」

「ほお、主役のオレよりか?」

「うん、たぶんね」


再び、幸せそうな顔をめいっぱい溢れさせ
今度は頬に唇を宛がう


「…しつこい」

「いいじゃん、イザークの誕生日なんだから」

「だから、だ!何故オレがやられっぱなしなんだ!」

「え?イザークからしたいの?」

「違うっ!!」

「じゃ、じっとしててよ」

「なっ…」


そして、案の定
シャツのボタンがひとつ、またひとつと外されていく


「ディアッ…」

「オレは、さ」


服を脱がせながら、ディアッカは顔をオレの耳元に寄せ
息を吹き込むように語りかける


「いつもイザークのそばにいるけど」


這わせた手で肩から背中へシャツを滑り落とし
そのまま腕から勢い良く引き抜く



「こうやって、オマエを愛することくらいしかできないから」


全身に、電流が走るような言葉


この上なく力強い紫色の光に射抜かれ
一瞬、見惚れてしまった


その隙に、首筋を吸い上げられる


「あっ…」


晒された白い肌に、薄く色付く紅い色


でも、それよりも



さっきの紫色が忘れられない



あの瞳は、反則だ
ずっと見つめられてもいい、とさえ思った


「だから、今夜はこれで許してね。ま、いつもしてるけど」


そう笑って、ディアッカはまた首筋に顔を埋めた




恥ずかしいのに、嫌じゃない



最初から、そうだった
ディアッカといると、いつもこんな気持ちになる


さっきだって、見つめられるのが嫌じゃなくて
あの笑顔に、どうしたらいいかわからなくなったんだ



オレは、ディアッカの幸せそうな顔を見ると心が満たされてしまう
そんな自分に幾度となく戸惑って


コイツの笑顔に、安らぐ自分が


そんな顔に、幸せな気持ちになってしまう自分が



恥ずかしいのに、嫌じゃない
むしろ…心地、いい



『オマエを愛することしかできない』


ディアッカは、あんな言い方をしたけれど



こんなにも、自分を愛してくれる人はいない



これ以上、何がある?



それだけで、オレはもう



何も、いらないんだ




…最高の、誕生日プレゼントなのかもしれない



きっとこれからも
毎年、密かに期待する



唯一無二のプレゼント





「…ありが、とう」


「え?」


「なんでもないっ」


つい口から出てしまった言葉を慌てて飲み込む
ディアッカは一瞬不思議そうな顔をしたけれど


「こっちこそ」


「…え?」





「生まれてきてくれてありがとう、イザーク」






また、柔らかく笑って
優しく、激しく、その体温が心臓まで伝わるくらいに
力強く抱きしめられた




まるで、その存在を、確かめるように




その命を、確かめるように



戻る

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ