―Title
□澄んだ声に、
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とある放課後の保健室。
俺は昼からずっと寝ていた。
常連だから何も言われやしねェ。
外を見れば馬鹿みてェにはしゃぎ回る野郎共。
すぐに興味を無くしベッドから出る。
向かう方向は屋上。
唯一気に入っている場所だ。
煙草を取り出し吸う。
階段を上っていると、何時もは聞こえない声が聞こえてきた。
よく聞こえず、耳を澄ます。
「〜・・・ラ〜〜♪〜」
女の歌声・・・?
それはとても素直に耳に入ってきて、
嫌じゃなかった。
近付くにつれてはっきり聴こえてくる。
―――あの気持ちはどこにいってしまったの
強くて、綺麗で、儚くて、
それはあなたに捧げた
あなたは気付くでしょうか私の気持ちに
気付く事はないでしょう
それは脆かったから
気付いて、と願う
気付くはずはないと嘆く
気付いてくれたなら
抱きしめて・・・・・・―――
それからどのくらい聴いていただろう、またラー・・・と歌い始めた。
ガチャとドアノブを回し扉を開ける。
目に入った光景に言葉を失った。
揺れる長髪、儚く消えそうな背中、悲しそうな瞳に。
柄にもなくポカンとしちまった。
澄んだ声に、
(俺は一瞬にして虜になった。)