〜 M A I N 〜
□Dear person〜愛しい人〜
2ページ/8ページ
この2年間、ずっと傍にいたけれど
“護衛”という立場から、誰よりも距離を置いていた。
力の及ばぬ私は己の未熟さ故に、影からお嬢様を見守っていた。
しかし修学旅行という行事をきっかけに、お嬢様は私といる時間を増やされていった。
それは、今まで離れていた距離を縮めるかのように...
離れてしまっていた時間を埋めるかのように...
麻帆良祭の準備をしていた最中、お嬢様は私に質問をされた。
しかし、私は本心を伝えることが出来なかった。
―――本当は伝えたい...。
貴女の事が好きです。と...
何よりも、誰よりも、世界で一番大切だ。と...
私は、貴女のことが...
私はそこで、お嬢様への想いの詰まった瓶に栓をする。
私とお嬢様は、主従関係である。
従者である者が君主である方に想いを寄せてしまうなど、許されるはずがない。
それに、それだけではない。
私とお嬢様との間には【見えない壁】が存在する。
【見えない扉】に隔たれている。
身分、性別、種族...
どんなに私がお嬢様を想っているところで
この壁は崩れることはないし、この扉が開くことはないのだ。
それに...私は少し怖いのかもしれない。
否、きっと怖くて仕方がないのだろう。
日に日に膨れていく見えない想いが、貴女の重荷にならないか...
いつか溢れ出してしまった感情が、貴女を押し潰してしまうのではないか...
そう思うとどうしても、私にはこの想いを伝えることが出来なかった。
.