捧げ物

□小さな音楽会
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ポーン・・・ポーン・・・
風に乗って聞こえてくるピアノの音に、荀攸は中庭を歩く足を止めた。
太陽は南西を過ぎ、風が吹いたこともあって、夏にもかかわらず空気は爽やかだ。恐らく叔父であろう調律の音が風と混ざり合い、雲一つない空へ溶けていく。
「ちょっと、のぞいてみようかな」
陽光集めた山吹色の衣を揺らし、荀攸は浮き立つ足取りで音のする方へ歩いていった。


「叔父上」
広間でグランドピアノの調律をしていた荀イクは、荀攸の鈴の声に振り返った。
荀イクの衣は、太陽を支える蒼穹を映した深い青。
「おや公達、どうしましたか?」
まだ仕事中でしょうと軽くたしなめれば。
「ピアノの音がしたので・・・。叔父上のピアノを聞きに」
ニコニコして答える荀攸。暗にどころか清々しいほどすっきりとおねだりしてくる甥っ子に荀イクが勝てる訳もなく。
「少しだけですよ」
もっと笑顔が見たくて、ついつい甘い顔をしてしまう。


騒々しい音が嫌いな荀攸のために、荀イクはベートーベンの「月光」を始めとした静かな曲を選んだ。調律の終えたピアノに向かい、楽譜を置いた荀イクは深呼吸を一つして―。


可愛い甥っ子のためだけの、小さな小さな音楽会。



相互リンクしていただいた山田しげる様へ捧げます。
甥っ子に甘い荀イクと叔父に甘える荀攸。あ、荀攸は後で3倍の速さで仕事を片付けました。(^O^)
山田しげる様、本当にありがとうございました。

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