新表参道

□妻に捧ぐ
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空気の澄み切った、秋の昼下がり。大通りには様々な店が軒を連ね、独特の雰囲気を醸し出す。
「次はどこに行く?」
久しぶりに陳群とのデートを楽しむ郭嘉。甘い空気は二人をすっぽり包み、周囲の引き気味にもお構いなしだ。
「・・・あれ?」
郭嘉はふと、人混みの中鮮やかな緑の羽織に目が止まった。小物屋から出てきたばかりのその人は。
(車輪?)
何か自分の物を買いにきたのだろうか。それにしてはそわそわしていて落ち着きがない。
「奉孝?」
陳群の不服そうな声に、郭嘉は我に返る。
「なあ、そこの小物屋覗いていかないか?」
訝しむ陳群を連れ、郭嘉は人混みをかき分けた。



「親父、とっておきは?」
さりげなく郭嘉は主人に問う。主人はそうげすね、とひとしきり呻いて。
「鼈甲の簪ですな。そうそう、先程いらしたかたが、簪をご覧になりました。贈り物ですかと訪ねたら、逃げるように出て行かれましたが」
ほう、郭嘉は軽く頷いた。彼は陳群が先ほどからずっと見ている冠紐を買い、主人に礼を言う。
(気になるな)
また、悪い虫が疼き始めた郭嘉である。
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