表参道

□すれ違う心、交わる魂
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いいんですよーだ。
楽進がその気なら、私も考えありますよ―だ。
私、別に楽進好きじゃないしい。好きなんかじゃ・・・・・・
「うわあああっ・・・・・・!」

荀攸の嗚咽が、成都の街をふるわせた。

久しぶりにお互いに時間が取れた。早くあの引き締まった体に触れたい、思う存分愛を確かめたい。それだけを思って荀攸は楽進の部屋を訪ねた。
楽進はまだ帰ってきていなかった。
気が急いていたのだろう。棚にぶつかり、納められていた竹簡が散らばる。慌て荀攸は竹簡を本の場所に戻そうとして――。
「何、これ」
頭から、急速に血の気がひいていくのが自分でも分かる。指先は氷のように冷たく、震えが止まらない。
それは、男同士の房中術の所作が記された書と、読むのも恥ずかしいセリフが連ねられた恋文だった。
「楽進の筆跡・・」
誰に宛てた恋文なのだろう。こんな熱い告白をするくらい愛する人は。
――私はもう、愛されていないのか。
やるせなくて、悲しくて。
どこか遠くに行きたい、それしか頭になかった。
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