新表参道

□ブッシュ・ド・ノエル
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宵いよいよ深くその帷を降ろし、荀攸はくしゃみをした。火鉢を見やれば、もうすっかり炭が白くなっている。
「炭、足さないと」
寒い外に出たくないな。荀攸はのろのろと立ち上り、扉に手をかけた時
「きゃん!」
壊れる寸前の大きな音を立てて、扉が向こうから開かれた。荀攸はびっくりし、反射的に数歩後ずさる。
「・・・・・・荀攸」
自分を呼ぶ声に、荀攸は恐る恐る声の方に目を向ける。
「あ・・・・・・あ」
黒の外套を雪を散らせて纏う細身の体躯。
灰色の空に負けず輝く、白銀の髪。
「法正!」
荀攸は誰よりも待ち望んだ人に駆け寄り、胸に飛び込む。法正から伝わる温もりが、冷え切った荀攸を芯まで温めた。
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