表参道

□夏祭り・後編
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夜が深みを増し、祭りの声が仲達の部屋まで聞こえてくる。
祭りに連れて行ってやるという仲達の誘いを受けて、孔明は仲達の部屋を訪れた。仲達は孔明がいつもの格好なのに眉をしかめ。
「無粋な奴だな。祭りには浴衣、と決まっておろうが」
「あなたも、普段と変わらないじゃありませんか」
孔明の口から出た小生意気な事実も気にくわない。仲達はここで、一つの策を決行した。
「仕方ない、浴衣を貸してやる」
「え・・・いいのですか?」
「構わん。ただし、柄は儂が決める。それが嫌なら一人で行け。いいな?」
「はい(〃▽〃)」
孔明は嬉しそうに頷く。仲達の術中に完全に絡め捕られたことに気がつかないまま・・・。

浴衣を一目見て、孔明は青ざめた。
真っ赤な地に花が散らされたそれはあからさまに女物。しかも結婚式かと見紛う派手さだ。肩幅こそあるものの丈は短く、背の高い孔明では膝上までしかないだろう。
――冗談じゃない
さすがに孔明が仲達を睨むと、仲達はニヤニヤこちらを見ていて。
仲達の部屋に、妖艶な空気が広がる。
「い、嫌」
涙目の孔明が一歩後ずされば。
「ふふふ・・・」
仲達が禽獣の瞳をして歩を進める。
もう一歩、後ずさり。
孔明の背中が壁に捕らわれた。
「脱げ」
低い声で仲達は命じる。孔明がなお躊躇っていると。
「儂と祭りに行きたいのなら脱げ。それとも、今すぐ叩き出してやろうか?」
孔明の震える手が羽織にかかる。仲達はそっと手を重ね、孔明が脱ぐのを手伝った。
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