旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□第8話・4
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愛理の心の内の海原は大きく荒れている‥

去りゆく父を追って、懸命に伸ばす腕‥捜し求める手。

波は千々に華となり、押し寄せ、流し‥愛理を試す。

それでも、彼女はあきらめない‥想いを抱いて、伸ばす腕の先…

ついに掴んだ父の暖かい手‥刹那、海は川‥湖‥泉‥様々に形を変え

時にうねり、時に穏やかに‥沁みこみ、弾けて‥


振り下ろされた賢愚‥それを阻む青き刃。

水の霊皇・セイブルー・愛理は立ち上がり、

ジャシンの鎌を己が持つ1本の剣で受け止めていた

ジャシン「くっ‥死にぞこないのじゃじゃ馬が‥」

愛理「凍てつかせ、こいつを砕け‥氷柱!」

メタル・ブルーのサーベル‥その名は『氷柱(ツララ)』

大気中の水分を氷結させて、練成する水の霊皇の新しい武装。

愛理のツララがジャシンへ閃く。

右の賢愚でツララを撥ねて、左の賢愚で襲いかかる‥が、愛理は水流を盾にして防いだ。

愛理「二刀流は信代ちゃんの足下にも及ばないわね‥変態含み笑い男っ」

ツララ一閃! ジャシンの胸から氷の火花が散る。

ジャシン「ぐあっ」

後方へよろめき、苦しむジャシン。

愛理「そこは水流の間合い‥」

左手に持った水流を放つ。

ジャシンは賢愚を合わせて弾丸を防いだ。

侠真「真貫豪力!」

立ち上がった侠真は無頼で紫のドリルを撃った。

ジャシン「ええい、鬱陶しい!!」

鎌で切り裂くが、その瞬間を狙ってツララの突きが繰り出され‥

ジャシンは体を入れ替えサーベルを危うく避けるが

ジャシン「ぐっ‥がっ」

手にした精刃・剣モードでジャシンの腕を貫く侠真。

侠真「その大鎌じゃ、剣の間合いで勝てねぇな」

ニヤリと笑う。

愛理「ちょっとっ! 何、人のもん勝手に使ってんのよっ!」

侠真「へへ、それだ‥その うるせえのが なくっちゃな!」

いっきに精刃を引き抜く侠真。

ジャシン「ぐわっ」

愛理「さっきまでのお返しよっ」

水流乱射! 続いて侠真の突きが走り、

愛理「観念しな、この含み笑い男!」

身体を横に回転させて勢いをつけ、愛理はツララでジャシンを斬る!

ジャシン「うがあぁぁ」

眉間から胸にかけて‥避けるジャシンは寸前で食い込む刃を浅くはしたが

ツララは確かにジャシンを捉えている。

額から血が流れ落ち、ジャシンの長い銀髪が乱れた。

ジャシン「く‥新しき霊皇の力だと‥ククク‥おもしろい…いたぶりがいが出来たか。

じゃじゃ馬にお坊ちゃん‥次もまた楽しませてもらいましょう‥クククク」

そういい残して、ジャシンは姿を宙に消した。

愛理「待てっ、この変態!」

侠真「待て‥追ってもムダだぜ。

それよりも‥むこうもどうやら片付いたようだ」

爆音と炎が立ち上がり、ボムボーンを構えた総右衛門の姿や

ガードボーンのタロとジロが淑の下へ帰る姿が見えた。

侠真「俺は総右衛門と女房をつれて、この騒ぎの元凶のところへ行く‥

魔恐をとめるためにな。

おめえはまず、あのデカ物を沈めてこい」

天空にそびえる戦艦・災滅艦が、光輝皇と風嵐皇、土岩皇と火炎皇‥

そして、闇影皇が戦っている。

愛理「あれ‥あの狼は…勇護!?」

侠真「…勇護、戻ってきたか‥」

愛理「なんでいっしょに戦ってるか知らないけど、とにかくあの戦艦を沈めるのが先ね」

侠真「ほらよっ」

手にしていた精刃を愛理に返す‥愛理は受け取って、腰のホルスターに収めた。

淑「愛理さーんっ」

総右衛門と淑が走ってくる。

総右衛門「愛理殿、ご無事でよぉござった」

愛理「総右衛門と淑ちゃんは、今さら皇子‥コイツと一緒にツクモ神のもとへ向かって。

途中なのかそこになのかわからないけど、魔恐がいるかも知れないから、気をつけてね。

姫ちゃんたちも戦艦と戦っているから、伝助たちも向かってると思う‥頼んだわよ。

私もアレを片付けたらすぐに行くから!!」

淑「お任せを!! 愛理さん、お気をつけて!」

愛理は『さんきゅー!』と大きく礼を言うと

愛理「来い、水氷皇!」

空を泳ぐ巨大なイルカ、水の精霊・水氷皇が現れる‥愛理は水氷皇と一体化した。

総右衛門「それでは‥」

淑「はい‥」

侠真「行くとするか!」

総右衛門「むむっ」

侠真「そう警戒するな‥今日はおめえたちの敵にゃあ、ならねえぜ‥

ま、次にあったときはわからねえが。

それより、早く元凶を叩き潰して、この陰気な雨を上がらせねえと」

総右衛門「淑、行くぞ」

淑「はい、あなたっ」

総右衛門「侠真様‥」

侠真「へへ‥侠真でいいぜ。

おめえたちをヤろうした俺様だからな‥あの時みてえに、遠慮せずに‥」

淑「そこの、あくたれ今さら皇子! 案内なさいませっ」

総右衛門「がびーんっ☆」

淑「どびーんっ★‥と、何を驚いているのです、あなたっ」

総右衛門「そ、そうは言うても‥」

侠真「今さら皇子か‥ははは、おもしれえな。

総右衛門、ちぃっと急ぐぜ‥ぐっ」

怨・魂力をムリヤリ体から剥ぎ取られた侠真‥かなりのダメージを負っていた。

淑はトコトコと前へ進み出て‥ガサゴソゴソ‥

レインコートのポケットから何かを取り出す。

淑「これをお食べなさい‥みなさんの元気が出るようにと作ってきたのです‥

あなたも疲労困ぱいな様子‥さっ、お食べなさいませ」

侠真「まっくろで、ところどころ赤やら緑やら‥なんか恐ろしい気配を感じるが‥」

淑「ええいっ、好き嫌い言うてはなりませんっ! 食べ物は活力を与え、
生きる力になるのですっ。

これは私特製の兵糧丸っ‥ほうれん草にニンニク、うなぎエキスに黒砂糖、

すっぽんエキスとセロリ、人参、トマトにタマネギっ‥ゴーヤに練乳っ。

しいたけ、ハチミツも入っております。

体力回復間違いなしの兵糧丸ですから、好き嫌い言わずにお食べなさいっ。

はい、あなたも♪アーン‥」

総右衛門「アーン‥パクっ‥グルワッサンドッコイナッ!? がびーんっ☆」

途端に目が回る総右衛門‥

侠真「そ、それを見せて、なお喰えって‥」

淑「もちろんにございますっ‥好き嫌いは許しませぬっ‥さぁ、さぁさぁ」

ズイッと差し出す不気味な黒い粒‥

侠真「好き嫌いは許さねぇ‥か…へへ、まるでおふくろみてえだな」
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