付喪堂綴り・1

□第4章・2
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霊皇の宿・伝ラボ

『おかえり』元気な声が、メアリーたちを待っていた。

相変わらずバタバタと忙しそうだが、帰ってきたメアリー、ピーノ、ずずに
伝助たちは明るく声をかける。

伝助「ピーノ、手ぇ洗ぉて おやつ食べてきぃ」

総右衛門「ずずも ほれ、食べてまいれ」

源左衛門はメアリーを見て、ニコッと笑って作業に戻る。

餡子「今日のおやつは、サーターアンダギーだっぺ」

サーターアンダーギーとは、沖縄県の揚げ菓子の一種である。

首里方言で『サーター』は砂糖

『アンダーギー』は[アンダ(油)[」+[アギー(揚げ)]を意味する。

砂糖を多めに使った球状の揚げドーナツである。

砂糖がふんだんに使われ、また気泡が小さくて密度が高いため
食べ応えと満腹感のある菓子である。

表面はサクサク、中はシットリ。

時間をかけて中まで揚げることから日持ちし、
数日程度は常温下でも置いておけるため、これを一度に大量に揚げる。

ピーノ「うっほほーい♪ドーナッツでしゅ」

餡子「違うだよ、真ん中さくり抜いた わだす(私)オリジナルの
サーターアンダーギーだっぺ!」

君兵衛「だからなんで、真ん中をくり抜いたんじゃろのぉ」

缶吉「見た目、完璧にドーナッツじゃさけぇの」

ごん「ぶっひぶひぶひ」

ごんはすでに3時間食べ続けていて

ねん「うんももうんも」

ねんに至っては、若干飽いてきているが食べ続けている。

珍平「牛乳も飲むと美味しか」

ますます、ドーナッツのようで。

一同がワイワイしている中、ルナがメアリーの傍へとやってきた。

ルナ「おかえりなさい、メアリーさん」

メアリー「ただいま」

伝えたいことがある‥蝕は、自分をスカウトしに来たと言っていた。

それは、手駒と言っていたが‥仲間が欲しい現れであると、メアリーは思う。

そして、朱の鬼は話しさえしたら
共に戦える仲間になるということも。

メアリー「あのね、ルナ」

ルナ「今日はお疲れでしょう。

まずは休んでください、メアリーさん」

メアリー「そうだね、熱い湯に入って洗濯して‥冷で1杯やろうかねぇ」

ルナ「でしたらちょうど、ミョウガがありますから

刻んでおきますね」

メアリー「ミョウガか‥旬も、もうすぐ終わりだねぇ。

秋ミョウガもあるけどさ、旬は夏さね。

どれ、今年最後のミョウガを食べながら1杯やろうかね。

ありがとよ、ルナ」

すると

伝助「おーい源左衛門。

今日はもうえぇで」

源左衛門「しかしまだ残ってることが」

伝助「えぇさかいあがりぃ。

僕らももうすぐあがるよって」

源左衛門「ん‥」

伝助の意を察する源左衛門。

源左衛門「そうだな‥言葉に甘えよう」

ルナ「でしたらメアリーさんと洗濯機、ご一緒にどうぞ

メアリー「ったく、いい加減湯舟を作りなね、伝助。

ガタゴトされちゃあ、目が回っちまうよ」

源左衛門「はははは。

汚れがスッキリ落ちるから、いいじゃないか」

メアリー「そうかい?

おまえさんがそういうんじゃ、しかたないけど‥」

ルナ「でも、私は湯舟がないとお風呂に入れませんからね‥

作ってほしいです」

メアリー「だろ」

淑「その意見、わたくしも賛成ですわ」

トコトコと淑が奥から荷物を持ってやってきた。

総右衛門はその荷物を受け取って、珍平たちのところへと運んでいく。

ルナ「会長」

メアリー「そう思うだろ、会長」

淑「えぇ。

お風呂での語らいは、普段言えないことも言えたりしますからね」

伝助「せやけどなぁ‥洗濯機のほうが、よぉ汚れ落ちるさかい」

メアリー「バカだねぇ。

湯舟があれば、ルナと入れたりするってのにねぇ」

きらりん☆

伝助「よっしゃ!!! そない湯船が欲しいんやったら、明日までに作っときまひょ」

淑「な、なんてスケベな‥」

苦笑いで、淑は鼻の下を伸ばす伝助を見ている。

メアリー「あぁそうだ、会長」

淑「はい、なんですの?」

メアリー「なんていうのかねぇ‥その‥」

裁縫教室のことを言い出したいのだがこれまでサボってきた手前
なかなか言い出せないでいる。

淑「次のお裁縫教室は、火曜日ですわよ」

優しくメアリーに言う淑。

メアリー「そうかい。

じゃ‥たまには顔だそうかね」

淑「えぇ、喜んでお待ちしてますわ。

そうそう、火曜日は裁縫教室ですけど

月曜日は日舞やバレエなどのダンス教室

ちなみにわたくしはフラメンコを習得中ですわ♪

水曜日は楽器演奏や絵画などの文化教室

木曜日は隔週で、お花とお茶教室

金曜日は習字や語学といった学習教室

土曜日はお料理教室

どれも、おいでくださいね」

キラッと光る瞳に、逃げられないと察してメアリーは

メアリー「やれやれ‥洗濯機が無くなると思ったら
今度はこっちで、目が回りそうだ」

楽しそうに笑う。

源左衛門「ならメアリー、まずはひと風呂‥回るとするか」

メアリー「あいよ おまえさん」

伝助「明日には大浴場こさえとくでな♪」

伝助の大きな欲情で、大浴場は作られる‥

仲間の想いに、信頼をしているからこそ
あえてなにも聞かないのも絆なのだろう。

メアリーは思う。

ルナの姉も孤独なのたろう‥

もしも本当に姉だとしたら
いつか必ず、ルナと手を握らせてやりたい。

ワンダが巧に伝えた強さ

付喪堂がみせる絆

その心が正義であり、想いは愛なのだろう。

心と想いは、受け継がれてゆく‥永遠に。


今日、1人のヒーローが去っていった。

『ぐっぱいヒーロー』

そして‥

受け継ぐ、みんながヒーロー。


世界は必ず、救われる。

いつか、必ず!





「不可思議萬請負業 付喪堂綴り」第4章
『ぐっぱい、ヒーロー』完
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