彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル6・7
3ページ/5ページ

珍平「来るぞ!」

珍平の声に気を引き締める檸檬。

姿を見せたホイピエロイド、魔罪・デスクリミナル。

『きゃあぁぁぁ』院内は大パニック。

まず、ごんとねんが武装をマシンガンとバズーカに変形させて攻撃。

ホイピエロイドの足を止める。

逃げまどう人たちを餡子は

餡子「みんな! 落ち着いて避難するだよ!! ゆっくりパパッと、光の速さで歩くだよ!!!」

と、人々を誘導。

君兵衛「ちゃっちゃっちゃっ、慌てず速くっちゅうがか?」

珍平「仲良くケンカしな、みたいなことたい」

『光の速さで歩け』も『仲良くケンカしな』も、アニメソングの一節ではあるが‥。

檸檬「う、うん 、そ、そーだね (なんか違う気もするけど‥)」

疑問は多々あるが、とりあえず‥勢いに身を任せることにした。

君兵衛「兄さん、俺が右からごんさんと攻めます!」

珍平「おう! オイは真正面からねんと行くで

檸檬さぁは、左から挟み撃ちにしてくれんね!」

檸檬「はい!」

散開して攻撃開始。

君兵衛とごん、檸檬が左右から同時攻撃。

デスクリミナルは3人へ両手をかざし、手のひらから爆発球を連射。

イエックス、播磨屋橋、トンカツで防御。

餡子は避難誘導をしつつ、防御ビームで病院内を守る。

珍平「どすこーい!!!」

ねん「うんもーん!」

屋内でこれ以上の戦闘はまずいと、
珍平は めんたいこ、ねんはビーフストロガノフでホイピエロイドを叩き

外へと出そうとする。

『ギルルルル!』めんたいことビーフストロガノフを掴み、押し留める。

ねん「んもっ!?」

珍平「ヒョロッとしとって案外、力があるんじゃな!」

力勝負では負けられないと、珍平とねんは力を込める。

餡子「あんちゃーん! ねんさーん! がんばれーーー!!」

珍平「おぅ!」

さらに力を込める2人。

しかし、デスクリミナルはビクともしない。

珍平「くっ、やっぱり伝助さぁたちみたいには イカンか‥」

常に最前線で戦い、厳しい苦闘の連続の末に
精霊世界にいるときは比べ物にならないほどに強くなった伝助たち。

珍平、餡子、君兵衛、缶吉、ごん、ねん‥1歩遅れる実力を痛感する。

珍平「じゃっどん、そいが なんね!!!」

全身の綿を逆流させて(ねんは侠真が貯金していた小銭を逆流させて)、
最大限の力を奮い立たせる。

君兵衛「兄さん!」

行く手を遮る炎を越えて、君兵衛は大剣を振り下ろす。

左腕で播磨屋橋を受け止めるデスクリミナル。

魔罪の隙をついて、ボディーを打ち据えるごん!

珍平「片手で おいどんのめんたいこば押し返そうっちゅうのは
ずいぶんとナメられたもんたい!!!」

怒りのパワーで押すと、ホイピエロイドの身体がグラリと揺れた。

ねん「んももももーん!!」

さらにグッと押す。

餡子「いまだよ!」

その声に反応し、考えるよりも体が動く檸檬。

檸檬「ど、どすこーい」

イエックスを大きく振って、まるでバッティングのように魔罪を打った。

グンッ!

吹き飛ばされるデスクリミナル。

珍平「ほぅ、さすがは怪力たい」

檸檬「ちょ、ちょっと、そんなこと言わないでよぉ」

珍平「いやいや、バカにしたり からかっとるんじゃおはん。

まっこと、スゴイ力じゃと思ぉとるったい。

おいどんには無か能力たい。

やっぱり、心の闘士はスゴかぁ」

珍平の言葉に檸檬は照れる。

怪力がホメられる‥

珍平「じゃっどん、戦いがあるから怪力ばホメとるんやなかたい。

その力で、守れるものや救えるもの、たくさんあるとたい」

ニコニコ笑顔の珍平の傍に、君兵衛と避難誘導を追えた餡子が来る。

餡子「あんちゃん、檸檬ちゃん、ホイピエロイドさ外に叩き出したなや♪」

ピョンヒョン小躍りして、ちょっとコーフン。

君兵衛「そがい喜んちゅうが、戦いはこれからが本番じゃき」

餡子「んもぉ、そんなことわかっとるだよ!」

ヒップアタックを君兵衛にお見舞いして、

餡子はメス型薙刀・なまはげを手にして外へと飛び出る。

君兵衛「ちゃっちゃっちゃ、はちきんにゃかなわんぜよ」

『はちきん』土佐弁で『お転婆で頑張り屋で、働き者の女性』という意味らしい。

語源の説によっては下ネタ要素が含まれて、
高知県の女性は、こう言われるのを嫌うこともあるらしい。

珍平「さ、檸檬さぁ。

おいどんたちも行こうか!」

檸檬「はい!」

少し暗闇を抜け出た気がした‥そう、この時は。

珍平、餡子、君兵衛、ごん、ねん、そして檸檬。

6人はホイピエロイドとの戦いに外へと躍り出た。


一方‥遥希が眠る病室の付近に、屋鋪の姿があった。

辺りを伺う。

受付にて、未確認破壊脅威‥付喪堂と檸檬、ホイピエロイドが戦闘中で
意識が戻らない遥希を見張っていた警官や刑事たちも
その事態を食い止めるために持ち場を離れていた。

屋鋪「よし‥今がチャンスだ」

拳銃を握りしめて、屋鋪は病室へと近づいた。

自分の失敗はすでに知っていた。

焦り、慌てたあげくに遥希の携帯に連絡してしまった自分。

結果、警察にはすべて自身の悪事が露呈したということは
火を見るよりも明らかだ。

なにより、自分を疑い

執拗に追いかけてくる刑事がいる‥正徳がいる。

屋鋪「伽黒‥お前さえいなければ‥」


『屋鋪』そう名を呼んで近づいてきたのは『鴉蒙 玄冶(あもう げんじ)』‥

SSDソルジャーズ隊長・ブラック01こと鴉蒙 鉄志の父であり

墨彦の実父。

鴉蒙は刑事時代の伽黒影太の後輩。

鴉蒙「ちょっと話がある」

屋鋪「あぁん? 別に俺はないよ」

鴉蒙「だから、お前に無くても俺にはある‥いいから来い!」

同期の2人は、口は悪いが仲は良い。

ただ‥警察という正義の任についていながら
その心は悪に染まっていた。

今日も押収品の麻薬の横流しなどを打合せしている。

そんな2人の近辺にチラつくのは、伽黒影太。

そして大村正徳。

影太は可愛い後輩の鴉蒙の悪事に薄々感付き
さらに共犯者がいると睨んで、単独で内偵を進めていた。

そして、いよいよ核心に近づきつつあるとき
大先輩の正徳に相談したのだった。

上司に話を持っていけば、各賞を掴む前に大騒ぎになるか

『握りつぶされるのがオチだ』と、正徳は言う。

決定的な証拠を握るまでは、影太と正徳の2人だけの秘密ということにした。

そんなある雨の日の出来事。

強く雨が落ちている路地。

路上は血の赤黒い色とアスファルトの色が
奇怪なグラデーションを見せており

それを雨が少しずつ流そうとしていた‥が、なかなか消えない。

奇怪なグラデーションの中心に人が倒れている。

腹部をナイフで切り裂かれ、右腕は肘から下が皮一枚でかろうじて身体につながっている。

『鴉蒙!』大声を上げて駆け付けたのは伽黒影太。

影太「伽黒‥なんでこんな‥」

余りに無残な姿の後輩に、ただ影太は絶句する。

昨日、影太は鴉蒙に声をかけた。

『おい』

『なんですか、伽黒先輩』

『最近どうだ、上手くやれてるか?』

『嫌ですね、先輩。

俺ももう新人じゃないですから‥もう刑事になってねそれなりに年月も経ってますよ。』

『あぁ、そうだったな‥お前の長男が生まれたときに、昇進したんだよな』

『はい、鉄志はもう小学生で、次男は三つになりました』

『そうか‥なぁ鴉蒙‥家族を泣かせるなよ』

『ははは、イヤだなぁ先輩。まるで俺に何かあるみたいじゃないですか』

互いに互いの腹の内を探りながらも、同じ職の先輩と後輩の気遣いも含まれている。

そんな関係の伽黒と鴉蒙だったが、
近いうちに影太は鴉蒙を逮捕しなくてはならないことになるだろう。

影太「鴉蒙‥」

『じゃあ』と軽い会釈をしながら、鴉蒙は去っていく。

影太「気の利く奥さんと可愛い子供がいるってのに、なんでお前は‥」

押収品の横流し、情報漏えい‥犯した罪は数知れず。

それによって得た金で、家族の笑顔を守ろうとしていたのか?

そんな汚れた顔で、本当の笑顔が作れるのか‥なぁ‥

『バカ野郎‥』影太はポツリと言葉を零した。


次に会う時、鴉蒙は惨たらしい姿になっているとは知らないまま。

捜査の結果、鴉蒙は反社会勢力のある組の手によって殺害されたと判明した。

雨の日の翌日、犯人が自首してきたのも早期解決の一因である。

影太「そんなバカな言い訳を信じるんですか!」

上に怒鳴り込む影太だったが、

どんなに説明しても叫んでも聴く耳を持とうとは誰もしなかった。

影太「あと少しで確証を掴めたんだ‥」

ならば共犯であろう屋鋪を捕まえようと、影太の捜査は続いたが

その屋鋪は違法捜査があったと指摘されて、降格・左遷人事処分となる。

正徳「上に握りつぶされちまったな‥」

口惜しげに正徳が言った。

そう‥公けになる大きいスキャンダルを恐れた上層部が
すべてを隠ぺいしたのだと感じた。

鴉蒙、屋鋪‥いや、もっと上に黒幕がいたのかもしれない。

だが、すべてを隠されてしまった今としてはもう手の出しようもない。

『おじさん♪』残された鴉蒙の家族、墨彦は影太を呼んだ。

妻・千夜、長男・鉄志、次男・墨彦、3人の様子が気になって
影太はよく、墨彦たちが住むコーポを訪れていた。

殉職。

二階級特進で、鴉蒙は家族と警察に見送られた。

握りつぶされた真実とともに。

それから、何年かが過ぎて

影太はなにかと、残された千夜親子を気にかけ
千夜は影太を頼るうちに、互いに芽生えた愛‥鉄志・12歳、墨彦・8歳の時に結婚。

が、鉄志は14歳の時に家を出てしまい行方知れず。

墨彦はその後、暴行傷害殺人未遂の疑いで警察に連行されることになり
影太は警察を退職。

だが、屋鋪は自らの悪事の末の身の上を
影太のせいと恨み、墨彦を執拗に狙っては影太を苦しめようとする。

そうして、時は流れた。


屋鋪は、犯罪の影が付きまとう遥希を追っているうちに
いつしか、自分のいいように利用しよう考え始めた。

そしてある日、遥希がこれまで犯してきたはずの罪を見逃す代わりに

自分の気に入らないヤツの始末や、
金銭を要求する‥ミイラ取りがミイラにといったところか‥

どうやって調べたものか、逆に屋鋪がこれまで犯してきた不正の数々をネタに脅し返し

いつしか、屋敷が遥希の犯罪の証拠や痕跡をもみ消す側に利用されている。

そして今回‥墨彦を何が何でも逮捕するために
犯罪をねつ造‥爆破事件を起こして、その罪を墨彦に擦り付け

より『凶悪なテロリスト』として、一生を監獄の中で過ごさせるか

もしくは極刑に‥と、企む。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ