彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル7・7
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紅「源左衛門さん‥」

蒼唯「メアリー‥」

メアリー「アンタたちもシャキッとおし! これくらいでヘタってたんじゃあ

心の闘士の名が泣くよっ」

闘士の心を鼓舞するメアリー。

蒼唯「そうだ‥まずは檸檬を救わないと‥」

紅「蒼唯ちゃん、私も一緒に行く‥檸檬ちゃんを助けたい!」

立ち上がる紅と蒼唯。

蒼唯「緋色のことは?」

紅「緋色は必ず連れ戻す‥だって私、お姉ちゃんだから。

でも‥私の心が叫んでるの‥今は檸檬ちゃんだって」

蝕「アラアラ冷たいのねぇ、ボウヤのお姉ちゃんって。

弟よりも赤の他人の狂戦士ちゃんだって」

緋色「ねえちゃん!」

紅「緋色! よく聞いて‥檸檬ちゃんは、たくさん傷ついてるの。

すっごく怖いのに戦って、なのに守っていた人たちから大切な人たちを傷つけられて

檸檬ちゃんは身体も心も、ものすっごく傷ついてる!

お姉ちゃんは檸檬ちゃんの友達だから、傷ついている檸檬ちゃんに手を差し出したい‥

檸檬ちゃんが戦うのを辞めたってかまわない、だったら私たちが守るから‥

ただ、今のまま苦しみ続ける檸檬ちゃんを助けたいの‥助けたいんだ!

緋色、緋色が言ってる『守る』の本当の意味は『助けたい』ってことなんだよ。

泣いている人、苦しんでいる人、傷ついてる人‥そんな人たちを守ることが

戦うってこと、守るってこと、なんだと思う。

誰かを倒す‥勝ったとか負けたとかって違うよ。

守ることに勝敗はないと思うし、そうじゃなきゃいけない。

命を守ることが戦いなら、戦う相手だって命なんだから

守っていくのが本当の戦いだって‥お姉ちゃん、思ってる!」

蝕「アーハハハハハハハハ! ホントにバカね、勇者ちゃん‥バカもバカ、大バカよ。

敵の命まで守る戦い? ワケのわからないこと言ってんじゃないわよ。

それを言うのよ‥偽善、綺麗事ってね!」

紅「綺麗ごとだっていいじゃない! 綺麗ごとが本当になる世界が素敵じゃない‥

みんなそれがわかっているのに、実現させれないのは

アレもしたい、コレもしたい、私だけが僕だけが

そんな気持ちを抑えられないからだよ。

でもね、私達って独りじゃ生きられないんだ‥支えあって生きているんだから。

だからって何をしてもいいワケじゃないけど、支え合うことは大切だよ。

自分のワガママを少しだけ抑えて、支え合おうって思えたら

すぐに綺麗事は綺麗事じゃなくなる‥私、そう思ってる!

偽善ってなに!? それで救われた命があるなら、それはもう善じゃないの!?

善いことをした人の心の中に、悪い所があるのは悪だけど

その人がした善いことで、たくさんの困ってる人たちが笑顔になれたら善いことなんだよ!

難しいことはいらない、なんでもストロングに取ればいいじゃない!!!」

蝕「なっ!?」

蒼唯「待て‥ストロングでなく、そこは『ストレート』だろ」

紅「そうとも言う!」

メアリー「アハハ、蝕‥アンタの負けだね」

蒼唯「紅は確かにバカだ。

ストレートもストロングもわからずに、しかも肝心な時に言い間違えたり噛んだりする

バカでドジでマヌケだが、誰よりも強い」

メアリー「ほんとうの強さってヤツを持ってる子だよ、紅は。

緋色、アンタもいい加減に目を覚ましな。

ちったぁ根性出して、姉貴の強さに近づいてみるんだね!」

源左衛門「紅の強さは‥満優さまや愛理に似ている。

もちろん、信代の強さにも似ている。

心の闘士‥彩心は霊皇と想いも心も、よく似ている。

だからこそ、本当の戦いが出来る!」

クリムゾン「あなた方は、おしゃべりが過ぎますわ!」

怒りのままに、クリムゾンは炎を吐いた。

しかし、その炎を駆け付けた ずずの付喪ライドが踏み消す。

ずず「てやんでぇ、火の用心でぇ!!!」

メアリー「遅れておいて、なぁに言ってんだか」

ずず「姐さん、すみやせん!」

颯爽と付喪ライドから降りて、鉄串丸を手に走る。

鞘から抜き放って逆手持ち、素早い斬撃で

ずず「ずり!」

ピオレータは初撃を短剣で受けきるが‥さらに加速する2撃、3撃‥

菫「この子、つっよーい♪」

メタルパープルのボディーが火を噴く。

しかし、倒れることなく ずずへキック。

ガツンと蹴られて、地を転げ倒れた。

ずず「アイタタタタ‥やりやがったな!!!」

びょんっと飛び起き、鉄串丸を鞘に収めてふたたび構える。

蝕「義弟くんのおともだちは、ずいぶんと頼りになるのね。

私も仲間ってヤツがほしくてね‥お人形ちゃんとボウヤを仲間にしたわ。

朱の鬼さんも、そこの猫ちゃんも仲間に欲しかったんだけど」

源左衛門「お前の言う『仲間』とは、思いのままに動く『手駒』の意味だろう」

メアリー「ハン! おふざけじゃないよ、この うんつく!!」

『うんつく=運尽く』運も根も尽き果てた、知恵の足りない者を卑しめていう言葉。

メアリー「仲間仲間と、おもちゃを欲しがる駄々っ子みたいに騒いでいるが

仲間ってのはね、テメェが必死で生きて心開いてりゃ

後ろから背中を押してくれる、前から手を引いてくれる

それが仲間さね!

思いのままに動く手駒だって? 履き違えんのも たいがいしなっ。

テメェが心閉じたまま、誰かから奪ったヤツなんざ

仲間なんかじゃないんだよ!!」

蝕「ふん、だったらいつまでも

義弟くんと仲良しゴッコしてたらいいわ。

私は私の仲間を‥そうね、私とお人形ちゃんとボウヤで『バベル』とでも名乗ろうかしら」

源左衛門「バベルか‥傲慢に満ちた者たちが、己の力を示すために

神が住むという天をも越える塔を建てようとした。

それに怒った神は、人々の傲慢を縛めるために共通の言語を奪い

代わりに異なる言語をそれぞれに与えた‥そのため、世界は混乱したという」

蝕「そうそう、そのバベル。

私もお人形ちゃんもボウヤも目的は違う。

自分の目的のために、共闘しているだけの3人なのよ。

いわば『異なる言語の民』のようなものね。

1度は神に阻まれた塔も、私たちなら建ててみせるわよ。

ま、建てる気は無いけどね。

モンスタリアが神狩りがどうの、天獄のヤツラも神を始末しようとしているけど

私は神なんて気にもしていない、気にする価値もない!

この世界は戦場よ‥戦い、勝者は生きて敗者はただ朽ちてゆくだけの存在でしかない。

神を信じ、神の教えを守った者は殺され

それでも手を差し伸べることをしなかった神なんて、気にする価値もないわ!」

源左衛門「お前の過去と関わりがあるだような‥殺された者というのは」

蝕「お人形ちゃんは青色の魔法使いと遊びたい‥命を賭けて遊びたい

ボウヤは大事大事のお姉ちゃんに戦うことを辞めさせたい‥檻の中に閉じ込めて守りたい

そして私の望みはこの世界の破滅‥ただそれだけよ。

薄汚いゴミ屑たちが大きな顔するこの人間世界をぶっ壊したいだけ。

後の世界がどうのこうのなんて、モンスタリアにでも天獄にでも任せるわ‥

好きにしたらいい。

私はルナを連れて、ただ静かに暮らんだから」

メアリー「静かに暮らすにゃ、ずいぶんと犠牲を強いろうとしてるじゃないか‥

犠牲を出す暮らしには、静かさも穏やかさも来やしないのさ。

ソイツがわかってないようじゃ、アンタ‥ホントに うんつくだよ」

蝕「どっちが正しいか、世界の終りを見ればわかるわよ」

メギドを吹き鳴らす堕天使。

ずずは源左衛門とメアリーの前に立ち、鉄串丸を抜いて応戦。

響撃を高速の斬撃で斬り裂いて、

ずず「おらおらおらおらぁぁぁ!」

血気盛んに突進する。

源左衛門「若い力は確実に育っている‥俺たちは見守り、導き‥」

メアリー「自分に出来ることをしていくだけだね、おまえさん」

源左衛門は笑顔を見せて、キルへ

メアリーはピオレータへ

紅「そこをどいて、緋色! お姉ちゃんは檸檬ちゃんのところに行く!」

蒼唯「邪魔をするな菫! また‥おまえのときのように、大切なものを失いたくない!」

紅と蒼唯も続く。

蝕「結構やるのね、青い鳥さんっ」

ずず「オイラまだまだ強くなるんでぇ!」

さらに刀を振るうが‥

ガキン! ゴルゴダは鉄串丸を止め

蝕「だったら、ココで始末しといたほうが後で楽になるわね」

冷たい微笑を浮かべると、夢魔より吸い取り己のものとした力を解放する。

唸るゴルゴダ!

ずず「てやんでぇ!」

鉄串丸で受けようとしたが、短槍の攻撃により

鉄串丸は切っ先から数センチが折れてしまう。

衝撃でゴロゴロと、後へ転がるずずだったが、すぐさま立ちあがり

ずず「兄ぃに作ってもらったオイラの刀が!! こんにゃろぉぉぉ!」

怒りと悔しさを露わに、怯むことなく突進した。

すると‥『ずり!』高速の斬撃は、より速く超高速!

メアリー「オヤ?」

源左衛門「ふむ‥そういうことか」

互いに戦いつつ、ずずを見守る。

鉄串丸が折れたことにより刀身がやや短くなり、結果さらに機動性が高まった様子。

蝕「この‥くっ、速いっ」

ずず「てやんでぇ、てやんでぇ!!!」

一気呵成に押しまくる ずず。

蝕もたまらず間合いを取り直す。

ずず「ハァハァハァハァ‥」

息を切らせている ずずに

メアリー「このマヌケ! たたみかけなきゃ、せっかくのチャンスが台無しじゃないかっ」

ずず「す、すみやせん」

しかしまだまだ、体力不足。

さらなる攻撃に出るにはスタミナ不足だった。

源左衛門「身体も技も、多少は強化が出来ていても

まだまだ強敵を前にすると力むクセが すずにはあるな。

だから攻撃力が持続しない」

ずず「へい‥」

蝕「なぁんだ、キミ‥ガス欠か」

メギドを構えて、ずずに狙いを絞るが‥

蝕「え?」

急に身体の力が抜ける感覚に陥り、立つのもやっとといった様子になる。

メアリー「おや?」

蒼唯が飛びこみエルボーを菫へ撃ち、メアリーは合わせて回転キックを放つが

蝕の異変を見て呟いた。

クリムゾン「マスター!」

紅の突きをクリムゾンは尾で払うが、源左衛門の連撃パンチに戦竜は後退。

緋色は振り返り、舌打ちをするが

紅との戦いをいったん辞め、蝕のもとへと走る。

それは菫も同じで‥蒼唯を置いて、蝕のもとへ。

蝕「お人形ちゃん、ボウヤ‥」

右と左に分かれた緋色と菫に肩を担がれ、ようやく立ち上がる蝕。

メアリー「ガス欠なのは、ソッチのほうじゃないのかい?」

源左衛門「それとも お前‥」

身体の変調を蝕に感じる。

蝕「今日はもう帰るわ‥妹と義弟くんに、よろしく伝えておいて」

クリムゾンが3人の前に舞い降り、火炎放射で源左衛門たちを けん制。

その隙に蝕たち『バベル』は消える。

源左衛門「退いたか‥」

休む間もなく、悲しむも間もなく、紅はセクゾーストに飛び乗る。

蒼唯「紅!?」

紅「行こう、蒼唯ちゃん!! 檸檬ちゃんが待ってる!」

蒼唯「ああ、そうだな!」

アクセルを入れ、猛スピードで走り出す。

源左衛門「行くぞ、ずず!」

ずず「へいっ」

付喪ライドに乗り、蒼唯たちと並走‥

メアリー「蝕‥アンタ、ホントにうんつくじゃあないだろうね‥」

愚かな行動ばかりではない、蝕のみに起こる変調に

メアリーはイヤなものを感じた。

自身も死にかけたことがあり‥その時に感じた『イヤなもの』と同じ感覚を
蝕からも受ける。

メアリーは呟くと、すぐさま付喪ライドに乗って並走。

最短距離で、檸檬が待つ場所へ移動するため

ハートフィールドへの扉は開かれた。
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