彩心闘記セクトウジャ・3

□レベル11・2
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蒼唯「それは違う、緋色は身勝手だ!

たとえ姉でも肉親でも人はひとりの人間だ。

思うように動かしていいはずはない、そんなことは間違ってる」

紅「うん‥今は私もそう思ってる。

間違ってるのは緋色なんだよね‥

で、間違ってるなら私がガツンと叱ってあげなきゃいけない。

それはみんなに任せていいことじゃなくて、私がしなきゃいけないことで。

私、緋色のお姉ちゃんだからね。

だから戦いに行ったんだ‥そしたら」

翠季「メフィストが出たんじゃないです?」

紅「うん‥アイツ、ものすっごく強い‥そして怖い。

だから、私たちは戦って倒さないといけない‥メフィストを。

このままにして置いたら世界は必ず壊されちゃう」

蒼唯「わかった‥ならまず、私たちはお前の邪魔をするヤツらを止めておこう。

お前はお前の成すべきことをやれ、紅」

檸檬「私たちは、悪魔たちが紅ちゃんの邪魔しないように

必ず食い止めて見せるから」

雪永「紅ちゃん、だから緋色くんを叱ってあげて‥助けてあげて」

紅の手をしっかり握り、雪永は瞳を潤ませて力強く言った。

紅「雪永さん‥うん」

蒼唯「雪永! またお前は!!」

雪永「うわぁ!!!」

ドタバタしてるが、絆は強くなっている彩心たちだった。


都内・校舎

廃校となったが、建物はそのまま残されている。

楽代「あははは、紅ちゃんたちって楽しいなぁ」

クスクス、ウフフフ、ギャハハハと

キラキラと輝く珠の中を見て笑っている楽代。

アズゥ「なにひとりで笑ってるんだよ、気持ち悪い」

楽代「あっ、ごめんごめん」

フッと珠は消えて、笑いすぎて涙が出ている楽代は

白い衣の端でちょんと拭きながら、謝る。

ベルデ「紅と言ったが‥勇者のことか」

ズオンソー「勇者たちのことを視ていたのか、お前は」

楽代「そ、ちょっとワリありでね」

シアン「勇者‥あの不思議な子か」

思えば紅は、強いのやら弱いのやら‥不思議な愛だった。

アズゥ「すぐに気絶するしね」

ベルデ「訳が分からない行動に出るし」

ズオンソー「だが、アイツは誰よりも強い‥

俺は1度、アイツの真の強さをこの身で感じたことがある。

ノワールやクイーンに匹敵するほどの‥あるいはそれ以上の強さだった」

シアン「勇者‥ノワール様‥そういえば‥」

マゼンタ「どうしたの? シアン」

シアン「いえ‥実はノワール様が以前、勇者をクローマパレスに連れてこいと

お命じになられたことがありました」

アズゥ「勇者をクローマパレスに?」

ベルデ「そんなことがあったんだね」

シアン「はい‥なぜノワール様は勇者をクローマパレスへ連れてこいとおっしゃったのか

私には皆目見当もつきませんが」

ズオンソー「しかしアイツのことだ、理由も無くそんなことを命じはしないだろう」

マゼンタ「どこにいっちゃったんだろ‥ノワールさん」


寂しげな表情を浮かべるマゼンタ。

ここのところの急激な変化に対応するのに精いっぱいだが

母と慕うベルメリオに自分は捨てられたのではないか?

自分の事など目に入っていないベルメリオにマゼンタは深く心を痛めていた。

こんなとき、ノワールがいてくれたらきっと

元の通りになるのではないだろうか?

元のようにしてくれるのではないだろうか?

泣きたい気持ちを必死にこらえていた。

マゼンタの頭にポンっと手を置く楽代。

楽代「泣いていいんだよ。

辛いときは我慢せずに、泣いたらいいんだよ。

泣いた分だけ、必ずホントに笑える日は来るんだから」

微笑みは優しく‥

マゼンタは楽代の言葉に包まれて、ポロポロと泣き始める。

シアン「マゼンタ様‥」

楽代はマゼンタを抱きしめて

楽代「よしよし」

マゼンタの背中を、頭を、優しく撫でる楽代。

シアンはそんな様子を見て、自分に足りないものがまだたくさんあると痛感する。

楽代「慌てない、慌てない。

キミだって成長してるんだよ‥ほら、今ここにいるってことがその証拠。

慌てなくても、ちゃあんと成長してるんだ。

だいじょうぶ、キミはいい花嫁さんにもいいお母さんにもなれるから」

ニコニコと笑顔の楽代にシアンの心の痛みが消えていく。

シアン「まるで‥神様‥」

楽代の言葉は心地よい春風のよう。

シアンやマゼンタだけではない、アズゥもベルデもズオンソーも

楽代の言葉や笑顔、漂わせる雰囲気が

自分たちの不安や恐れを薄めさせ、和らげているのを感じている。

神なのか? 別の存在なのか? 依然、何者かわからない楽代だが

アズゥたちは楽代を信頼し始めていた。

楽代「そうだ‥そろそろいいころかな?

あのね、みんなにはこれから行ってもらいたい場所があるの」

アズゥ「場所? どこだい」

楽代「それはね‥」

楽代はなにやらアズゥたちを呼び寄せて話していた。


真・救世神教本部フロア

暗闇の中‥静寂を割いてクリムゾンが現れる。

身体はボロボロ、傷だらけ。

憑りついたメフィストに抵抗し、危害を受けていたのだろう。

しかし‥まだその身体の中には悪魔が潜む。

リリスも空間からフロアへと出てきた。

クリムゾン「ここは?」

どうやらクリムゾンの中のメフィストは、今は眠っている様子。

楽代との戦い、そしてベルメリオとの戦いに力をいささか消費したようで

そのため、しばしの眠りに入っているのだろう。

リリス「あ‥こ‥こ‥」

『ここは』と喋りたいのだが、思うように喋れない。

『美しい』『待って』と発した時は、思いがけずついて出た言葉。

改めて発しようとするが、長く失っていた言葉は

発しようと意識すれば、なかなか簡単には出てくれない。

クリムゾン「歌は‥ご存じかしら」

首をかしげるリリス。

クリムゾン「私のマスターも実は、歌が好きなんですのよ‥ちょっと音痴ですけども」

リリス「あ‥う、う‥う‥た‥」

クリムゾン「ええ、歌。

マスターはよく歌うんですの‥寂しいとき、悲しいとき、歌って

泣きそうになる自分を励ましてたそうなんです。

小さいころから、亡くなったお父様の代わりにお母様やお姉さまを守るんだって

頑張ってきたマスターなんです。

あなた‥悲しい瞳をしてらっしゃいますわ。

いえ、いいんですの‥ワケはおっしゃらなくて。

誰にも辛い苦しい、話したくない過去なんて

ひとつやふたつは ありますもの。

けれど、いつまでも悲しいままでいたってせっかく生きているんですのよ‥

涙は堪えて、歌っていかなくちゃもったいないですわ」

クリムゾンは若くして散った子戦竜を想う。

クリムゾン「歌をうたって、悲しみ色の瞳を元気色に戻しませんこと?」

リリス「あ‥うた‥うた‥い‥たい」
クリムゾンはリリスにとても美しい、澄んだ高音で歌って聞かせる‥

緋色が歌うものとは大きく違って

普通おいそれとは歌えない技術を要する歌劇の歌だったが

リリスはそれまで沈んでいた瞳を輝かせ、クリムゾンの歌に聞き入っていた。


付喪ライナー

伝助は鉢巻をして、そこにドライバーやらペンチやら差し
ドタバタしている。

ルナがおにぎりを持ってきて

ルナ「伝助さーん」

伝助「投げてんかー」

ルナ「はーい」

ポーンとおにぎりをふたつ、伝助の口へめがけて放ると

パク! もにゅもにゅもにゅと

伝助はふたつ いっぺんに口へ入れて食べる。

伝助「おかわりぃ」

ルナ「はーい」

次はみっつポーン‥パク! もにゅもにゅもにゅ!!

缶吉「ルナさんよー、こっちもすまんけどー」

ルナ「はーい」

ポーン

ごん「ぶっひひひひっぶひー」

ルナ「はーい」

ポーン

ねん「うんもももんもんもーん」

ルナ「はーい」

ポーン

ペン「す、すみませんけどオイも」

ルナ「はーい」

ポーン

餡子「あははは、まるで節分みてぇだナ。

豆の代わりに、おにぎりダ」

淑「皆さん、お忙しいですからねぇ」

ルナ「総右衛門さんも」

ポーン‥総右衛門は、ものすごく嬉しそうに飛びついてパクパク食べる。

淑「あの人ったら、もう」

君兵衛「ちゃっちゃっちゃっ、完全に犬の習性が出とるぜよ」

伝助たちはまだ、様々に作業の真っ最中。

付喪堂ならばもっと捗るのだが、仮住まいであるライナーの
狭い整備車両内では混雑するのも仕方がない。

ペンの武装は完成した。

が、エトの武装、さらに菫の乗るバイクのこともある。

菫が以前乗っていたバイク‥蝕が作った戦闘バイク

紫色の亡霊 ゴースト・ビオレータの乗るバイクとして

人を何人も轢き殺し、廃車となって解体寸前のバイクを

『殺塵機(さつじんき)・パープル』へと変化させ、ピオレータに与えた。

それを伝助は改造‥

伝助「だいたいやな、趣味が悪いねん、アイツ‥」

蝕が作ったバイクの性能は自身のセクゾーストと引けを取らないほどの高性能だ。

それは認めるが、作るものの想いに伝助は腹を立てている。

伝助「命を奪ってもぉたバイクやったら

その罪を償うような使い方してやらんで、どないすんねやっ」

その伝助の想いが、殺塵機・パープルを生まれ変わらせる。
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