旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□第3話・2
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都内 パトカーがあちらこちらと相当数走り回っている。

警官もかなりの人数が右往左往していた。

総右衛門に連れられて仁たちが駆けつける。

孝太は警官の中に、元の同僚の姿を見つけると、情報収集に向かう。

仁「くそっ、警官があたふたしてるばっかりで、なんにもわかんねえ!」

愛理「この様子だと、その物の怪‥化け物ってのはまだ逃げ回ってるようね」

満優「総右衛門が言っていた物の怪‥ツクモ神のことでしょうね」

そこへ、警官と話しをしていた孝太が仁たちのもとへ帰ってきた。

孝太「みなさん、聞いてきましたよ!男性4人を襲い、うち2名を殺害したあと、

逃げ出した残りの2名を追ってどこがへと走って行ったそうです!」

愛理「よくわかったわね」

孝太「ええ、以前の同僚がいたもので‥なんとか聞き出しました」

満優「ではまだそのツクモ神は、その方たちを追っている」

愛理「だとしたら何故?

狙いは信代ちゃんでしょ」

仁「んなもん、見つけりゃわかるって!それより伝助、信代ちゃんとつながったか?」

伝助「あかん、さっきからずっと信代ちゃんの転精輪を呼び出しとんねんけど、

ぜんぜん、つながらへん」

満優「敵の妨害は続いていると言う事ですね‥私にもそれはきているようです、

頭の中に霧がでているみたいで」

孝太「どうしたら‥まさかもう…」

愛理「そんなわけないでしょ!あのこに限って」

総右衛門「孝太殿、信代殿を信じましょう」

焦る仁たちのもとへ、シュッと、黒覆面に長尺のマント姿の源左衛門が現れる。

源左衛門「満優様!この先の公園で血の匂いが。

雨ですっかり流れてしまいましたが妖術らしき痕跡が‥

人間にはわかりはしないでしょうが、俺の目はごまかせません」

満優「そうですか、みなさん、そちらへ行けば何かわかるかもしれません」

仁たちは急いで、源左衛門が知らせる公園へと向かった。


都内 雨がアスファルトを強く打ち付ける。

浮かぶ光の珠を後ろに引き連れて、信代があたりを見回りながら走っていた。

信代「変だ…転精輪がつながらない」

ずっと前から通信を試みてはいるが、まったくつながらない。

突然、男たちの悲鳴が聞こえる。

信代はハッとなり、悲鳴の聞こえたほうへと走っていく。

向かった先には、見るも無残になった男たちの姿があった。

信代「これは‥」

ひと目見ただけで、すでに息をしていないのがわかる。

倒れているのは2名の男達。1人は頭を潰されている。

もう1人は手足をもぎ取られ、腹部に穴が開けられていた。

その男の頬には、引っかき傷のようなものが見える。

ゆっくりと1人の男の手を取り、精神を集中する信代。

脳裏に浮かぶビジョン‥知美への凶行‥

信代「ひどい‥」

全身の毛が逆立つ気を感じる。

信代「あなたたちの罪‥しっかりと懺悔したら…天へと迎え入れられますように」

信代の体が淡く光ると同時に、物言わぬ無残な姿となった男たちの体から
小さな光の珠が抜け出し、弱々しくはあるが天へと上っていった。

はっきりと視えたのは、荒れたビルのフロアで、ほくそ笑むジャシンの姿。

気が付けば、知美の夫である光の珠がいなくなっていた。

しかし、今は気にしていられない。

怒りで震える足を抑えながら、信代は雨の中をまた、

走っていった。


廃ビル・6F ガランとしたフロア。

使われなくなった机や何かの機器が、

ほこりをかむっている。

そのフロアの中央‥書類らしきものが散乱する床の上に、哲也は寝かされていた。

ボロ布を着せられ、額には濡れた布があてがわれている。

息が少し荒いものの、どうやら熱は少し下がってきた様子。

何者かが、このフロアへと入ってきた。

ズル‥べタン…ズル‥べタン…。

不気味な足音を響かせて、哲也に近寄ってくる影…

奇怪な姿をした化け物、ツクモ神・慕剥。

手に、濡らしたボロ布と水が入った、欠けたグラスを持っている。

鋭く伸びた爪を、哲也にあてまいと注意しながら優しく抱きおこし、水を飲ませる。

哲也「おかあ‥さん…」

眠ってはいるが、うわ言で母の名を呼ぶ。

ふたたび、そっと哲也を寝かせると

額の布を取り替えた。

少し楽になったのか、寝息をたてる哲也。

「シャロロロォ」奇妙な鳴き声を発し、哲也を見守る姿が物悲しく見えた。

ジャシン「もういいでしょう、慕剥‥いや、知美」

朽ちかけた壁の中から音もなく現れるジャシン。

ジャシン「さっさと残る1人を始末したらどうだ。お前のその手を見てみるんだな‥
醜く、血に汚れた薄汚い獣の如き手を。

たとえ、どんなに夢見ようとも、望んだところでもう、以前のような母親には戻れない
のだ。

悔しいか‥口惜しいでしょうねぇ。

だが、忘れるな‥そんな姿に成り果てたのも、すべては風と言う名の占い師‥

風丘 信代のせいなのだ。

お前を襲った男達はすべて抹殺した‥残るは風‥そして、その仲間であるセイレンジャー。

愛しいわが子に熱を出させたのは風、男達にお前を襲わせたのはセイレンジャーの仕業
なのだ。

やつらはささやかな幸せと言うものを憎んでいますからねぇ‥愛情など無意味、

幸せなどただの堕落…破壊こそすべてであり、怒り、憎しみ、悲しみ‥絶望こそが
真の悦び…クククッ‥それが、風とセイレンジャーの望みなのですから。

早くヤれ‥お前のその恨み、ぶつけてやるがいい」

慕剥「シャロロロロォォォォ!」

悲しみを含んだ声を一声発すると、慕剥はうなだれながら口を開いた。

慕剥「でも‥でも‥あの風さんは悪くないんじゃ…」

しゃがれた声だが、その言葉の端に知美の雰囲気が垣間見える。

ジャシン「まだわからないのか‥占い師だと言うのなら、

何故、お前がそんな姿になることがわからなかった?


過去‥今までの想いと苦労‥そのすべてを言い当てておきながら、

目の前に口を開けて待ち構えていた、この惨劇を何故わからなかった。

いや、わからなかったのではない‥教えなかっただけだ‥

知りながら、お前に知らせずにいたのだ。

子供の熱はどうだった?

ひどくはならないと言ったのだろう?

だが、実際はどうだ?

子供は危うく死にかけ、お前はそんな化け物になってしまった。

それこそが風とセイレンジャーの企みだったのだ‥すべては仕組まれたこと、

お前のささやかな幸せを踏みにじるためにな」

愕然とする慕剥‥知美。

わなわなと体を震わせた。

ジャシン「言葉巧みにお前に近づき、こんな姿にした風を生かしておくのか?

2度とわが子と日の下を歩けぬ姿にしたやつらを‥風を、

風丘 信代と言う女の肉体を引き裂いてやるがいい、セイレンジャーを殺せ、殺せ、殺せ!」

ジャシンの迫る声と、泣き叫ぶ知美の声が入り混じっていく。

そして、泣き叫ぶ声が人のものでなくなった時、知美‥慕剥は窓越しから宙へと
ジャンプ。

流した涙を雨と交じらせながら、風を狩るために走り去っていった。

ジャシン「やれやれ‥面倒な奴ですよ。これだから人間は‥まぁいい。

セイレンジャー、お前たちがどう出るか、見物させてもらいますよ‥

クククッ、フハハハハハハ」

高笑いする声を残し、雨の街へと消えていく。
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