付喪堂綴り・1

□第5章・2
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襲われかけた初枝が、次は新たな謎の影に襲われようとしていた。

それを阻む伝助とルナ。

他の生徒や講師は、ルナによって無事に逃げ出している。

戦いの結果、窓ガラスが次々と割れるほどの衝撃が生じてしまったよう。

伝助「ルナ、その子のことは頼んだで!」

ルナ「はい!」

伝助は笹寿司を撃って、敵へと突っ込んでいく。


勝って嬉しい、はないちもんめ

負けて悔しい、はないちもんめ

あの子が欲しい

あの子じゃわからん

その子が欲しい

その子じゃわからん


‥‥‥‥


あの子もいらない

この子もいらない


私の子供を返して‥返して‥返して!


伝助「来よるぞ!!!」

ルナは翼で自身と初枝を守り、祈願大天使翼の全6枚の羽根で伝助を守った。

次の瞬間、大きな衝撃!

建物は揺れ、軋み、徐々に崩れ始め出した。

伝助「崩壊するんも時間のうちか‥ルナ、その子を連れて

早ぉ外へ!」

ルナ「はいっ。

さ、行きましょう!!」

ルナは初枝を連れて逃げる‥が、入り口から突然上がる火の手。

初枝「きゃあぁぁ!」

ルナ「ヴァダー!」

冷凍光線で火を消し止めるルナだったが
『初枝ちゃんっ』ルナに気付かれない声の大きさで、初枝を呼ぶ男‥保科。

保科「ここは危険だから、こっちから逃げよう」

初枝「で、でも おじさん」

保科「心配しなくていいから‥アイツだって、悪いヤツの仲間かも知れないよ」

突然現れた天使‥容易に味方だと思えることも出来ず
それよりも知人の保科を信用してしまう初枝。

初枝「は、はい」

保科とともに逃げ出した。

火を消し止めたルナが振り向くが、一瞬の差で初枝の姿を見失う。

ルナ「どこ!? いったいどこに‥」

辺りを伺い、素早く捜索に走る。

伝助は燃える教室の中で、謎の影と戦闘中。

伝助「熱っ!」

燃えないように気をつけながら、繰り出すササニシキ。

影は炎に照らされて、その邪悪な姿を現した。

伝助「オ、オカンっ」

軽くボケをかますが、影はスルー。

伝助「僕のボケをスルーしくさりおってぇぇぇ!」

逆ギレで放つ笹寿司をかわし

影‥鬼女は、長く鋭い爪で机を真っ二つに裂いていく。

そして大きなホワイトボードも粉砕し、それらの攻撃を巧みに避ける伝助へさらなる攻撃!

窓から脱出しようと思っていた伝助を捕える長い舌。

伝助「キショっ!」

ヌメヌメとした体液が絡みついて、異臭漂う舌はきつく体を締め付ける。

伝助「ヌメヌメって‥うなぎか! ウナギやったら稚魚不足は深刻でおますなっ」

生態系の不安を心配しつつ、まるでウナギのようにニュルニュルと脱出!!


思わず怯む鬼女。

物の怪がひくほど、気持ち悪い動きの伝助だった!!!

伝助「じゃかあしぃぃぃ!」

ブチ切れパワーで、笹寿司。

鬼女ごと壁を吹き飛ばし、あっという間に崩れる建物から伝助は飛び出る。

慈勇「オン・マユラ・キランディ・ソワカ!」

孔雀明王印を結んで唱える真言で、鬼女の殺気を抑え込もうとする。

鬼女「私の子を返せ!!!」

慈勇「なっ!?」

聖なる光をものともせず、鬼女は自由に飛びかかった。

伝助「チェリーパぁぁぁイ!」

欧米ちっくに叫んでササニシキっ!

伝助「気ぃつけやっ。

コイツ、けっこうやりよんで!」

慈勇「それだけ怨みの念が強いと言うことですか‥だが!」

師より借りた仕込み錫杖を抜き放ち

慈勇「喝!」

気合を込めてひと振り。

斬撃が地を走って鬼女を捉える。

『ぎゃあ!』

悲鳴とも咆哮とも射えぬ大声を発し、だが鬼女はすぐさまに襲撃を加えた。

慈勇「鎮まれ、悪鬼よ!」

伝助「静子さんは、アッチよ!!」

なんでこんな時にボケるのかっ。

が‥『ん?』って感じに思わず振り返る鬼女と

慈勇「えっ?」

慈勇もチョットキョロキョロ。

伝助の目はキラリン☆

伝助「チラ見ぃぃぃ!!!!」

まぁチラ見したのは確かだが、もともとそう仕向けたのは伝助で‥

そんな感じで撃つササニシキ!

鬼女「ぐわあぁぁ!」

慈勇「あっ‥」

伝助「『あっ』ゆーてる場合かっ!」

タタっと走って、鬼女をポッコボッコにする。

慈勇「わっ、わわっ、待って! ちょっと待ってくださいよ!!」

慌てて伝助を止める慈勇。

慈勇「ま、真の人助けをと、言うたではないですかっ」

あの言葉と目の前で繰り広げられている光景とは180度違うっ。

伝助は悪そうな笑みを浮かべて

伝助「これも表現のひとつやっ」

慈勇「お、恐ろしい‥」

伝助「鬼女の正体は‥やっぱり‥オイ、慈勇っ。

ソイツも頼んどくでっ」

伝助は何かに気付いて、1部が焼け崩れた建物を見る。

遠くで消防車のサイレンを聞きながら

伝助「ルナっ」

あっという間に走り去った。

慈勇「あっ!」

止める間もなかったが‥その背後から起き上がった鬼女が慈勇を飛び越え

伝助が走り去った方向へと駆けて行った。

慈勇「うわっ! ま、まだあんな力が‥そうか、それで伝助さんはポッコボコにして
私に任せると‥しまった! ま、待てっ」

己のしくじりを悔いながら慌てて、仕込み錫杖を手に追いかける。


建物・裏

裏に細い路地がある。

その先はゴミ置き場で、そこを曲がってまっすぐ行くと大通りへ出れるし
反対を行けば山へと向かうことも出来た。

ルナは山手の方へ白色の『ルーチェ』黒色の『オプスキュリテ』
黄色の『トゥルパ』緑色の『アネモス』の4枚の羽根を向かわせて

赤色の『イグニス』青色の『ヴァダー』と2枚の羽根を引き連れて
自身は大通りへと向かう。

ルナ「人けのないところへ逃げるよりも、人通りの多い所へ逃げるほうが
追手をかく乱できる‥」

羽根4枚を偵察へ出し、自身と2枚の羽根で初枝の姿を追う。

翼を広げて飛翔!

速度を上げて天使は進む。

『やめて、おじさん!!』

『いいから乗りなさい!』

ルナ「いた!」

やはり初枝は、ムリヤリに車に押し込められようとしているところだった。

ルナ「イグニス! ヴァダー!」

赤色と青色の羽根が宙を舞い、初枝をさらおうとしている保科を阻む。

保科「な、なんだ!?」

突然のことに驚いた様子。

ルナ「その子をどこへ連れ去ろうと言うのですか!」

天より舞い降り、剣・メサイアを突き付けるルナ。

保科に抵抗しうる力はない‥ただ、剣先に身がすくんで固まるのみ。

ルナ「さぁ、こちらへ」

初枝はすぐさまルナの下へ。

ルナ「なぜこんなマネをするんです!? この子を一体どうしようと‥」

保科「天使‥天使なのか? ほんとうに‥」

翼を広げるルナの姿を見て、保科は涙を流した。

ルナ「あなた‥」

その様子に何か深いわけがあると察する。

伝助「ルナぁ!」

伝助がすぐそばまで来ていた‥が、後ろから猛スピードで鬼女も近づく。

伝助「しつこいやっちゃ!」

笹継で振り払う。

刀をサッと避けて、鬼女は初枝目指して一直線。

ルナ「させません!」

メサイアを振って、鬼女の行く手を防ぐ。

伝助「ちぇすとぉぉぉ!」

ササニシキを鬼女へ撃つ!

両手の爪は二振りの刃によって粉々になり、走る脚も動きも鈍くなってきた。

伝助「もう やめろて ゆーてるやろっ」

鬼女をなんとか止めようとする伝助。

ルナはサッと初枝をかばって身構える。

そんなルナの前へ、保科が躍り出た。

保科「やめろ! もう終わりにしよう、昌子‥」

鬼女の動きが止まる。

鬼女は低く唸っている‥

保科「もう子供たちの血を盗んだり、傷つけたりするのは終わりにしよう‥

こんなことしていても、千代は‥千代は!」

鬼女は悲しげに保科の前へ進む。

慈勇がそこに駆け付けた。

伝助「アカン! そこ どくんやっ」

伝助の声に反応してルナは初枝を守る。

伝助は笹継を構えて走ろうとしたが

慈勇「なんで!? もう襲う意志はないはずです!」

そう叫んで伝助を止める。

伝助「どきさらせ! アレはお前が思ぉてるようなヤツとは ちゃう!!」

慈勇「いや、あの鬼女は何らかの不幸で大切な人を亡くした女性ですっ」

伝助「どないな気ぃを探ったか知らんけど、甘ちゃんなんも たいがにせぇよ!」

ルナ「伝助さん!」

ルナの悲痛な声‥鬼女は折れてしまった鋭く長いた爪を高々と振り上げて
初枝を突き刺そうとしていた。

初枝を守るルナ‥メイサアもイグニスとヴァダーも
初枝をしっかりとガードした。

ズサ!

肉を貫く音が響く‥飛び散る鮮血。

伝助「どアホ!!!」

慈勇をおもいっきり殴って振りほどき、走る伝助。

保科「う‥うぅ‥」

右胸を貫かれているのは保科。

保科「ま、昌子‥」

愛する妻はもう、自分の声さえ分からないのだろうか?

最愛の娘を‥亡くし、今また妻にさえ忘れられようとしているのか‥

伝助「ちゃう! ソイツはアンタの奥さんと ちゃうで!」

怒りを込めた笹の葉さぁらさら!!

鬼女を吹き飛ばした。

ルナはすぐに保科へ止血。

が、口からかなりの血を吐いている‥
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