彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル6・2
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保育園

爆破現場。

まだ多くの報道陣や警察関係者がいる。

そこへやってきたのは雪永と桜花。

飛び出していった緋色を追いかけた墨彦を追って

ここまできたのだが‥見失ってしまう。

桜花「ここ‥なんかあったとね?」

雪永「ニュースとか見てなかったですからね‥ちょっと待ってください」

道路の端に移動して、ツァイフォンを取り出すと
ワンセグ機能を使う。

未確認破壊脅威4号による都内連続爆破事件。

確証もない話が、いつのまにやら事実になり
延々と報道されていた。

雪永と桜花は5分ほどその放送を見ていた。

そして、雪永はすぐさま伝ラボに連絡。

通信に出たのは『んも?』と、まさかの ごん。

雪永「あ、あの‥急ぎの用なので、誰かに代わってもらえますか」

『せっかく電話に出たのに』的に、イラッとした爆笑で代わったのは

『ぶっひぶひぶひ♪』

桜花「話せる子に代わらんねてーーー!!!」

いわゆる『天丼』という笑いの技法に、たまらず怒る桜花。

『ぶひは話せるぶひ』

桜花「初めから、そう言えばいいったい」

雪永「あのね」

『餡子ちゃーん、代わってくれぶひ♪』

桜花「アイツ、今度会ったらトンカチで割っちゃるばい!」

雪永「で、でもあの子たち割れないように特殊コーティングされてるそうですよ」

なんて話していたら

『もすもーす』

と、餡子の声。

雪永「餡子ちゃん、僕だよ」

『あんれまぁ、息子の洋かね』

雪永「いやいや、オレオレ詐欺とかじゃないんだから‥」

『わかってるだよぉ、雪永さんじゃろ。

今、付喪堂は振り込め詐欺撲滅強化月間なんでの

摘発すっために、とりあえず息子か?ってこっちから言ってみるだよ』

桜花「大胆不敵な作戦ね」

『んだ、名付けて『わだすわだす捕獲作戦』だべさ』

雪永「ごめん、詐欺撲滅については後程ゆっくりお話聞くとして

爆破事件知ってる?」

『知っとるもなにも、伝助さんたちはその件で出動中ズラ』

雪永「そうなんだ‥モンスタリアの仕業なの?」

『うーん‥まだなんとも言えんのよ。

とにかく情報を集めに出ておらっさる。

なんせ、SSDやら国守軍が

伝助さんたちがコツコツ設置したセキュリティーシステムさ

ぜーんぶ撤去しよるでな』

桜花「まぁた国守軍に、SSDのヤツラの邪魔‥」

雪永「わかった。

餡子ちゃん、なにか情報が入ったらすぐに連絡頂戴ね」

『あいよ!』

通信を終えて、雪永と桜花は顔を見合わせる。

雪永「また、あの人たちが邪魔をしてるんですね」

桜花「今じゃ国守軍もSSDも、国民の大ヒーローだもんね。

そげんこつ、バカな話ってあるもんね!

アイツらのために、どんだけ苦しか目ば遭ぉてしもうたか」

前回の戦いを思いだし、桜花は激しく憤る。

雪永「マスコミ・メディア、学校でもどこでも

子供たちや反対派の人たちへ、刷りこみって言うかマインドコントロールっていうか

熱心に説得の様なものが行われてるって聞きますし」

桜花「こん国‥私も、こん国の人間やけん、こんな言い方はおかしかけどね

こん国の人たちは、強く言うヤツラの言葉にワーって熱狂して

ついていってしまうクセがある気がするんよ。

お役人、お上には逆らわん方がええ‥そんなクセが。

もちろん、そがん人たちばかりじゃ なかやけど確かに おるんは おるとよ。

原子爆弾ば落とされた大戦で、イヤっていうほど そいは わかってるはずやのに‥

戦争ば知らん世代が多くなって、戦争ば語る人の話しば聞かんごとなって

遠い昔の話し‥絵空事にも思う人が出てきよる。

やけん、戦争すればよかとか、核爆弾もてばええとか よその国にミサイル撃ち込めとか

平気で言えるんよ。

原爆の恐ろしさが どんなもんか‥今も苦しめられとる人たちがおって

戦争の傷跡はまだ、こん国に深く刻まれとる とたい。

それをちゃんと感じられとつたら、そがんことは言えん」

桜花は幼い頃から、今は亡き祖父や祖母から戦争や原爆の体験を聞いていた。

実体験を聞く機会が減ってしまい、

戦争の重さは毎年毎年‥月日を重ねるごとに軽くなっていく。

戦争を知る者が受けた傷の深さはそのままに、言葉だけが軽くなっていく。

軽くなった戦争は美化されはじめ、互いに傷つけたにもかかわらず

国は被害意識だけを残し、侵略して多くの人を傷つけたことを無かったことにして

今また多くの人たちを傷つける。

それに同調する戦争を知らない世代の国民たちがいる。

戦争を知る世代でも、当時の立場・立ち位置で戦争への意見は変わり

まして、戦争を知らない・知らなさすぎの世代では

大きく言葉の意味も重さも変わってくる。

他国とて、被害意識だけが膨れ上がってしまうことはあるだろう。

戦争とは人間の醜さがくっきりと表れる行いでしかないのだから。

だから‥

桜花「世界中で、みんないっしょに戦争のことば、せーので謝らんといけんかったんよ。

戦争に勝った国が、負けた国に言うこときかせようとせんでも

お互いに殺しおうたんば、ごめんなさいと言えばよかことやった。

なんも罪のない人たちば 原爆で焼き殺して

戦争に勝ったからって‥なにが よかこつや。

負けた国も、多くの大切な命を犠牲にする必要がどこにあったんよ‥

勝った国、負けた国、どこもが今になっても自分たちの悪かったことば認めんから

今っちゅう時代が、こがん軋みよるんよね。

人の心は怪物‥やけん、モンスタリアが生まれたんかも知れんばい」

国守軍、SSD‥同調する国民。

その姿を見て、桜花はモンスタリアが生まれた意味を考えていた。

雪永「確かに、人の心は怪物なのかもしれませんね。

僕の心の中にもきっと、怪物はいる。

少しでも気を緩めたら、心の怪物は僕自身を襲って‥

食べて、身体を乗っ取るのかも知れない。

だから‥だから、僕たちは戦っているんでしょうね。

心から生まれたモンスターたちを止められるのも、僕たち人の心ですから」

桜花「国を戦争へ走らせるのが人なら、戦争を止めるのも人‥

人は人の心の中の怪物を抑えて、生きていかな ならんものなんよね」

雪永「僕、中卒だから難しい事とかわからないですし

エラそうなことも言えるワケじゃないですけど

人が心の戦いをするための力を貸してくれたのが、伝助くんたちだと思います。

人の心の戦いが、ものすごくわかりやすい形になったのが

モンスタリアと‥僕たちセクトウジャの戦い。

心の戦いに重要なカギがあるとしたら‥

モンスタリアが狙う『神』っていう存在‥かなって」

桜花「そうね‥心の戦い。

本当なら、目に見えないはずの戦いが、互いに傷つきながら、血を流しながら
目に見える戦いをしている。

そんな戦いに私を導いた、総右衛門くんやよっちゃんにあったときはビックリしたなぁ」

雪永「僕たちは‥僕と墨彦は

源左衛門さんとメアリーさんに助けてもらったのが出会いでした。

桜花さんは?」

桜花「私はね、ちょうど地方のカラオケ大会のゲストで
出番が近まってた時だったなぁ。

いきなり総右衛門くんやよっちゃんが現れて

ビックリした私は、近くにあったビンゴゲーム用のゴムボールを投げてね‥

そしたら総右衛門くん、ボールを見て目がキラキラしたもんだから

『取っておいでー』って言ったのよ」

雪永「そ、それで‥」

桜花「そのまま、はしゃいでボールを取りに行っちゃった。

で、私はステージに上がって歌って、袖に戻ってきたときは
よっちゃんが冷たいお水をもって待っててくれたの。

総右衛門くんはまだ遊んでたなぁ」

そして‥仕事がすんでホテルへ帰り

桜花は改めて総右衛門と淑からセクトウジャの使命を聞く。

心の色彩、心のジョブ‥心のモンスター。

心の世界、精霊世界、人間世界、三つの世界を救い

人の心から『悪意』というものを根絶する。

世界は守れたとしても、悪意根絶を目指すのは果ての無い戦いに等しいと
桜花はどこかで感じていたが‥

『でも、誰かが がんばらんばたい!』

そう言って、戦うことを引き受けた。

雪永「でも、仕事優先でしたね」

桜花「うっ‥そうそう、引き受けたモンの

なかなか踏ん切りがつかなかったって言うか‥歌うことを捨てたくなかったから」

でも、仲間たちが『歌う』ことは『叫ぶ』ことと同じで

それはステージでなくても出来ると教えてくれた。

ステージの上だろうと、青空・夜空の下であろうと

歌う者が想いと心を込めて歌えば、誰かに必ず届く。

叫びは必ず心に響く。

酔っ払いばかりの客席‥心無いヤジ‥

心は傷だらけになって、歌うことの意味を見失いそうになっていた桜花は

仲間たちの言葉で‥叫びが桜花の道しるべとなった。

桜花「今度は、私の歌が誰かの道しるべになったらいいなぁ」

雪永「桜花さんっ」

突然、雪永は声を強く発して桜花の肩を抱く‥

桜花「うっ、うわぁぁぁ、な、なんねっ!?」

雪永はそのまま物陰へ。

桜花「いや、ちょっ、ちょっとまずかて。

雪永くんは若いし、私みたいなオバサンじゃ」

胸は高鳴り、顔は真っ赤。

アタフタする桜花に

雪永「だから、桜花さんはオバサンじゃないですって」

桜花「い、いやぁ‥ホメてくれるのは嬉しいんだけど

ちょっとゴーインすぎやせんかなぁって‥そーいうの、キライじゃなかけど‥」

テレては、デレデレ‥

桜花「紅ちゃんには悪かばってん‥キ、キッスなら‥」

タコさん口の桜花。

雪永「ん? どーしたんです?」

桜花「へ?」

雪永「いや、警戒中のトルーパーズにみつかりそうだったんで

とりあえず身を隠した方がいいかなぁて」

桜花は心なしかガッカリした様子で

桜花「そ、そいなら慎重に行くとしようかね」

別の意味で顔を真っ赤にさせながら、桜花は歩く。

雪永「あ、あっち側の方がいいみたいです」

雪永は死角を突いて、機敏に動く。

桜花「さっすが、殺陣もやってただけのことはあるなぁ。

紅ちゃん‥瞬間とはいえ、悪い姉さんば許してね」

紅が気になる雪永の気持ちはわかっているのに‥なんか期待してしまった自分が
ものすごく気恥ずかしく

まだ、ドキドキする気持ちが残っていたことに

ちょっとだけ嬉しくなった桜花だった。

桜花「あー‥恋人欲しっ!!!」
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