彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル6・5
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蒼唯「しまった!」

隙を逃さず構える2丁拳銃‥ムラザリとラサギル。

引き金に指をかけた瞬間、ピオレータの力が抜けた。

『ちくしょう‥』その言葉を牡丹が残して交代したのは

理性的な交代男性人格『桔梗』が姿を見せた様子。

ピオレータ「この前逢った時よりは、少し過去の自分を取り戻したようだな‥蒼唯」

蒼唯「過去の私‥そんなものはもういない。

といって、明日に私がいるとも思えない、

私は今に生きて、今にだけ留まれれば、それでいい」

ピオレータ「その願いは、残念ながら私が砕かせてもらう。

蒼唯、ここでもう終わりにしろ‥苦しい時間に幕引きだ」

蒼唯「あいにく私には、やらなきゃいけないことがある!」

立ち上がってキック。

蒼唯「幕引きなどまだできない!」

連続の蹴りから、ケンザーを振りおろし

それをピオレータが避けるとブルュッタを構えて

蒼唯「インフィガール・アフマル!」

爆発呪文を唱えて足を止め

突き出したケンザー!

両の短剣で防ぎ止めて、ピオレータ・桔梗は剣でケンザーの動きを封じ

蒼唯の側頭部へ躊躇なく蹴りを放つ。

脳が揺れて、全身の力が抜けようとした。

紅「蒼唯ちゃん!」

仲間の声が遠くなる意識を呼び戻す。

カッと目を見開き

蒼唯「ディファー・カセィール・アブヤド!」

爆発魔法がブルュッタから撃たれ、ピオレータを吹き飛ばす。

蒼唯「紅!」

蝕と戦う紅にカプセルを放り投げた。

蒼唯「とにかくそれを飲め!」

紅「いただきます!」

躊躇も疑問もなく、紅は薬の様な小さなカプセルをゴクっと飲んだ。

蒼唯も、もうひとつ持っていたカプセルを飲む。

ボボン!

蒼唯「淑からもらった試供品だ。

確か‥きらりん☆魔ン誕丸(まんたんがん)といったな。

淑の民間療法と、ピーノの魔法医術で生成した秘薬だそうだ。

回復とある程度の治癒効果があるらしい。

近々、本格的に生産だと張り切っていた」

紅「ホントだ‥傷が治った」

出血が止まり、受けた傷が消えていく。

蒼唯もまた、傷が消えて体力も復活。

蒼唯「ただ‥」

言いかけた時はすでに遅く

紅「へいよー、へいよー、せいっほーおっ、せいほーおっお、ちぇけらっちょ!!!」

と、軽いノリでヒップでポップなダンスを踊りながら紅は‥

紅「ひぁーうぃーごー(HereWeGo)!!!」

それはもう、満面の笑みでレットウをブンブン振り回した。

蝕「バ、バケモノ!」

堕天使が慄く様‥

蒼唯「副作用として、10分間はハイテンション状態になるそう‥だ‥」

と、いうことは‥

蒼唯「いぇぇっす! きゃはははははははは、かもーん♪」

ポンポン跳ねて、ブルュッタを連射する。

ピオレータ「あ、蒼唯っ!?」

変貌ぶりに、ちょっと動揺。

ポンポン跳ねる蒼唯は、火の魔法を放って

間髪入れずに『火の玉キック』

ズボンが焦げているのは気にしないで、よろめき膝をついたピオレータ・桔梗へ

助走をつけての膝蹴りを顔面にぶつけた。

たまらず、倒れたピオレータ。

蒼唯「ぼーの! ぐらしあぁす♪」

イタリア語で『美味しい』とスペイン語で『ありがとう』を

日本語発音で叫んで、ガッツポーズを決める。

蝕「くっ、コイツら!!」

乱切り模様の紅のレットウを四苦八苦しながら避け蹴る蝕は

蝕「ピオレータの対策を考えてたっていうのね、義弟くんのおともだちは」

いや、たぶん‥そこまで考えて作っていたのでは、ないはず。

蝕「いいわ、ピオレータ! そろそろ帰るわよ」

ピオレータ「ん‥んん‥」

衝撃で菫に戻ったよう。

ピオレータ「帰る? ヤダ、私まだ戦う身体になってないし」

戦闘モードに変態していないと言うが

蝕「とうぶん、厄介な状態が続くようだから

ここは出直しってことよ!」

蝕の剣幕にピオレータは仕方ないと言った感じで『はーい』と返事。

ノリノリで気合満タンの紅と

ニタニタ不気味な笑顔の蒼唯は

レットウやブルュッタを手に、ホラー映画チックにユラユラ歩いていた。

ピオレータ「蒼唯、またね♪」

蝕「さ、行くわよ」

空間が裂けて、中に入ろうとしたとき

『うわぁぁぁ』

完全に錆びついた正義の刃を振り上げて、緋色が触たちに突進する。

蝕「なに!?」

もつれて‥開いた入り口に蝕とピオレータもろとも、緋色は落ちていった。

さすがにこの状態でハイテンションは続けられずに

キーン‥副作用を精神力で強制的に抑え込んだ紅を頭痛が襲うが、我に返って

紅「緋色!!!」

仲間の声に蒼唯も副作用をねじ伏せ

蒼唯「しまった!」

消えてしまった緋色を追うため

蒼唯「紅、後ろに乗れ!」

すぐさまセクゾーストに飛び乗ってエンジンスタート。

紅も急いで蒼唯の後ろに乗ると、アクセル全開でセクゾーストは走り出す。

ツァイフォンの生心力/死心力感知機能を起動して
紅は弟の行方を追った。


都内

檸檬も、皆のところへと走っている。

走っていると、正面に人だかり。

家電量販店に並んでいるテレビに映る、特別報道番組に皆、釘付け。

『現れた未確認破壊脅威に敢然と戦いを挑むSSD』

国を守るために戦う我ら国民の守護神と、崇め奉っている者たちであふれかえっていた。

『ぬいぐるみも、おかしなヤツラもブッ殺せ!』

『SSD、ばんざーい』

これはきっと、国守軍が撮影していてるものだろう。

民間の報道各社は立ち入りを厳しく制限されている。

危険であるから‥立ち入るなというその口実の裏で

民間施設などお構いなしに行われる
SSDの破壊行為は
報道時に『果敢に戦う戦士たちの勇姿』とすり替えられて

後に残る廃墟は、再建の利権に群がるヤツラの格好のエサ。

貪り食うのを高みから見て、群がる者たちから莫大にせしめる権力者たちがいる。

『共存共栄』悪いヤツラほど、この言葉を言いように使う。

本当の意味もしらないくせに。

檸檬「酷い‥伝助くんやピーノくんたちは必死にみんなのために戦っているのに‥

私たちも、ものすごく怖い目に遭って、それでも戦っているのは‥

人を守りたいからなのに、なんでその人たちはこんなにわかってくれないのよ。

なんで、酷い事ばかり‥」

仲間に食べてもらおうと運んでいた食材を盗った人間。

自分が撃たれて傷ついたのに、なにもわかってくれなかった人間。

自分に銃を向けて、発砲した人間。

そして今、目の前で自分たちを『殺せ』と囃し立てる人間。

檸檬は、戦う意味を見失ってしまう。

手をつなぎ、前へと進んでいたが

その喧噪で、その臭く汚れきった霧で、濁った『社会』という迷宮で

ともに歩いていたはずの『戦う意味』とはぐれ、見失ってしまった。

檸檬「私‥紅ちゃん‥蒼唯ちゃん‥」

めまいがして、檸檬はフラフラと小路に入って座り込んだ。


都内・病院

『あのっ!!!』大声を出して、玄関に立っていたのは

汗だくの翠季。

背中に遥希をおぶっていた。

翠季「こ、この人が、私とぶつかって倒れたままなのでっ」

息を切らしながら言う翠季の、

なんとなく迫力がある告白に看護師さんたちは恐怖しつつ

ストレッチャーに遥希を乗せて、処置室へと急いだ。

オロオロとなりながら、翠季もそれについていく。


都内・廃病院

経営難で閉鎖され、廃墟と化している病院がある。

昼間でも仄暗く、かつて命を救う場所だったはずが

今では命の欠片さえ見あたらないでいた。

空間が裂け、ドサッと倒れた蝕。

ピオレータはヒョコッと跳んで、物珍しげにあたりをキョロキョロ。

そして‥飛び出た緋色は、叫びながら斬りかかる。

が、緋色に斬られるはずもなく

ヒョイっと飛び起きて避け、足払い。

尻餅をつく緋色だったが、それでも正義の刃を振り回す。

刀をゴルゴダが撥ね、腕を踏みつけ

蝕「ガキみたいに、ドタバタしないでもらえるかしら!?」

槍の柄でガスッと左頬を叩く。

緋色はなおも、暴れるのをやめない。

ピオレータ「なーに、この子?

ま、いいや‥メンドイから、ヤっちゃおうか?」

2丁拳銃を構え、引き金に指をかける。

蝕「待って。

この子は私がケリつけるわ。

で、ボウヤ‥何をそんなに駄々こねてるのかしら。

女にフラれた?

それとも、誰かに負けたのかしら‥親に叱られたってこともあるわね」

緋色「うわぁぁぁ、うわぁぁぁ」

狂ったように叫ぶ緋色の腹部を力いっぱい蹴り踏んで

蝕「ぎゃあぎゃあ喚かないでくれる、人間っ」

その痛みに咳き込み、むせかえる胃液を口から吐き出す緋色。
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