彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル6・7
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伽黒宅

団地の周辺に集まる国守軍の車両。

銃を手にして兵士たちが、一斉に囲む2号棟に

墨彦の両親が住む部屋があった。

『全員配置に付け‥行け!』

司令官の声がすると一斉に行動を開始する兵士たち。

階段を駆け上り、目指すは伽黒宅。

父・影太と母・千夜の身柄を拘束に来たのだったが

『両名とも、いません!』

と、ドアを蹴破って部屋へ侵入した陸守軍隊員は叫ぶ。

『なに!? 逃げられただと!』

国主軍の兵士は右往左往。

その頃‥団地前の駐車場。

桐花「ご苦労様」

国守軍の動きを見て笑っていたのは桐花。

乗る自動車の後部座席には影太と千夜がいる。

影太「これはいったい‥」

千夜は事態にただ、怯えている。

桐花「実は息子さんが‥墨彦くん、彼が少しトラブルに巻き込まれまして」

桐花は車を出し、走らせながら影太に説明した。

桐花「それで、ひとまずご両親の身柄を安全な場所にお連れしようと‥」

影太「墨彦は無事ですか?」

桐花「ええ、もちろん」

フゥっと一息ついてから

影太「あの子は、墨彦はちゃんと信念があります。

だから、むやみに誰かを傷つけはしない」

桐花「ええ‥立派な息子さんだと、理解しています。

家族の絆は、けっして血のつながりなんかではない。

いかに時間や感情を共有してきたか、過ごした日々はウソをつかないと言うことも
私はしっかり理解しているつもりです」

影太「なっ?‥‥‥」

影太その瞬間、この女性が信頼に値する人物がどうかを悟り

且つ、油断ならない力を持った者‥そしてその瞳の奥に、深い傷も感じた。

桐花「あら? お察しの通り‥私、あまりいい時間の過ごし方をしてこなかった女ですから」

優しく微笑んで、桐花は車を走らせた。


都内・映画館

爆発する建物。

ちょうどトルーパーズが、伝助式がっちり守りますんにゃわセキュリティーシステムを
取り外して、保護ケースに収めて引き揚げようとしていた時だった。

建物の内部から爆発が起こり、負傷者が大多数。

それでも‥小型のフォロー回路を別の個所に取り付けていた伝助は、
さすがと言ったところ。

そのおかげで死亡者や重症者は出ていない。

だが、突然の凶行にパニックとなる映画館。

トルーパーズも数名負傷して、万が一のために待機していた消防や警察、救急隊に
負傷者は全員、救護された。


走る付喪ライド01に連絡。

伝助「また爆発‥ほんまけっ!」

連絡は缶吉からだった。


伝ラボ

缶吉はキーボートを叩いて作業しながら、伝助たちへ連絡をしている。

その後ろでは

餡子「わだす、ちょっくら行って来るべさっ」

君兵衛「どこにじゃ!?」

餡子「怪我しとる人たちさの とごだ!」

君兵衛「けんど、そがいな目立つとこに行っちょったら
アイツらが来よるがぜよ」

餡子「アイツら‥SSDだか!

そげなこと心配しとったら、だぁれも助けられねぇだよ」

珍平「じゃっどん、おまえだけじゃ なんもできは しもはんど」

餡子「あんちゃんっ」

君兵衛「ちゃっちゃっちゃっ、しょうがないのぅ」

言いつつ君兵衛は、メンテが終わったばかりの大剣・播磨屋橋を
愛・伝えまフォン-黄緑に納めた。

君兵衛「兄さん、俺もちょっくら行ってきます」

餡子「一緒に来てくれるだか」

君兵衛「俺の恋女房じゃき」

餡子「君兵衛♪」

抱きつく餡子。

珍平「よか亭主ば持ったたい、餡子」

ニコニコ顔の珍平に

君兵衛「それじゃあ ちぃっと行ってきます」

餡子と2人、付喪ライド格納庫へ向かおうとするが

珍平「待たんね、オイも行くたい」

君兵衛「けんど兄さん」

ごん「ぶっひぶひぶひ」

ねん「うんももうんも」

餡子「ごさんさん、ねんさん、おまさんたちも来てくれるだか♪」

ごん「ぶひひ」

ねん「うもも」

そう力強く言い、餡子に手を振って食堂へ向かう2人。

餡子「メシ休憩さ行ぐなら行ぐで、

なして ややっこしいマネさ、すんのかあぁぁぁーーー」

食道へ入りかけた、ごん$ねんに餡子はドロップキック!!!

ゴロゴロ転がりつつ、ごん&ねんは大爆笑。

とは言いながら、2人も しっかり付喪ライドを用意。

餡子「あら? ホントに来てくれるんだね」

大爆笑しながら2人は頷く。

珍平「そいなら そいで、真面目に言やぁよかたい。

そしたら、ええ男じゃっち 言われるじゃぞ」

君兵衛「まったくですのぅ」

それはそれで、気恥ずかしい ごん&ねんだった。

餡子「そいじゃ缶吉さん、バックアップはヨロシクだな!」

缶吉「ほいよ、任せとけ!」

珍平、君兵衛、餡子、ごん、ねん。

5人はそれぞれの付喪ライドで、傷ついた者たちの救護へと出動した。

缶吉「さて‥ちぃっと寂しいけどもじゃ‥ワシに出来ることをせんとイカンの」

キーボードを高速打ち。

珍平たちへ的確に、傷ついた人たちの搬送先を知らせはじめる。


伝助「ほぅか‥珍平たちは怪我人の救出に出てくれたか。

わかった! そっちのバックアップ、頼んどくな」

『おぅ。伝助さんたちのバックアップも任せときやっ』

力強い缶吉の言葉に礼を言い、通信を切る。

伝助の付喪ライド01と並走する、蒼唯のセクゾースト。

伝助「蒼唯、ホイピエロイドは無差別に爆破しよるかも知れん」

蒼唯「無差別に‥」

伝助「なんの重要拠点でない映画館を爆破して
次はドコを襲うつもりや」

蒼唯「だとしたら次は‥映画館よりも人が大勢集まる場所かも知れない」

伝助「映画館で爆発‥ほしたら、次に狙うんは‥」

蒼唯「私がもし爆破魔だったとしたら、次に狙うのは病院だ」

伝助「病院やって!?」

蒼唯「ああ。

爆破によって負傷した人間たちが運ばれるところ‥私なら、そこに仕掛ける。

爆破で追い詰め、一カ所に大勢集まったところを」

伝助「いっきにドカン‥か。

えげつない手ぇやな」

蒼唯「そう言うことを叩きこまれてきたからな、私も菫‥オバケも」

伝助「ほぅか‥よっしゃ、そしたら病院を中心に捜そか」

伝助は缶吉に連絡‥珍平たちが向かった、怪我人が大多数集まる病院の場所を聞く。

伝助「蒼唯、ここは」

蒼唯「翠季がいる場所か」

缶吉からの連絡を聞き、伝助と蒼唯は

アクセル全開にして病院へと進んでいった。


病院

翠季と正徳は話していた。

墨彦は今、戦闘中‥

仲間たちが戦う中、爆破犯とホイピエロイドが関係しているのではと感じた翠季は
正徳に、遥希についてより詳しく教えてほしいと願い

話しを聞いているところ。

翠季「そうなんですか‥。

私がハートフィールド見た、あの光景の意味がわかった気がします。

あの映像は‥過去は、遥希という人の心に大きく傷を与え」

正徳「その傷が基で心を失くした。

いや、壊れてしまったと言うべきか。

だが、アイツの過去には同情するが

だからといって罪を犯していいということにはならない。

同じような過去を持つ者、より過酷な過去を背負わされた者もいるだろう。

その者たちが全員、犯罪者になっているかといえば
けっしてそうじゃない。

人から頼られる者、ささやかに生きているものは多いはずだ。

アイツはその努力と機会を投げ捨てて、罪を犯す者へとなってしまった。

その責任は私たちにもあるが」

最初の犯行‥実の親を手にかけた、その時に罪を暴けなかったこと‥

そして、虐待を受けていた彼を救えなかったことが悔やまれる。

正徳「いつもそうだ‥本当の苦しさに目を向けようとしないから

遥希のように心が壊れる者を出してしまい

それによって傷つく者たちが出てしまう。

手を少しでも伸ばせば、差し伸べれば、心を壊される者は減ると言うのに‥

本気で手を差出し、傷つくことを恐れないで向き合ったなら
救えるものは多くなると言うのに、そうできない者が多すぎる。

たとえ恐れてしまっても、恐れては迫害しようとしたり

受け入れられないと拒絶するのはよしたほうがいい。

いろんな価値観で世界は支えあってそして、その中で真面目に生きていくのが人だ。

だから世界は楽しい。

だから世界は美しい。

なのに、恐れては縮こまって誰かを傷つける人間が幅を利かせすぎている。

まして、手を差し出すべき職に就き、役目を担える立場にありながら
その責任に背く奴らが多すぎる!」

怒りは自身にも向けられている。

そして、絶えず後手に回り続ける行政や政治にも激しく怒る。

正徳「時代のせいにばかりしたくない。

もちろん、社会のせいにも。

だが、社会も時代も、もう少し考えるべきだ‥

君たちは本当に、この今に蔓延る悪意と戦うのか?」

翠季「セイオウジャ‥先輩方がそうしたように。

それに、それは私たちの想いでもありますから。

心の戦い、戦い抜いて見せます。

決着がちゃんとつくかどうかはわかりませんけど‥

でも私たちが本気で戦ったのなら、きっと立ち上がる人はいてくれる。

心と心は繋がるんです。

手と手が繋がるよりももっと早く、もっと簡単に。

繋がる心が、手と手とをつなげるんです。

私、最近そう思えるようになりました」
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