彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル6・8
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正徳「それでパンダくん」

伝助「伝助でおますっ」

正徳「伝助くん‥ホイピエロイドという怪物に、人の心は変態すると聞いた」

伝助「そうどす‥人は皆、ヘンタイどす」

正徳「いや、そういう意味じゃなくて。

君たちが心の世界で戦っている‥いわば心の戦いを続けていると。

なら‥今、暴れている怪物の心を救ってはくれないか?

倒すという言葉に置き換えてもいい‥

これ以上アイツの心が壊れるようなマネを、アイツ自身にさせないでやってほしい」

伝助「ココに寝てはる人が、ホイピエロイドの心の主で‥助けてやりたいんでんな。

わかりました‥心配いりまへんよ。

心を救う‥それが僕らの役目やったり、願いでもありまんので」

正徳「心の戦いだね。

キミたちなら、ヤツの心を救えるだろう」

伝助「そんためやったら、どんなでも気張ってみせます。

せいいっぱい、それぞれの出来る力をだしおうて」

正徳「頼む‥アイツを救ってやってくれ。

私では到底かなわない相手になってしまったようだ‥」

自分には、この今を抑える術も力もない。

正徳は自身の無力を突き付けられたようで

『もう、私も引き際だな』と強く思った。

伝助「おっちゃん。

人は終わりと思ぉた時が終わりでっせ。

その身体が動くまでは、その心が叫ぶ間は
力いっぱい、もがきなはれ」

正徳「伝助くん」

正徳の心の声は、伝助に伝わっている?

正徳「いや‥君ならなにをしても不思議じゃないな」

伝助「動く・喋る・カッコええの、ウルトラDXなパンダのぬいぐるみでっさかい。

それにしても おっちゃん。

いぶし銀のナイスミドルなポーカーフェイスやって思ぉたら

けっこう気持ちを顔に出しはる人ですがな♪

なぁ、おっちゃん‥ホンマでっせ、終わりと幕を降ろすんも
まだまだと気張ってアンコールに応えますんも

おっちゃん次第やと思います。

ほんで、ボロボロになるまで続けるも、ここやと思えるところで身ぃ退くんも

おっちゃんの心で決めたらええんとちゃいますか?

僕は、おっちゃんの思いが納得するまで、暴れ続けるんもええと思いますよ」

正徳「私の想いが納得して、心が決めるまで‥暴れるね‥」

この子はきっと、今までたくさん暴れて

きっとこれからも暴れ続けるんだろうな‥

叫ぶ、暴れる、戦う。

世の中にあふれる理不尽、無理解、悪意。

それらがいつの日か、この世界から消えるまで‥。

正徳「暴れっぷり、見せてもらうよ」

伝助「まかしといておくれやす♪」

正徳にピースサインでニッコリと‥

伝助「ここから‥」

『ハイ』の意味でウインクを見せる。

すると正徳は気づいて

正徳「いつものように幕が開き」

名曲を歌うと、伝助は付喪ライドに乗って発進した。

『う‥うぅぅ‥』

伝助を見送る正徳の後ろで、意識を取り戻した屋鋪が立ち上がる。

伝助キックを喰らった衝撃で、拳銃は遠くに吹き飛ばされていた。

慌てて銃を拾いに行く。

そんな屋鋪の襟首を捕まえる正徳。

正徳「いい加減にしておけ。

これ以上見苦しく動いても、
きさまのような大根役者には、このステージは場違いなだけだ。

お前の出番はもう終わった」

襟首を掴んだ状態で、正徳は背負い投げ。

廊下で顔面も腹部も痛打した屋敷の手首に、正徳の手錠がかけられた。

正徳「屋鋪 孝臣、殺人未遂及び連続爆破事件教唆の容疑で逮捕する。

あとは署で、ジックリ吐いてもらうぞ」

もう逃げられない‥そう感じたとき、その手で犯した罪の重さが
いっきに重くのしかかるような感覚を、屋鋪は感じた。

膝が嘲笑い、脚が震えて立てない。

正徳「とっとと立て、屋鋪!」

厳しい声。

正徳「よぅく覚えておくがいい‥それが罪の重さだ。

オマエが犯してきた罪は、お前自身を決して許しはしない。

たとえ周囲が許しても、世間が許しても

どんなにオマエが嘘で塗り固めても、いちばんオマエのそばにいるお前自身が
オマエを許さない。

悔い、詫び、それでも許されない罪をお前は犯した。

今からどんな裁きを受けるのかは、判事や弁護士に聞け。

私から言えることは‥オマエの心がオマエを許さないだろう。

どんな悪党でも、どんな鬼畜でも
胸の中に心がある限り、誤魔化してみても自身の心は許してくれない。

その重さに苦しみ、もがき、果ては今のオマエのように醜い顔になって
自分自身を破滅へと追いやる。

チャンスはあっただろう‥罪を悔い、裁かれ、許しを乞う機会はあったはずだ。

だが、オマエは逃げた!

だからこそのこの結果だ。

罪を犯した者は生き続ける限り、罪によって傷ついた心の痛みに耐えていくしかないんだ。

それが罪を犯すと言うことだ。

もしも周囲の人たちに許されたとしても、お前の心の片隅で、罪を犯した傷は残る。

傷はうずく‥その痛みに耐えて、それでも更生する人間はいる。

わかるか? 心があるから、その心に傷があるから人は更生する。

痛みを知ったからこそ、人は生きることに真摯になり
罪を2度と犯すまいと心に誓う。

それを更生せず、世をすね、ふたたび、いや何度も罪を犯すヤツは
心の傷に酒をぶっかけて麻痺させ、見ないふりをしているだけの大バカ者だ!

心が膿んで、死んじまうぞ!

いいか、屋鋪‥お前は、自分が自分という人間から逃げ続けているだけの卑怯者だ!」

屋鋪はただ、ガックリとうなだれた。

正徳「立て、屋鋪」

足元がふらつく屋敷を強引に立たせ、正徳は連行する。

『遥希‥お前も逃げるな‥逃げることなく、闘士たちにぶつかっていけ。

そして、お前の心の傷と向き合え』

正徳は後をセクトウジャたちに託す。

屋鋪へ正徳が発した言葉を、今まさにあらわしているのがジャシンとインガだろう。

かつてはこの、人間世界を滅ぼそうとした者たちである。

戦いの中で気づき、諭され、そして赦された者たち。

だが、そうであってもジャシンやインガの心から
罪を犯した意識は消えない。

罪をあがなうべく、2人は武器を取って守るために戦っている。

その戦いすら、罪となることを承知しながら。

戦いの中で見せる生きざまで、これからの生き方で
2人は罪を償っていく。

それは、いまだ封印されている勇護、侠真、凛雫、真忍も同じであった。


病院外

暴れるホイピエロイド。

エンジン唸り、伝助登場!!!

付喪ライドで体当たり。

着地すると急ターン。

回転しながら、バルカン砲を撃つ。

ジャシン、インガ

ごん、ねん

珍平、餡子、君兵衛

7人は予測して物陰に‥

餡子「あんれまぁ! 2人とも、隠れるだよっ」

時すでに遅し!

『ひゃっはっは、ひゃっはっは』と焦る声を挙げつつ
檸檬と翠季は、伝助が放つ弾丸を避けた。

翠季「れ、 檸檬さん! ちゃちゃちゃ、着心をっ」

檸檬「チャチャチャがどーしたのっ!?」

君兵衛「ちゃっちゃっちゃっ、チャチャチャじゃのぅて

『ちゃちゃちゃ、着心をっ』っちゅうとるがぜよ」

檸檬「言葉の中に『ちゃ』が多すぎて、なんかワカんないよぉぉ!?」

ジャシン「着心しろと言ってるんだ!」

檸檬「は、はい!」

翠季「ふぅ」

2人はツァイフォンを耳に当て『着心!』

左手首のスロットにツァイフォンを装填!

生心力の輝きに包まれて

翠季「緑色の賢者 セージ・ヴェール」

檸檬「黄色の戦士 ウォリアー・ジョーヌ」

翠季「人の心は曼荼羅模様!」

檸檬「えっと‥あれ?」

翠季「あっ、私、このキメ台詞は桜花さんとでしたね」

檸檬「ゴ、ゴメンね、サッと出なくて‥えっと‥『想いは幾重に』だったね」

『そんなにキメ台詞が必要か!? なら私がまとめてやる!』

檸檬と翠季が振り返ると、

ハートフィールドの扉を開けて、ブルュッタを構えた腕が現れ
引き金を引く。

迫るゾンビーを蹴散らし、セクゾーストに乗った蒼唯が飛び出て

蒼唯「着心!」

檸檬「蒼唯ちゃん!」

翠季「蒼唯さんっ」

蒼唯「青色の魔法使い ウィザード・ブラウ‥翠季!」

翠季「はい!」

力を込め

翠季「人の心は曼荼羅模様!」

蒼唯「想いを彩り、掛かる愛の虹橋わ!」

スッと檸檬は息を吸って

檸檬「幾重の想い‥優しさのプリズム!」

蒼唯「心の闘士‥超心彩!」

檸檬・翠季「セクトウジャ!」

共鳴し、高まりを見せる生心力。

蒼唯「これでいいか、翠季」

翠季「はい♪」

檸檬「わざわざキメ台詞言わなくてもいいような気もするんだけど」

翠季「えー、どうしてですかぁ。

だってこう、気合がビシッと入るじゃないですか」

蒼唯「そういうものか? まぁいい、急がなければまずいことになる。

急ぐぞ!」

檸檬「うん!」

翠季「はい!」

青、黄、緑の色に輝く3人の心の闘士は、それぞれの武器を手に駆ける。

蒼唯は襲いかかるゾンビーたちを、軽やかなジャンプから3連撃のキックで撃破し
着地と同時に2回の前転。

態勢をすぐに整えて

蒼唯「マアァ・アズラク」

青い輝きの水魔法を撃つ。

翠季は長剣・グリンザを大きく振り回して

翠季「リヤーフ・アフダル」

風魔法を纏った長剣は、まるで翔けぬける突風のように
多くのゾンビーを薙ぎ倒した。

檸檬「どすこーーーい!!!」

羞恥心は吹っ切って、力強く打ち下ろす長柄の戦斧・イエックス。

ひと振りでゾンビー10数体が消し飛んだ。

翠季「檸檬さん、スゴーイ♪」

檸檬「え? そ、そーお」

と、メットの中で照れ笑い。

翠季は駆けより、

翠季「すっごく強いじゃないですかぁ、カッコよかったっ」

なんて、檸檬と手を握り合ってキャッキャッ、キャッキャッ。

いわゆる年頃の娘さんが、友達となり学校なり職場などで
ワイワイ・キャッキャッと騒ぐ、あの図である。

パスっバスっ、バスバスバスバスバスバスバス!

ヒツジを追いたてて小屋へ入れる羊飼いのバイト中のカウボーイのように

蒼唯は左手で構えるジュウザーで、檸檬と翠季の足もとを撃つ!

蒼唯「チンタラしてるヒマはない!!!」

檸檬「は、はぁぁぁい!」

翠季「ごめんなさーーーい!」

戦士と賢者は慌てて戦いへ。

蒼唯「ったく、リーダーの紅がアレだから

アイツらもああなるんだ」

口では怒っているが、どこかで楽しんでいる自分がいる。

それをまだ、蒼唯自身が知らないでいた。
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