彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル6・9
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ハートフィールド

倒れているズオンソー‥扉が閉まる瞬間、迫る虎仮面の氷と

ひょっとこの炎からシアンをかばい、傷を負った。

シアンはまだ、もうろうとした意識。

2人に迫る炎と氷‥戦った相手の『ひょっとこ』と『虎』

どこかであったことがある。

とても懐かしい匂いがした‥魚や肉、味噌や醤油‥

それに心地よい、心のそよ風。

『はぁい、持ってきな』と美しい女が言う。

『明日も作っておいとくからな』と、優しげな男が笑う。

『にゃあ』と答える‥これは‥私?

あの兎の姿もある‥見るたびに、胸が苦しくなる兎の顔と‥猫もいる。

あの猫だ‥とても強く、とても優しいあの猫。

さっきの声はあの猫のか? それとも‥?

あっ‥なんだろう‥あったかい‥

『まりんちゃん、私と一緒に空き地に行こうか♪』

この声は? この少女の声は?

『だな、いっしょに行ってこいよ、心』

心? 心とは‥

『シアン‥シアン‥シアン!』

ハッと目が覚めた。

シアン「うぅぅ‥私たちは‥」

ズオンソー「無事のようだ‥アイツの攻撃‥ただ者じゃない」

もしかしたら、精霊界を封じたときに戦った
セイオウジャなのか? いや、アイツたちはここまで強くなかった‥しかし‥。

様々な考えが頭をめぐるが『うっ』背中の傷が痛む。

シアン「ズオンソー!」

傷に気付いて、慌てる。

ズオンソー「大丈夫だ‥なんてことはない」

シアン「でも‥酷い傷‥」

傷口をシアンは舐める。

その唇の温かさ、舌のザラリとした愛撫のように感覚‥

ズオンソー

心に初めて『愛』に似た感情が湧き上がった。


病院

蒼唯がブルュッタを撃つ!

墨彦のパンチとキックのコンビネーション!

魔罪・デスクリミナルは攻撃を受け『ギルルルル』と、苦しく吠えた。

翠季はグリンザから、雪永はホワイスから風魔法を放って

ホイピエロイドの動きを止めると

桜花がピュートで足を絡め取り

桜花「コッコデショ!」

『くんち』という、地元・長崎の秋の大祭の演目の一つ『コッコデショ』の
掛け声で引き倒した。 

檸檬「どぉりゃあぁぁ!」

イエックスで魔罪・デスクリミナルのボディーを叩き斬る。

桜花「やったんかな!?」

倒れたホイピエロイドは、口から爆薬粘液を勢いよく吐き

辺りに降り注いで大爆発!

桜花「ダメばぁぁぁい!」

爆発に巻き込まれて‥

雪永「桜花さん!」

蒼唯「ピンク!」

翠季「桜花姐さん!」

檸檬「桜花さん!」

墨彦「桜花おばちゃん!」

炎の中から、ケンタウロスの矢がなぜか、墨彦めがけて連射。

墨彦「うわっ、うわっ、うわぁぁぁ!」

とっさに召喚した風属性の幻獣『疾風の射手・ケンタウロス』の背中に乗った

桜花が鼻息も荒く飛び出て来た。

桜花「墨彦ぉぉぉ!」

墨彦「す、すみません、姐さん!」

桜花の背後に魔罪・デスクリミナルの姿が迫る。

瞬時に蒼唯は射撃。

怯むホイピエロイドへ、墨彦の飛び膝蹴りが決まった!

桜花「ありがとね、蒼唯ちゃん!」

振り向きざまに、ケンタウロスは矢を射る。

背中から飛び降り、鞭を振るってさらに攻撃。

墨彦「俺に礼は?」

桜花「さっきの帳消しにするから、言わんよー」

墨彦「ちぇっ」

言って、武闘家はホイピエロイドと戦う。

蒼唯、檸檬、翠季も加わり

雪永「怪我とかないですか、桜花さん!」

桜花「うん、ぜんぜん なかと。

伝助くんが作った新しいマモーブ、よぅ出来とるねぇ♪」

だてに品質保障の肉球マークは付いていない‥ね、伝助。

伝助「フフン♪」

ドヤ顔の伝助越しに、激化するセクトウジャとホイピエロイドの戦いが見えた。

総右衛門「若っ、このままでは被害が出てしまいかねませんぞっ」

伝助「ほやな‥こーなったら、ハートフィールドに引きずりこむんやっ」

ピーノ「なんかそう言うと、ピーノたちが悪者しゃんっぽく聞こえまゅ」

伝助「男は細かいことは気にせんでええ!」

源左衛門「墨彦、雪永!」

愛・伝えまフォン-青を手にし、ハートフィールドの扉を開いた源左衛門。

雪永「たあぁぁ!」

十字槍・ホワイスでホイピエロイドを押し

墨彦もまた、キックの連打で押してゆく。

足を踏ん張り、跳ね返そうとしたデスクリミナルだったが

蒼唯「インフィガール・アフマル!」

爆発呪文を撃って、扉の中へと押し入れた。

桜花「行くばい、翠季ちゃん!」

翠季「はい!」

ケンタウロスを帰し、翠季とともに扉を抜けた。

続いて雪永、墨彦。

蒼唯「伝助、ここはまかせた!」

伝助「ほいな!」

蒼唯もハートフィールドへ突入!

インガ「残るはゾンビーどもだね!」

バイオンと戦うインガは、鎖鉄球を華麗に操り

巨兵の動きを翻弄する。

そこをジャシンの大鎌が一閃!

インガ「落花流水、行雲流水‥水の行きつく先は母なる海さ。

その心、もう1度しっかり母なる海の涙で洗ってきな」

塵と化すバイオン。

インガ「ふぅ、疲れた」

あと少し‥力を取り戻すにはもう少しかかる。

ジャシンの胸に背中を預けるインガ。

しっかりと受け止め、優しく抱くジャシン。

ジャシン「クク、あとは伝助たちに任せて‥帰るぞ、インガ」

インガ「えぇ‥ミライが待ってるわ」

2人は愛しい我が子のことを思いながら、戦場を後にした。

伝助「ルナぁぁぁ♪」

メアリー「なにこんな時に発情してんだいっっっ」

伝助の頭をペシッとはたく、メアリーの肉球。

伝助「せ、せやかて あないにイチャイチャされたら辛抱できまへんがなっ」

どうやら、ジャシンとインガのアダルティーな雰囲気に触発された様子。

ルナ「もぉ、伝助さんったらぁ♪」

メアリー「アンタまでそんなことっ」

こと、伝助のことについてはノリのいい天使だった。

伝助「まぁ、話は変わりまっけどな」

と、急に真剣な表情。

メアリー「コロコロコロコロ、よく変われるもんだねぇ」

伝助「猫の目ぇほどコロコロ変わりまへんけどな」

メアリー「ああそうかい」

伝助「なんで‥ホイピエロイドは病院に戻ったんやろう?」

ルナ「確か‥私が通信で聞いたのは、蒼唯さんが予測したと」

伝助「そやねん。

僕が蒼唯に聞いてみたら、そう答えたんやけどな」

メアリー「気になることがあんのかい?」

伝助「窮屈な身体っちゅーもんを抜けたホイピエロイドがや、

なんでまたわざわざ、身体がある病院に来なアカンのやろか?」

ルナ「なにか訳でもあると‥思うんですね」

伝助「まぁな」

メアリー「ちっ、またゾンビーがバイオンになりやがった。

伝助、小難しいことはアンタに任せるよ。

あたしゃ、アイツらのお守りをしてくるよ」

そういうと、バイオンに追いかけられている

ピーノとずずの手助けに、メアリーは向かった。

ルナ「伝助さん」

伝助「なんや、ムカムカする」

ルナ「悪い物でも食べました?」

伝助「そうそうそうそう、あんな、昨日キッチン棚に置いてあった

ヨーグルトシューを食べたんやけど、よぉ考えたらアレ、ヨーグルト味とちゃうわぁ。

イタんでた(腐ってた) だけやったぁ‥って、なんでやねんっ」

ルナは伝助のノリツッコミに大ウケ。

伝助「いやいや、ちゃうねん。

ムカムカとちゃうわ、ムズムズすんねん」

ルナ「ダニですか?」

伝助「そうそうそう、最近ジメジメしとったさかい

身体にダニさんが繁殖しはってぇ‥って、ちゃう!!!」

爆ウケの天使。

伝助「ぬいぐるみによくある風景とちゃうねん。

っていうかルナちゃん、真面目に聞いておくれやす」

ルナ「あ、はい♪」

笑い涙を拭きつつ、ようやく話を聞くルナ。

伝助「そのムズムズはきっと、イヤなことが起きるかもしれんからやと思う」

ルナ「イヤな‥それは、予感ですか」

伝助「せや。

予感でもあるし、オカンではないけれど、確信でもあんねん。

心が身体に戻りたがってる‥いったん捨てた身体やったけど

心の主の命がもう、ホンマに残りわずかで

身体を離れた心が、身体を捨てきれへんで

身体の傍に戻って来よったんやと感じるんや」

ルナ「身体を捨てきれなかった‥」

伝助「缶吉からも翠季ちゃんからも、通信で事情は聴いとる。

僕自身も、さっき病室の前に行ってきた。

治る見込みのない病気で、治療もなんも出来ひん状態やった心の主や。

心はバケモンになってたヤツが、身体を捨てて

願うとおりのバケモンになって、暴れてみたけど

自分の死期っちゅーもんを感じて、心は身体に戻りとぉなった。

それは、人間でいたかったっちゅー

心の主の想いとちゃうんやろか‥」

ルナ「それを‥蒼唯さんたちはわかってあげれるでしょうか‥」

伝助「もしも わからへんのやったら

心の闘士としてこれから先、戦ぉていかれへんやろ‥

戦う者としては有能でも、心や想いが わからへんヤツに闘士の資格はない。

せやけど僕は、きっとわかってくれると信じてる。

苦難も試練も乗り越えて、きっときっと強ぉなってくれると信じて疑わへん!」

ルナ「伝助さん‥」

不安を投げ捨てるような夫の背中を見つめ、天使は優しく微笑んだ。

伝助「で‥ルナ」

ルナ「なんです?」

伝助「僕のデスクの上に置いといた、シュークリームが8個中2個無くなってん!

墨彦か姐はんか‥アイツらこんかったか!?」

ルナ「そこは疑うんですね」

微笑みは、苦笑いにもなる。

伝助「まさか、紅ちゃん ちゃうやろなぁぁぁ!」

ルナ「いやいや」

おそらくはピーノとずず‥もしくは、ごん、ねんあたりなのだろうけど。

伝助「まぁ無くなったもんはしゃーないっ。

ルナ、さっさとゾンビー掃除して、シュークリーム買いに行くでっ」

ルナ「はい!」

2人は時に勇ましく、時に甘く、戦いの中に飛びこんでいく。
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