彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル7・6
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墜落したグリーンの機体を、さらに斧で叩きまくる檸檬。

家族を大きく傷つけた原因のSSD‥憎しみは膨らんでいる。

檸檬との戦いから一転、レッドはヴァーミリオンの前に立ちふさがっている‥

命令されたのは、5号の足止め。

だが、すぐ目の前に妹がいる。

しかも激しい攻撃を受け、本来は戦うことなどしたくない性格の妹が
鬼と自分に言い聞かせるように名乗り、戦場へ立っている。

レッド「命令が何だ、組織が何だ!」

椿「SSD‥おまえたちがぁぁ!」

手にするのは剣・アチャラナータ。

咄嗟にレッドは、自身の剣で鬼が振るう受け止める。

レッド「お前は‥」

椿「お前なんかぁぁぁ!」

レッド「違う! お前はっ」

椿「お前なんかいなくなれぇぇぇ!」

レッド「お前は俺の妹だ!!」

斬りつけ合う剣と剣。

レッド「椿、俺だ‥俺は生きてるんだ!」

と、叫ぶ。

椿「やかましい! いまさら命乞いか!? それとも何か企んでるのか‥けど、もう遅い!」

さらにヴァーミリオンは強く剣を叩きつける。

剣を避けて浴びせ蹴りのレッド。

後ろに跳んでかわして、顔面へ向けてキック!

左手でガードして、ブレードでボディーを突くレッド。

火を噴く装甲だが、鬼は気にもせずにレッドへ剣を刺しに行く。

レッドの装甲また、胸部分が火を噴いた。

アチャラナータ

SSDブレード

2振りの剣が互いを刺し貫こうと押し合うが

ピシ! 大きく亀裂が入った。

悲鳴を上げ始めたのは、ソルジャー03・レッドの装甲スーツ・SSDアーマー。

レッド「オヤジ、こんな脆い物を!」

椿「トドメだ!」

レッドはSSDアーマーのメット‥バイザーを上げた。

ヴァーミリオンの動きが止まる。

声は出ず、覗くレッドの瞳をじっと見つめる。


『おーい、椿』

手を振り、にこやかに駆けてくる兄の夕也。

父からもらったギターを練習していた椿は、夕也にアレコレ教えてもらっている。

笑顔がとても似合う、優しい兄だった。


椿「ウソだ!」

激しい動揺。

死んだと思っていた兄‥その兄の瞳が、敵のメットから垣間見える。

夕也「椿‥俺だ‥、俺は生きている」

そう言って、アーマーメットのフェイスガードを開けて椿を見た。

椿「兄さん‥」

間違いなく、兄の夕也だ。

椿「兄さん‥本当? ホントなの‥生きてるの‥生きていたの‥」

夕也「‥俺だけじゃない、父さんも‥生きている」

椿「そんな!」

あのとき、父と兄を失ったと椿は思った‥大切な家族を2人も失ったと。

そばに残ったのはイチゴだけ‥その悲しみと怒りを忘れぬように

大切な家族を奪った者たちへの憎しみを失くさないように

父の遺したシステムを使って復讐を果たそうとしていた椿。


イチゴ「ダメよツバキ‥フクシュウなんて、博士もユウヤも望んでないとオモウ」

椿「死んだ人の声が聞こえる機能でもついてるの、イチゴ!

そんなのわからないじゃない‥復讐なんか望んでない?

なんでイチゴにわかるのよ!

恨みをはらしてくれって、望んでるかも知れないじゃない‥

苦しい‥痛い‥悲しい‥悔しい‥そう言ってるかもはしれないじゃない‥

私は、アイツらを許さない! ドコのどいつかもわからないけど

私は死んでも許さない!!

大切な家族を、大切な人たちを

感嘆に私から奪ったヤツラなんか‥この私の手で!」


椿の悲痛な叫びに、イチゴの回路は揺れ動き‥やがて


イチゴ「ハカセと夕也を奪ったのはおそらく‥『blood-shadow』‥

国家守備隊の極秘特務班ヨ。

国にとってキョウイやユウガイになる人物を

抹消、マッサツするアンサツ集団‥

詳しいジョウホウは無いカラ、オクソクにしかスギナイんダケド

博士のカイハツした特殊戦闘システム『justice(ジャスティス)』が

なにかしら関係しているとはダンゲンできる。

Justiceは成長するシステム‥液体金属『ジャスティリアル』をツカって

戦闘状況にオウジタ装備を生成・射出するワ

戦うたびに、戦闘のケイケンを積めばツムほどに
ツヨク成長していくシステムなのよ。

『justice』の制御・管理は‥ワタシの体内に隠されていマス。

博士はより、アンゼンなバショに隠すことをカンガエて

ケッカ、ワタシの体内に隠すコトで

ダレからの目も、アザムケルと‥そうイイました。

私の中のプログラムでしかJusticeの制御ト管理はデキません。

椿‥アナタが戦うとイウのなら、ワタシは私の出来ることスベテをスルわ。

アナタのナミダが、ソレで癒されるナラ‥」


特殊戦闘システム『justice(ジャスティス)』により

椿のために作られたのが

『ヴァーミリオン』となるための装備の数々‥

それが『明王システム』


Mahāmāyūrī (マハーマーユーリー)

明王システムを装備するためのペンダント型の転送装置。

Ragaraja (ラーガ・ラージャ)
ジャスティリアルで生成された、一定の自己修復が可能の戦闘強化装甲服。

acala naatha (アチャラナータ)
切れ味鋭い剣。

Trailokya vijaya (トライローキャヴィジャヤ)
単射/連射に切り替え可能の大型銃。

Amrita kundalin (アムリタクンダリン)
電磁ビュートで、体内のエネルギーを破壊波として放出したり
相手のパワーを吸い取って自身のエネルギーへ変換も出来る。

yamaantaka (ヤマーンタカ)
2本1組の電磁スティック。
磁力によって上下合体し、1本のロッドにもなる。

vajrayakṣa (ヴァジュラヤクシャ)
2門の砲身=レールから、球体化した液体金属・ジャスティリアルを撃つ
最大武装の電磁加速砲(でんじかそくほう)・レールガン-ユニット。

Ucchuṣma (ウスサマー)
戦闘バイク。

これらの武装は非常に強力だった‥強力な武装は、素人では扱えない。

『Justice』により、誰でも扱えるスーパーウェポンを作られたとしても

復讐の相手は国の汚れ仕事を引き受ける暗殺集団だ。

戦うことなんて思ってみなかった椿が、強力な武装をもってしても

勝てる見込みはそう多くはなかった。

だから椿は、復讐を果たすために己を鍛え

心を鬼にすることで‥父が遺したJusticeで『鬼』に近づいても

それでよしと鍛え続けた。


椿「じゃあ‥私がしてきたことっていったいなによ‥なんなのよ‥」

夕也「俺は今、SSDソルジャー03・レッドとして、この国を守っている。

父さんは生きて今はSSDのメカニックを担当している。

俺が着ているこのアーマーも、このブレードも

父さんが作った物だ‥そして椿、お前が身に着けている物も

父さんが作った物だ。

父さんの最高傑作‥

それひとつで、国の勢力を大きく変える最強兵器justice‥

椿、それを俺に渡してくれ。

Justiceで俺は、この国を守り抜く!」

ヨロヨロと、ヴァーミリオンはあとずさる。

夕也「お前はもう、戦わなくてもいいんだ。

戦うことなんておまえには似合わない。

ギターを弾き、歴史を学び、笑っているお前に戻ればいいんだ。

俺がその笑顔を守る!

この国は今に世界を収めるほどの力を持つだろう。

結果、それが世界の平和の安定につながるんだ。

そのために俺が‥俺がjusticeを振う!

俺がjusticeを使い、平和を築く戦士になる。

父さんもお前も、血に汚れた戦場から解放してやりたいんだよ、俺は」

椿は頭が内側から無数の剣で突き上げられる感覚に陥る。

景色が回るのを椿は見ているが、自身ではどうしようもなく

兄の声と父の声、2人の姿が交互に浮かんでは消え

鬼となるために鍛えていた日々の汗と涙が痛みを伴って蒸発していくのを

椿は遠くなっていく意識の中で見つめていた。

キュン!

ヴァーミリオンのボディーに命中して炸裂したのは、SSDマシンのミサイル。

炎と煙が辺りを包み、椿の姿は‥‥

夕也「椿!」

思いもかけぬ攻撃。

ミサイルを撃ったのはブラック機だった。

夕也「た、隊長‥なんてことしてくれたんだ!!」

激しく怒り、夕也はSSDショットをブラック機へと向ける。

そんな夕也を襲う機銃はブラック機。

ブラック「なにを血迷ってる‥お前までそんなことでどうする」

夕也のかぶるメット内の通信機から聞こえるブラックの声。

さらにトリガーに指をかけ

ブラック「次は警告ですまさない‥確実にお前を殺す」

ブラック機の機銃は夕也を狙っている。

ブラック「もう1度言う‥お前は後方で支援と命じたはずだ。

誰が勝手に行動しろと言った」

夕也「椿は俺の妹だ! その椿を説得して何が悪い!」

ブラック「説得だけが目的か? 妹の手中にある、博士の最高傑作‥

Justiceを手に入れるために動いたんだろう」

夕也「それは‥それは父の物だからだ。

俺は妹も父も助けようと‥」

ブラック「フン、しぶといな」

その言葉に振り返ると、装甲服の装着が解けた椿がフラフラと立ち上がっていた。

着ているシャツもジーンズもボロボロで、長い黒髪は乱れ

顔は血の気が引いている。

まるで陽炎のように、椿はボンヤリと立っていた。

ブラック「未確認破壊脅威は‥その存在をすべて抹殺しなくてはならない」

それが指令の指示であり、国の方針だ」

マシンの機銃が椿を狙った。

椿「父さん‥兄さん‥イチゴ‥」

向けられた機銃の方へ、椿はおぼつかない足取りで進む。

苦しみから解放される扉のように見えるのは

鈍く、冷たく光る銃口。

ブラック「戦う目的を見失った戦士ほど、憐れなものはない」

トリガーを引くブラック。

夕也「やめろぉぉぉ!」

フェイスガードを閉めて、ソルジャー03・レッドは抵抗できない椿を守ろうとする。

レッド「椿!」

機銃を受けるレッド‥持ち堪えるSSDアーマー。

が、ガックリと力尽きて膝を着く。

メットの内部は吐血であふれていた。

レッドと椿の傍では、グリーンとピンクが狂戦士の檸檬と戦闘中。

その戦闘の衝撃で、バタっと倒れる椿の手から
檸檬のツァイフォンが転がり落ちる。

ブラック「ん? あれは‥」

カメラを操作してズーム‥モニターに映し出されるツァイフォンを見て
弟の墨彦も手にしていたのを思い浮かべる。

ブラック「5号の装備‥手に入れれば、解析出来るかも知れないな」

ツァイフォンを奪取せんと機体を着陸させて、コックピットを出るブラック。

苦しむレッドをそのままに、落ちているツァイフォンを手にした。

ブラック「力‥強き力」

いまや、未確認破壊脅威となった弟の墨彦。

その破壊脅威の力が今、手の中にある。

ブラックは身が震えんばかりの悦びを感じていた。

『俺は強くなりたい‥誰よりも、何者よりも』

ツァイフォンを手にして、SSDマシンへと戻る。

コックピットに入ったとき、墨彦と別行動をとっていた桜花、翠季が
セクゾーストで駆け付けた。

ブラック「未確認破壊脅威5号‥」

翠季「桜花さん、アレ!」

ブラックが手にしているツァイフォンを見て、翠季は驚く。

桜花「黄色‥ってことは、檸檬ちゃんの!?」

翠季「わわわわ、桜花さんっ」

悲鳴のような驚く声で、指さす方向にSSDと戦う檸檬の姿。
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