彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル7・8
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都内

走るナダゾーストに、墨彦のセクゾーストが近づく。

墨彦「檸檬ちゃん!」

檸檬「うがあぁぁぁぁ!」

喚きは『助けて』との悲鳴。

心の叫びを心で聞いて、墨彦は気合を拳に溜めた。

墨彦「止めてやる!」

拳から撃ち出す生心力は、特訓の末に編み出した『ブラックダイヤモンド』

ナダゾーストの車体を撃ち抜き、大破させる。

爆破炎上し、残骸となるナダゾースト。

宙に放り出される檸檬を墨彦はキャッチ!

着地して『檸檬ちゃんっ』と声をかけるが

狂戦士と化している檸檬には届かず、首を掴まれ投げ捨てられる。

地面に背中を強打するが、マモーブを装着している墨彦に問題はない。

すぐに跳ね起きて、檸檬を掴みにかかる。

力任せに投げようとする檸檬へ、体をかわして絞めようとするが

すぐに振りほどかれて、攻めあぐねる。

檸檬「こんな世界!」

突進する檸檬に墨彦は、仕方なく拳を当てた。

墨彦「ゴメン、檸檬ちゃんっ」

止めるべく繰り出すパンチは墨彦の叫び。

届けと懸命に打ち込むが‥。

檸檬「があぁぁぁ!」

キジンを振る。

左腕のブラックターで防いで、檸檬の肩へハイキック。

ものともせずに押し込む檸檬に、墨彦は後方へジャンプ。

距離をとって仕切り直し。

墨彦「やりにくいったらないぜ‥どうやったら元に戻れるんだ?」

狂ってしまった仲間にどう、想いを伝えればいいのだろう‥

ファイティングポーズをとったまま、どうすればいいのか迷い、焦る。

墨彦「ああもう! わかんねぇ‥どうしたら、いいんだよっ」

とにかく、街へ他へ

檸檬の敵意が向かぬよう、墨彦は攻撃し続けるしかない。

共に心のジョブを心に覚醒させた者同士‥武闘家と、今は狂っている戦士とが
力のぶつかり合い、心を強く震わせる。

墨彦「でぃやあぁぁ!」

正拳突き。

左胸に受けたパンチをものともせず

檸檬は長柄斧の柄で、墨彦のボディーを激しく突く。

『うっ』と小さく呻いて前のめりに倒れかけるが、

そのまま上半身を丸めて宙返りのような態勢からの、あびせ蹴りを撃つ武闘家。

ガードできないまま蹴りを受けて、よろめく狂戦士。

墨彦「ちぃぃ!」

走る墨彦に、檸檬は斧を振るう。

跳び避け、拳を2撃!

檸檬を相手に苦戦の墨彦‥

檸檬もまた、墨彦へ仕掛ける攻撃の手が鈍る。

『殺したい』という悪の感情と

『守りたい』という正義の感情

檸檬の中に矛盾といえる反発しあう感情が存在して、苦しめている。

苦しむ檸檬の姿を見て墨彦の胸も痛み、苦しくなる。

墨彦「このまま戦ってても、俺も檸檬ちゃんも消耗するだけだ‥なんとかなんねぇのかよ!」

このまま不毛な戦いを続けていても‥苛立ちを見せる墨彦に援軍が来る。

セクゾーストに乗る、着心してマモーブに身を包んだ桜花と翠季の姿。

翠季「墨彦さん!」

桜花「待たせてゴメン!」

墨彦「助かったぜ、俺ひとりじゃ どうにもなんねぇ!」

桜花「けど‥」

そう、墨彦に桜花と翠季が加わっても

どうすれば檸檬を元に戻せるのかは、わからないまま。

翠季「それでも、なにかを始めないと なにも始まらない!

檸檬さんを取り戻すの!

私が閉じこもっていたとき、殻を破ったばかりのとき

手を差しだしてくれた みんなのように

今度は私が手を差し出すの!

それが私に出来ることだから!!」

グリンザを手に、檸檬へ向かう。

桜花も強い心を持ち、翠季に続く。

墨彦「よっしゃあ!」

気合も新たに、檸檬を救うべく戦う。

いっせいに狂戦士へ跳びかかる武闘家、召喚士、賢者。

3人を軽々と振り払い、斧を振るう。

桜花「目ば覚まさんね、檸檬ちゃん!」

斧で叩き斬った先程のこと‥あのとき見せた迷った檸檬の心を、桜花は信じて叫ぶ。

墨彦「届けぇぇぇ!」

拳に乗せる心を撃ち込む。

翠季「檸檬さんっ、もうやめてください!」

檸檬「うがあぁぁぁ!」

猛々しく振う斧を長剣で撥ねて、翠季はソバットを繰り出す。

翠季の蹴りを片足を上げてガードし、そのまま踏みつぶそうとする。

桜花はピュートを振って檸檬の足を絡め取り、その間に翠季は後退。

鞭を強く引いて、斧で首を削ぎ落しにかかる檸檬に
墨彦は体当たり。

2人揃って倒れ込む檸檬と墨彦。

檸檬を組み伏せ、馬乗りになって

墨彦「俺だ、墨彦だ!」

必死に仲間へ呼びかける。

檸檬「イヤぁぁぁぁぁ!」

巴投げのように吹き飛ばし、斧で頭を狙う檸檬。

桜花はピュートの柄の笛を吹いて『クッワ・イステドアァ・アズハル‥

ミノタウロス!』と呼んだ。

しかし、ミノタウロスは現われない。

翠季「えっ!?」

桜花「だいじょうぶ たい!!」

振り上げる檸檬に飛びつき、戦士と互角の怪力で止めてみせる桜花。

墨彦「姐さん!?」

桜花「レベルば上がると、こういう召喚方法も出来るようになるとよっ」

召喚士は幻獣を呼び出すばかりでなく、一定のレベルに達すると

『クッワ』という呪文を召喚呪文に付け加え唱えることで

その時点のレベルで呼び出せる幻獣の能力を

召喚士は自身の能力として発揮出来るようになる。

いまは『怪力の獣人・ミノタウロス』の怪力を、自身にまとわせている状態。

桜花「檸檬ちゃん!」

力と力の対決‥こう着状態で、檸檬の動きが止まっている。

翠季「いまですよねっ」

ヤナーム・ウルジュワーン‥一定時間眠らせる魔法を
檸檬にかけようとした翠季だったが‥

強烈なエネルギー弾が翠季の背後を襲う。

吹き飛び、マモーブにヒビが入った。

墨彦「翠季ちゃん!」

桜花「翠季ちゃんっ」

注意がそれてしまい、檸檬は桜花を振りほどいてキック。

自身に回復呪文を唱え、事なきを得た翠季だが

最新の装備であるマモーブMk-2にヒビを入れるヤツとは?

形勢は一瞬にして振り出し‥いや、不利になりそうな予感を抱く。

墨彦「誰だ!?」

現れた夢魔『インキュバス』『サッキュバス』

桜花「なにもんね! アンタらはっ」

翠季「なんか‥イヤぁな感じがします‥」

マモーブにヒビを入れたあの力は、モンスタリアにもSSDにも感じたことのない
圧迫感と‥恐怖。

それを身をもって体験した翠季は、身が震える思いだった。

翠季「怖い‥こんな気持ちをずっと檸檬さんは‥」

恐怖に蝕まれながらも、これまで戦い続けていた檸檬の心のダメージを想う

しかしいま、檸檬は暴れ続けている‥

サッキュバス「アラ小娘ちゃん、まだ生きていたようね。

てっきりゾンビーに喰われたと思ってたけど‥よかった」

インキュバス「狂戦士‥コイツを使って心の闘士・彩心とやらを始末しようと思ったが

わざわざ来るまでもなかったな」

サッキュバス「ひぃふぅみぃ‥足りないねぇ?

セクトウジャは6人って聞いてたけど」

墨彦「聞いてた? じゃあオマエたちは」

インキュバス「モンスタリアの女王様と約束したのさ、セクトウジャを殺すってねぇ‥

それに、この身体もキミとも因縁浅からぬって感じで」

墨彦「なっ!?」

もちろん、墨彦に覚えなどない。

因縁浅からぬ‥身体‥『身体? 』なにもかも、わからない。

ただ、この男にどこか見覚えがあるのは確かだった。

墨彦「お前たちは誰なんだ!」

『インキュバス』『サッキュバス』そう2人組は名乗る。

サッキュバス「お前たちに協力している 精霊どもや ぬいぐるみに伝えな!

天獄から、わざわざ遊びに来てやったと」

言い終わらぬうちに、素早い動きで攻撃を仕掛ける。

墨彦は寸前でサッキュバスの手刀を避けるが

かすっただけでマモーブが軋む。

桜花「なんかよぅ 知らん ばってん!!」

ピュートを振って、襲ってくる夢魔と戦う。

インキュバス「楽に始末してやろうと思っていた物を‥

逆らえば苦しい死を迎えることになるが、いいのかい? お嬢さん」

桜花「人ば、まな板の鯉って思ぅとっとね! そげん思うんなら思ぅとけば よかたいっ。

やけど、鯉ば料理すんなら器用に料理ばせんと

跳ねて跳ねて、跳ねまくって、アンタの喉元に喰らいつくかも知れんで
覚悟して料理ばせんね!!!」

ピュートを吹いて、唱える呪文『クッワ・イステドアァ・アズハル』

桜花「サラマンダー!」

召喚したのは『火の蜥蜴・サラマンダー』の力・火炎放射。

右手でピュートを振り、左手から火炎放射。

インキュバスは矛『苦痛- pang (パン) -』で攻撃を防ぎ

サッキュバスは拳と盾の『快楽- pleasure (プレジャー) -』を叩きつけ

墨彦を圧倒する。

翠季は暴れまわる檸檬を取り押さえようと懸命に挑んでいた。

墨彦「せいっ!」

突きをものともせず、サッキュバスは墨彦を蹴り倒す。

すぐに立ち上がろうとする墨彦の顔を踏みつけ、高笑った。

インキュバスへ火を噴き、鞭を振るった桜花もまた

あっという間に肩を矛で貫かれ、力なく倒れる。

翠季「イラーグ・アズラク‥カビール・ディファー・カセィール・アブヤド!」

回復魔法を桜花へ、強化呪文を付けた防御力Up魔法を桜花と墨彦、自身へ‥

が、矛の柄で胸を突かれて押さえつけられる桜花は、身動きが取れない。

インキュバス「さて、三枚おろしにでもしようかな」

笑う夢魔たち‥檸檬に投げつけられ、翠季はビルの壁にめり込んだ。

インキュバス「セクトウジャ、どう料理してほしい?」

サッキュバス「ナマで食やあいいじゃない」

舌なめずりする夢魔たちの耳に

『料理を美味しゅうする いちばんの調味料は愛情どす!!!』と、伝助の雄叫びが聞こえ

ハートフィールドの扉を付喪ライド01が破って出てくる。

インキュバス「チッ、あの ぬいぐるみ!」

インキュバスが乗っ取った、悪徳刑事・屋鋪の身体の記憶がよみがえる。

伝助にノックアウトされた屋敷の記憶‥

インキュバス「コイツ!」

桜花を抑えていた矛を持ち替え、伝助を攻撃。

伝助「バルカン発射!」

付喪ライドは回転しながらバルカンを撃ち、インキュバスとサッキュバスを
セクトウジャたちから遠ざける。

伝助「ローリングりんぐりん撃ちぃぃぃ!」

相変わらずのネーミングセンスで、バルカンを撃ちまくる伝助だったが

インキュバスの矛の斬撃、サッキュバスの拳圧により付喪ライド01は損傷。

大きくスピンして壁に激突、停車するマシンから継・笹葉魂撃守圀景を手に飛び降り

チョット目を回しながらササニシキを撃つ!

フラフラ、ヨロヨロ、不規則に揺れるササニシキに夢魔も防ぎきれずダメージ。

インキュバス「クソっ、コイツは危険だ」

サッキュバス「コイツから消しちまったほうが、いいんじゃないの!?」

伝助「アホ抜かせ! 僕よりもごっつい剣士がセイオウジャにもセクトウジャにもおるっ。

オマエら、まだホンマの恐ろしさを知らへんのや!!!」

それはもう、悪魔よりも悪魔な笑顔を見せつけて

伝助は『ケケケケケケケっ』と笑った。

キュイン‥伝助の背後・左にハートフィールドの扉が現れ

中からズオンソーをけん引した雪永のセクゾーストが飛び出してくる。

続く総右衛門、淑、ルナ、ピーノ。

次いで右位置に、もうひとつの扉。

中から紅、蒼唯、源左衛門、メアリー、ずず。

狂戦士と化した檸檬を除くセクトウジャ、付喪堂が揃った。

伝助「こっから大逆転でおますっっっ!」

伝助の気合いに、全員の闘志が昂ぶる。

紅「檸檬ちゃん!」

蒼唯「伝助、コイツらは何者だ!?」

伝助「夢魔‥天獄から来よったヤツや! 仁たちが ゆーとったけど

ごっつ強いから気ぃつけるんやでっ」

墨彦「ああ‥それはさっきイヤっていうほどわかった」

雪永「墨彦、だいじょうぶ?」

翠季「檸檬さんをどうして止めたらいいか、わからないんです」

メアリー「なに言ってんだよ、アンタは賢者だろ?

賢者がわからないなんて弱気になるんじゃないよ」

総右衛門「知恵を絞りだすのでござりまする。

それもまた、守る戦いに不可欠なものにございまするぞっ」

翠季は身が引き締まる思いを感じる。
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