彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル8・4
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桐花「アナタは‥」

蒼唯「桐花さん、やめて! ソイツは‥」

桐花「菫ね‥知ってるわ。

伝助くんに事情は聞いたし、私自身 覚悟はしていたから。

だけどね、蒼唯。

アナタにだけ罪があるんじゃない、むしろ菫に重く責任があることなのよ。

あの日、あのとき、菫が朱紗博士を略取して他国から報酬を得て

それでアナタと逃走して、望んだ明日に未来はなかった。

よけいに、アナタを苦しめることになってしまった」

菫「酷いよ、桐花さん‥国の味方なんかして」

桐花「勘違いしないで! 私は国なんかの味方はしない。

こんな、あやふやなヤツラのチッポケなメンツのために

国民に犠牲を強いるような政治しか出来ないヤツラのいう国なんて

滅んでしまおうが関係ないわっ。

私が大切に思うのは、そこに暮らす人たちよ。

政治がどう、世界情勢がどうのなんてどうでもいい。

私は、そんなバカなヤツラの思惑のせいで犠牲になってしまう人たちのために戦っていた。

たとえ汚れ仕事だとしても、それで国民の笑顔が守れるならと

頭から血を浴びることもいとわなかった‥守りたかった笑顔の中に、蒼唯も菫もいたのよ。

私が守りたかった笑顔。

人の命を奪う仕事で、なにが笑顔だと思われるだろうけど

そんな中にいるからこそ、ささやかな笑顔を守りたいと思っていたの‥」

菫「けど私は殺された! 私が大切に想った蒼唯に殺されたっ」

桐花「そこに至った経緯を考えなさい! あなたは決定的な間違いを犯している。

もしあの時、あなたが蒼唯と組織を抜けて暮らしたいと、

逃げたいと私に言ってくれたなら、私のこの命に代えてでもアナタたち2人を逃がしたわ。

けれど、菫‥アナタは何をした?

人殺しの道具を欲しがる奴らから金をもらい、仲間を殺し博士を奪い

助けに来た蒼唯が止めるのも聞かないで

死へと走ったのはアナタ自身じゃない!

蒼唯は最後までアナタを守ろうとした。

アナタは少しでも蒼唯を守ろうとした?

自分の感情だけを押し付けたにしかすぎないわ」

菫「うるさい‥うるさい、うるさい、うるさい!!」

2丁拳銃を乱射する。

華麗に転がり、アサルトライフルを撃つ。

その威力は軽いものの、的確に菫へダメージを与える桐花。

桐花「蒼唯、あなたもしっかりしなさい!」

かつての指揮官は今も姉のように蒼唯と菫を想い、叱る。

蒼唯「桐花さん」

菫「桐花ぁぁぁ!」

襲いかかるピオレータ。

伝助印の肉球マークをプリントしている戦闘服の上に

腕・脚・胸・胴部には『伝助プレゼンツ☆謎の仮面特別遊撃隊』が装備している
簡易装甲パーツを装着している。

桐花「これで少しはまともに戦えるわ」

ピオレータの動きを読んで、翻弄する桐花は

巧みに蒼唯を助けて、さらにピオレータへ射撃。

行く手を阻まれ、激昂するピオレータだったが

蝕「なぁに勝手に遊んでるの?」

空より蝕-エクリプスが舞い降りた。

桐花「アナタは‥『太陽も月も喰らう者‥世界を闇に閉ざす者』とか言ってたわね」

蝕「あの時の女か‥お礼を言うわ、ピオレータを生むための銃を大切に持っててくれて」

桐花「桐花っていうの‥アナタ、蝕っていうんですってね。

確かに、太陽も月も喰らう者ね」

蝕「ウフフ‥これ以上邪魔をするなら、あなたも喰ってあげるわよ」

桐花「残念ね、あなたのお口に合うような安物の肉じゃないのよね」

火を噴くライフル。

蝕は弾丸を避けて、メギドを撃った。

とっさに物陰に隠れた桐花は応戦。

蒼唯も桐花について、ジュウザーを撃つ。

蝕「ピオレータ、手伝いなさいよっ」

半狂乱に陥りかけた菫だったが、蝕の声に落ち着きを取り戻し

2丁拳銃を構えて襲ってきた。

桐花「蒼唯っ」

ポケットから出したのは、淑から預かっていた回復薬。

蒼唯「気絶するタイプか? それともハイテンションになるヤツか?」

桐花「効き目は小さいけど、その代わりに副作用は無いらしいわ。

一応、作ってみたんだって」

蒼唯「なら」

ポンっと口に入れると確かに副作用は無い‥が

蒼唯「超絶に辛いのと甘いのが、交互に口の中でダンスしている‥」

妙な味はともかく、受けた傷は回復していた。

桐花「だいじょうぶね‥蒼唯、任務遂行で大切なことはなに?」

蒼唯「‥‥生きて帰る事‥‥」

柳司令は『命に代えても任務遂行が優先』と教える。

だが、指揮官の桐花は違った。

任務を遂行するためには、生き延びる力、生きて帰るということが前提の戦士でなければ
任務など遂行できないと教える。

そのために桐花は、最善策をいつも立て

蒼唯たちを率いて任務にあたっていた。

結果、桐花班の負傷者・殉職者の数は他の班よりもはるかに少ないものであった。

それでも、殉職者が出たときの桐花の悲しみようは深かった。

そんな心の疲労を癒すために、桐花は人肌のぬくもりを求めて

柳と関係を結んだのだろう。

蒼唯「生きて帰る事です」

桐花「おぼえていてくれたのね。

そうよ、まず生きて帰る事‥蒼唯、帰るわよ!」

桐花はアサルトライフルを手に突進。

器用に身体を右左‥揺らせて蝕に狙いを絞らせず、反撃の弾丸を撃つ。

蝕「ったく、どうしてこうも次々うっとしいヤツラが義弟くんの仲間になるのかしら!」

メギドからゴルゴダへ換えて、桐花に接近戦を挑んだ蝕。

短槍をライフル受けて、銃床で打撃。

胸を打たれた蝕は、負けじと短槍を振るって
柄で桐花の右肩を強烈に打った。

桐花「んっ!」

激しい痛みだったが堪え、力を込めたハイキック‥

身構える蝕だったが、力を込めたかに見えて

フェイントキックを数度見せる桐花に惑わされ、隙が出来たところへ

桐花「はぁ!」

強いキックを蝕のボディーへ叩きこむ!

蝕「くっ!」

次は蝕が痛打を堪え、短槍を突き出す。

ライフルで防いだが穂先は貫通‥

蝕「もらったわね」

桐花「どうかしら?」

左手に自動小銃・H&K USP‥通称『P8』

ドイツの銃器メーカーであるH&K社が開発した自動拳銃で

9x19mmパラベラム弾仕様がP8の名称で、ドイツ連邦軍の制式拳銃になっている。

また、多数の軍・警察・国家機関などに採用されている銃だ。

そしてここにも肉球マークシールがグリップに貼られていて強化済み。

蝕「ホント、小憎らしい」

桐花「ゴメンなさいね」

蝕の言葉に美しい笑みを送り、引き金を引く桐花。

蝕の顔面で、爆発が起きる。

ピオレータ「蝕!」

が‥

蝕「ウフフフフフ。

残念、義弟くんが全部作った銃なら危ない所だったけど

しょせんは人間の銃を強化した物。

私を獲るには力不足よ」

桐花「知ってる」

蝕「え?」

ハッとして、足元を見る蝕。

ピンを抜いたスタングレネード (閃光発音手榴弾) が転がっている。

桐花「It's Show Time」

桐花の言葉に蒼唯は反応して、ブルュッタを取り出し

蒼唯「ホグーム・デルゥ・アスワド」

攻撃を跳ね返す魔法の呪文を唱えて、桐花と自身へ放った。

ウンザリと言った表情の蝕を閃光が飲みこみ、辺りは強烈な光と音に包まれる。

桐花は はじめから、自分の装備でピオレータや蝕を
倒せるとは思っていなかった。

あくまでも、逃げ遅れた人々やSSDをけん制するために自分は動いている。

だが今は、蒼唯を救って退却することが最優先事項。

それを知っている桐花は先の先を読み、撤退する隙を作ることを考えた。

『It's Show Time』幾度もあった危機を、その言葉で救ってきた指揮官の采配を
蒼唯は今でも覚えている。

当然、菫もそれは覚えていて

とっさに防御を取って、逃げようとする蒼唯と桐花を襲おうとしたのだが

目と耳を一時的に潰された触が乱射するメギドの弾丸が、ピオレータに命中。

深いダメージと傷を負ってしまう。

その間に蒼唯はセクゾースト、桐花は車‥見事に、退却する。

菫「う、うぅぅ‥」

やっとの思いで立ち上がる。

蝕も目と耳の異常が収まりつつあるようで、2人を逃したことに腹を立てていた。

しかし‥

菫は蝕へ猛烈キック。

危うく防いで

蝕「なんのつもり!? ピオレータっ」

菫「うるさい! よくも私を撃ったわね!! 何が仲間よ、なにが力をくれるよっ。

お前も私の敵じゃない!」

蝕「ち、違う! アレは目と耳を‥」

菫「言い訳はいらないよ!」

それは泣き叫ぶ少女のような心で、

疑念というよりもストレートな悲しみ、悔しさ、怒り、戸惑い‥落胆。

ピオレータのキックを蝕は避け、反撃。

キックはボディに入り、あとずさるピオレータは

2丁拳銃の引き金を蝕に向かって引く。

菫「信じてたのに! アナタは違うと信じてたのにっ」

自身の罪は考えることなく、蒼唯の行動に受けた傷を菫は嘆き憤る。

その悔しさと蝕から受けた弾丸がシンクロして、激しく心を乱す菫だった。

蝕「いい加減にしなさいよ、お人形ちゃん。

いつまでも駄々こねてると、タダじゃ済まさないからね」

メギドを吹いて、ピオレータを苦しめるが

なお火に油を注ぐ状態となってしまい

菫「アナタも友達じゃない! ラヴソングは歌ってくれない!!」

蒼唯を恨み、蒼唯を狙い、そして思い、蒼唯の影を追い求める。

菫「うわぁぁぁ!」

両手に持つ銃を乱射。

蝕「ったく、こんな時に人格が交代しないなんて」

さしづめ『桔梗』が出て来てくれたら

冷静に話も出来るのにと、蝕は考えていた。

が、菫は暴れまわる。

銃を撃ち、当たり構わず蹴る、叩く。

気が付けば街中、辺りはボロボロで。

そして変態を解き、人間態に戻ると

『殺塵機(さつじんき)・パープル』に乗って、蝕の制止も聞かずに走り去った。

蝕「ワガママなお人形ちゃんじゃダメね‥ったく、捨てるしかないか」

その戦闘力は欲しい。

だが、こうも不安定な菫では戦力として使うこともままならない。

蝕「バベル‥せっかく出来たと思ったんだけど、上手くいかないものだわ」

『手駒』を増やして戦力を整え

付喪堂、セクトウジャ、モンスタリアに負けないような一大勢力を組織する。

そしてルナを軍門に下らせ、世界を破壊する‥そのための力を欲してはいるが

蝕「義弟くんはホントに小憎らしいわ‥私の欲しいものをいとも簡単に手に入れる」

蝕は間違っている。

伝助は『手駒』を揃えているワケではない。

それはセクトウジャも同じで、モンスタリアも同じだといえる。

大切なのは『仲間』だ。

『仲間』は、けっしてそろえるものではない。

繋がるのだ。

強く結びついた絆を育てる事しか、この戦いは勝ち残れないだろう。

蝕とSSDは、同じ過ちを犯している。

『手駒』と『仲間』は大きく違う。

様々な心が個性をぶつけ合い、互いを磨いて強くなっていく『仲間』を

いいなりにしかなれない、心を持たない『手駒』が勝利するはずはないと

蝕は見誤り、焦っていた。

足がもつれ、倒れかけるのをかろうじて踏みとどまる蝕‥

酷く咳き込む。

蝕「なんでだろう‥私の手の中にはいつも何も残らない。

奪われる、去っていく‥」

着けた仮面の下、淡く光る何かが頬を伝った。



※ここまでが前編です<(_ _)>

後編は次ページよりの再開分となります。
更新予定日は12月15日。

年末の慌ただしいさなかではありますが
ヨロシクお願いいたします_(_^_)_
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