彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル9・2
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雪永「聞いた、墨彦?」

墨彦「なにを?」

雪永「風丘グループ‥たいへんなんだって」

墨彦「ああ、それならオヤジからの電話で聞いたよ」

風丘グループは、セイオウジャの戦いの頃より霊皇や現・付喪堂を支援してれている。

だが、決して公表はしていない。

公表はしておらずとも、その活躍で大きく人々を守る手助けをしてくれているグループで
縁の下の力持ちといったところだろうか。

しかし、このところの社会の流れは
SSDはもちろん、国守軍の存在も批判する風丘グループに

『売国企業』『非国民商人』と人々は罵り、石を投げる有様だ。

一方で、兵器製造など軍需産業に喝采を贈っている。

『愛国企業』『英雄志士』と。

雪永「それでもビクともしないほどのスーパーグループだっていうけどね‥

いつまで持ち堪えられるのか、不安が無いって言えばウソになるよね」

墨彦「確かにな。

兵糧はごまんとあっても、籠城し続けて行けば確実に減っていくもんだ。

いつまで持ち堪えれんのか‥」

この戦いが長引けば長引くほど、その危険は大きくなる。

自身の苦悩よりも、まず優先せねばならないことなんだ‥

自分にイイワケしようとしている事に気が付き、墨彦はまた恥じる。


エテルネル・ドゥ・クルール

アンティークショップ『エテルネル・ドゥ・クルール』

フランス語で[永遠の色]という意味の名だ。

上品な店内には、美しい装飾品や美麗な置物家具、陶磁器、銀の食器
様々に置かれている。

紺乃 桐花がオーナー。

店内はとても落ち着いた雰囲気で、温かみがあり華やかな木目のテーブルの前に
翠季と桜花は座っていた。

カップの中にはカフェオレ。

ひと口飲んで、ホンワカ様子の翠季と

『ほうじ茶のほうが、よかったな』と内心、思っている桜花。

で、2人ともクッキーを食べている。

桐花「焼いてみたんだけど、どう?」

翠季「美味しいです♪」

桜花「ホント、すごく美味しいです」

桐花「ありがとう」

微笑がとても美しくて、こんな微笑の人が
蒼唯を凌ぐ戦闘のプロだとは到底思えないと、翠季も桜花も感じている。

桐花は店の奥から、1冊のファイルを手にして歩いてきた。

かなりの厚みがあるファイル。

桐花「翠季ちゃん、これをアナタに渡しておきたくてね」

翠季「私に‥ですか?」

何気なく、机の上に置かれたファイルを開いて中を見てみると

ビッシリの文字と、ところどころに図。

翠季「これって‥」

桐花「それが、私‥なんて言ったら、重すぎるかな。

ま、私がこれまでしてきたことのすべてよ」

潜入、侵入、強襲、逆襲‥追撃、陽動、隠密等々

桐花がこれまでに経験したもの、考えたもの

すべての戦術が収められている。

翠季「隊の陣形や配置‥防御について‥」

桜花「スゴい‥」

桐花「すごいなんてないわ。

それだけ、人を殺めたってことなのよ‥

こうしてここにいることさえ、ホントは許されない人間が私」

翠季「桐花さん‥」

桐花「それでもね、それはきっと何かの役に立つはず。

あなたがそれ読んで、これからの戦いのなにかの手助けになれたなら
少しは私の罪も償えたかな‥なぁんて、勝手に思ってみたりね」

翠季「戦術ファイル‥

でもこれなら、私に渡すよりも蒼唯さんへの方がいいんじゃないでしょうか」

桐花「自身が無い? そうね、作戦を立てるっていうことは

仲間やそれに関わる人たちの命を預かることだからね」

翠季「その‥まぁ‥‥だから」

桐花「だからなのよ」

翠季「え?」

桐花「命を捨てさせるような作戦なら、誰にだって立てれるし
そんなもの作戦でも戦術でもなんでもない。

要は命の大切さを知っているものにしか、本当の戦術は立てられないの。

私はアナタにそれを感じたのよ。

戦術を決めることの重大さを知るアナタだから、これを託したい。

蒼唯はね‥あの子は、有能で信頼できる指揮者の下で
大きく活躍できる子なの。

残念だけど、私の下じゃあの子は苦労した‥させちゃった」

菫との出来事の苦しみを、抱えたままの蒼唯を想う。

桐花「翠季さん‥アナタは賢者。

賢者なら、託せると信じたの‥だから、受け取って」

翠季はすぐに『はい』とは言えなかった。

ファイルに書かれてあることの重さを感じている。

それでも、声に出来なくても
ファイルを手にする力で翠季の決意を察した桐花は安堵した。

桐花「桜花さん、アナタにも読んでほしい。

そして、賢者をサポートしてほしい」

桜花「サポート」

桐花「召喚士‥アナタはアナタの仲間とは別に
多くの仲間を引き連れることが出来る召喚士。

賢者の力にじゅうぶん応えられる、支えもできる。

加えて桜花さん自身の決断力と行動力‥

決断力は翠季さんと互角、けど行動力は桜花さんの方が上ね。

でもそのぶん、翠季さんの慎重さが大事になってくる。

戦術を組み立てる者が優れていても、現場で戦う者だけが優れていても
結局50%の戦力のままだけど

双方が優れていると、100%にも200%にもなる。

翠季さん、桜花さん、それがアナタたちよ。

2人で200%の力が出るなら、7人が合わさったときは‥ね、これからの戦いに必要よ」

翠季「慎重さの私」

桜花「行動力の私」

桐花「お願いします‥蒼唯をこれからも仲間として温かく見守って下さい」

翠季「そんな、頭を下げないでください」

桜花「そうそう、蒼唯ちゃんは私達の大切な仲間ですから」

桐花はとても嬉しそうに笑い

桐花「ありがとう。

そうだ、カフェオレのお替りはどうかしら」

翠季「あ、私もらいまーす」

桜花「私は‥あの、ほうじ茶ってあります?」

桐花「ありますよ、淹れてきましょうね」

桜花「どうも♪」

ニコニコとクッキーを食べる桜花。

桜花「ねぇ、桐花さん」

桐花「はい」

桜花「私の名前が『桜の花』桐花さんは」

桐花「桐の花」

桜花「似てますね♪」

桐花「そうね、一文字違いね」

桜花「私、29歳で」

桐花「私は34」

桜花「じゃあ、お姉さんですね」

翠季「よかったじゃないですかぁ、桜花さんメンバーの中で年長者だから♪」

桐花「私もメンバーに入れてくれるの?」

翠季「当たり前ですよ、私たちも伝助さんたちも先輩たちも
桐花さんも‥それに織田さんと釜石さんももう仲間ですっ」

桜花「織田さんたちは、今どうしてます?」

桐花「風丘社長のところにいるわ‥社屋の奥の、秘密の部屋にね」

翠季「秘密の部屋かぁ、なんかイロイロ想像しちゃう」

アハハと3人は笑う。

桐花「そうそう‥桜花さん」

桜花「はい」

桐花「アナタ、天晴 夢子っていう演歌歌手さんなんですって?」

桜花「はい、そうなんです」

桐花「桜花‥本名のほうが綺麗なのに、どうして芸名を?

ま、芸名のほうもいい名前は名前だけど」

翠季「それはですね

『いつか天晴な世界を、私の歌で実現させたい‥それが私の夢です』

だから、天晴夢子なんですよねー」

桜花「うんうん♪」

桐花「よく知ってるのね、翠季さん」

翠季「天晴夢子の大ファンですからっ」

翠季は苦しい時を、桜花の歌に救われた過去がある。

以来、天晴夢子のファンとなった。

桐花「どんな曲があるの?」

桜花「えっとですね‥」

言っていると翠季はサッとツァイフォンをだし、なにやらササッと手を動かすと

翠季「メドレーになってますけど」

ディスプレイに文字が表示されて、さらに天晴夢子の曲が流れだす。


「人生ジェットコースター」作詞&作曲 天晴 夢子

垂直落下でドン底もぉぉぉ
次に待ってる急上昇

そん次ゃあ、回転、大回転
グルグル、グルグル、グールグル

あっちょいと

降りてぇ昇ってグールグル
昇ってぇ降りてグルングルン

あぁ‥あぁ‥人生ジェットコースター
降りたら次は昇るだけ

どっこい

顔を上げてぇぇぇ
前向いてぇぇぇ

とびっきりのリアクション!
パッと見せなきゃ、女がぁぁぁアンアン アンアン、廃るぅぅぅ


「あっぱれ! やる気音頭」作詞&作曲 天晴 夢子

あきらめんな、あきらんめな、あきらめんな!
人生、何があっても生きていけぇぇぇ

あきらめんな、あきらんめな、あきらめんな!
デッカイ世界で、生きていけぇぇぇ

悔しいこともあるだろう
悲しいこともあるだろう

苦しいこともあるんだよ
辛いこともあるからね

だけど、そこで挫けて、へたりこんで
下ばっかり見ててもしょうがない

そうそう お金は落ちてない
でも、拾ったお金は、おまわりさんに届けてね。

お願い♪

あきらめんな、あきらんめな、あきらめんな!
あきらめんのは、あきらめることだけェイェイェイェイェイ!

あきらめんな、あきらんめな、あきらめんな!

桜があんなに綺麗なのはね
来年咲くために散るからなんだよ

そうさ、生きるために散るから
あんなに綺麗なのさぁサァサァサァサァ!

あきらめんな、あきらんめな、あきらめんな!

人生、歯を食いしばって生きてれば

あきらめんな、あきらんめな、あきらめんな!

デッカイ幸せェ、ドンドン! 掴めるさぁぁぁ おぅ☆いぇい!!!


「涙海」作詞&作曲 天晴 夢子

あなた あなたを
捜して歩く

ここは小笠原諸島
明日はイースター島

恋しい愛しい
あなたはいずこ

泣いて泣き果て
涙も涸れた

流した涙が大平洋

涙海です
舐めたらチョットしょっぱい


「私が悪いの」作詞&作曲 天晴 夢子

別れた夜から三年三月
泣き濡れた瞳は
カラッカラ‥ドライアイ

なにもかも私が悪い
豆腐が柔らかいのも
郵便ポストが赤いのも

郵便っていえば
郵便番号八桁が
ぜんぜん覚えれません

あなたのメアドは暗記してるのに

サヨナラぁぁぁ
わっしょいしょい

サヨナラぁぁぁ
うっほっほい

別れた理由は、私が悪い
ホントはあなたが悪いと思ってるけれど

悲しさなんかに負けないわ
シシカバブー‥食べてぇぇ
元気ハツラツ

冷たいお水が
歯にしみるぅぅぅ


『長崎あじさい、恋占い』作詞&作曲 天晴 夢子

雨が降る降る、オランダ坂に
ポテト振る振る、味付け粉入れて

願いを込めて、ひとつまみ
長いポテトが出たら、両想い
短いポテトが出たら、片思い

あぁぁ、あぁぁ
イジワルですか

あぁぁ、あぁぁ
イジワルなのね

私のポテトは、ぜんぶ短いわ
雨の長崎、あじさい通り
バーガーショップなら、いくつもあるわ

アチコチ行ってポテトを頼みます
ポテト占いぃぃぃ

長崎あじさい、恋占いぃぃぃぃぃ

桐花「ふ、ふーん‥素敵な歌ばかりね‥」

微妙な表情。

翠季「私はセカンドシングルの『あっぱれ! やる気音頭』が大好きです♪」

こちらは瞳をキラキラ輝かせている。
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