彩心闘記セクトウジャ・3

□レベル11・3
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ハートフィールド

恐竜戦艦5隻を中心に、大きく隊列を形成する夢魔2名。

インキュバス「さぁて‥まずはあの、チョロチョロしやがる虫けらどもから掃除だ」

サッキュバス「あの男もいるのかねぇ‥楽しみだよ。

それにSSDと国守軍とか言うヤツらを始末したら

その後は彩心、そしておもちゃどもさ」

空間に大きい扉が現れ、恐竜戦艦はゆっくりと扉を潜り抜けていく。


SSDベース

ソルジャーズの新隊長、朱紗 夕也が格納庫へと走ってくる。

夕也「SSDマシンの準備はできているか!?」

『もう間もなく』

整備の人員が答えるが

夕也「遅い、もっと急げ」

事態は切迫しているよう。

先にトルーパーズの乗る『F000-X』が十数機、発進。

次いでその量産機である空守軍の『F000-XA』も30機あまりが発進し飛来する。


ミサイル発射態勢に入るF000-X全機。

空間に現れた扉の中より、グラウザウラーの主砲が次々と砲撃を開始。

『各機、撃て!』

迎撃開始。

砲撃に続いて無数の戦闘飛行車・グレイバットが飛び出てくる。


『な、なんて数だ』

ざっと見て、グレイバットは100機を超えている。

さらに後方に恐竜戦艦が5隻。

すべての砲門の照準を、SSDベースに合わせている。


司令室

夏生はモニターを観て驚愕していた。

夏生「これは‥完全に、SSDを潰しに来たのか」

圧倒的な戦力の差を思い知る夏生。

夏生「justice (ジャスティス) さえあったなら‥」

Justice‥戦闘を重ねるごとに、蓄積されるデータを基に成長する戦闘システム。

内臓する液体金属『ジャスティリアル』を使って

戦闘状況に応じた武器を生成・射出することができる。

そのシステムさえあれば、どんなに危機に瀕しようとも

必ず逆転できるものを‥夏生は歯ぎしりして、悔しさを抱える。

しかし、今の彼は‥。


『SSDマシン全機、発進準備完了です』

格納庫からの通信が入り、続けて

『出るぞ』

柳よりの通信。


夏生「確認しました、ハッチオープン」

夏生は格納庫のハッチを開ける。

次々と飛び立つ10機のSSDマシン。

新体制のソルジャーズに合わせて、整備し直したマシンと新たに製造されたマシンが

ソルジャーズに配備されている。

夏生「夕也‥」

飛び立つ機体の中のひとつに、息子がいる。

夏生の全身から、汗が吹き出すように緊張と恐怖を感じていた。


柳「各機、散開」

指示どうり、メタルグレーの機体‥8機のSSDマシンは散開して攻撃開始。

黒色の機体は、柳専用機。赤色の機体は、夕也専用機。

グラウザウラーに回り込んでミサイルを発射。

しかし対空砲で迎撃される。

夕也「ダメか」

行きつく暇もなく、夕也のマシンを襲うグラウザウラーの腕。

危うく避けて、機体のバランスを取りなおして夕也は急降下。

地上すれすれで反転して上昇すると、戦艦の底へめがけてミサイルを撃つ。

命中! 轟音とともに爆発が起きるが、恐竜戦艦はまだ沈むことはない。

柳「いい攻撃だ」

柳のマシンは、はるか上空から急降下してグラウザウラーの艦橋へ向かって

ミサイルを撃ち込む。

2機のSSDマシンが、1隻の戦艦の動きを止めているがその後ろでは‥

『うわぁぁ』『ひぃぃ』

次々と撃墜されていく空守軍の機体とトルーパーズの機体。

柳「まだだ、すぐに残りも発進させろ」

『すぐに!』

夏生の通信が入り、トルーパーズがまた次々にF000-Xで基地を飛び立つ。

柳「空守軍はなにをしている! 全機発進させてでも、ヤツらをここで叩き落とせ」

国守軍へ、空守軍へ向けて語気も強めに指示を出す。

『し、指令! 地上からも攻撃が‥ぎゃあ! 』

地上ではグリゾンビーとバイオンが基地の入口へ大挙、押し寄せていた。

柳「ほぅ、さすがは破壊神の軍勢だけはある。

いっきに決着をつける気か」

インキュバス、サッキュバスの姿を目に浮かばせて

柳は恍惚の笑みを浮かべた。

柳「新時代の扉が開く!」

加速し、柳のSSDマシンは

グラウザウラーへ一斉射撃を行った。


ベース内

大混乱の内部を、直明と茂美は進んでいる。

直明「グッドタイミングなのか、バッドタイミングなのか」

外の突然の襲撃の混乱に乗じて、思ったよりもたやすく深くまで入り込めたのはいいが‥

『誰だ!』

そこらじゅうを行き来するトルーパーズ、ひとりひとりを殴り、あるいは蹴り倒して

進まなければならないのは

直明「手間がかかって、いい加減イヤになる」

茂美「いいじゃないですか、私はグッドタイミングだと思いますよ」

直明「そりゃ、お前は何でもポジティブに考えられるから」

茂美「そんなことないですよぉ‥

いちどは深みに落ちて、壊すことしか考えられない人間になってましたから」

ジャシンに破れ、焦り、力に飲み込まれて守るのを忘れて

破壊しかしていなかった自分を振り返り。茂美は悔いている。

茂美「後悔しても、許されはしませんけどね!」

トルーパーズひとりを投げ飛ばして、失神させると物陰に潜む直明と茂美。

倒れているトルーパーズを発見し、さらにパニックになる隊員たちの陰を進み

直明と茂美は指令室を目指す。

狙うのは柳の首のみ。

直明「柳は‥この状態ならおそらく、マシンで出ているはず。

仕方がない、ならその隙に司令室を乗っ取って」

茂美「退路を断たれる恐怖を、あの人にも味わってもらいましょう」


ベース・入口

強固な扉もバイオン数体に押され、陥落寸前といったところ。

入口が壊されれば、ゾンビーもバイオンもいっきにベース内ヘ、なだれ込む。

トルーパーズは必死に銃を撃ち、侵入を何とか食い止めようとしていた。

すると、入口上空に3機のメタルグレーのSSDマシンがホバリング。

ワイヤーをするすると伝い降りて、ソルジャーズ3名がゾンビーたちと戦う。

『マシンを守ってろ!』

自動ホバリング中のマシンをグレイバットに撃墜されぬよう、

守っていろと命じるソルジャーズ。

トルーパーズはその指令に対空砲を撃ちまくって

機体にグレイバットを近づかせないよう奮闘している。

残り5機は飛び回るグレイバット掃討に、全力を傾けていた。

援護である空守軍のF000-XAが新たに30機飛来。

地上には陸守軍が大勢駆けつけ射撃を開始。

ベースを守る戦いが激しくなっていく。

振り下ろすバイオンの拳に吹き飛ばされる陸守軍兵士。

蹴り上げる足に骨を砕かれるトルーパーズ。

地上はバイオンの圧倒的な強さに援軍も、なんの役に立っていない。

グラウザウラーたちは口から火炎放射を吐く。

青白い高温の火炎は、瞬時に空守軍の機体を溶かし大爆発が次々に空を覆った。


『ダメだ‥歯が立たない』

地上で戦うトルーパーズのひとりが、思わずそう呟いた。


未確認破壊脅威による、SSDベース襲撃の報せは日本中を衝撃で揺らす。

撃墜された空守軍機体の数々‥グレイバットも撃墜されてはいるのだが

その数よりもはるかに空守軍、そしてトルーパーズの機体も多く

戦況は圧倒的にSSD・国守軍の敗色濃厚だった。

仲間たちの危機に無関心の柳は、恐竜戦艦を落とすことに固執している。

夕也「指令! このままではトルーパーズも空守軍も、

地上にいる者たちも全滅してしまいます!

撤退もしくは、一点に力を集めて‥」

柳「かまうな。

それより、お前は下部からアイツを攻撃しろ。

私は上から叩く」

柳の機体は上昇。

もう一度、有効だった攻撃法を行って戦艦を沈めるつもりだ。

夕也「指令! 指令!!‥‥このっ!!!」

指令の行動に夕也は激怒している。

以前なら、なにも感じることなくに従ったのだろう。

しかし、夕也は少しずつ変わっている‥

伝助に命を助けられてから、夕也の心は殺人マシーンとなったときよりも以前の

椿の兄・朱紗 夕也の心を取り戻し始めていた。

夕也「俺は‥いままでなにをやってたんだ‥」

夕也の機体は大きく旋回し、ベース入口を襲うバイオンたちのほうへと向かっていった。


『ダ、ダメだぁぁぁ』

ひきつる声で叫ぶトルーパーズ。

地上に降り立ち、ゾンビーを相当数撃破した3人のソルジャーズも

一斉に襲い掛かるゾンビーに瀕死の状態になり

さらにバイオンの攻撃によって戦死してしまう。

ホバリング中のマシンはいつの間にか地面に落とされていた。

3名のソルジャーズによって倒された1体を除いた、灰色騎兵 バイオン4体。

扉を叩き、強く歪ませていた。

突如、バイオンの1体が砕ける‥夕也のSSDマシンが突進し、機銃掃射で撃退した。

『退避!』

機体下部にあるスピーカーより聞こえる夕也の声に、陸守軍もトルーパーズも防御姿勢。

夕也は残る3体のうち2体のバイオンも、ミサイルを放って次々に撃破する。

マシンを叩き落とそうとバイオンの激しい攻撃。

低空飛行中のマシンは、バイオンのパンチを浴びてバランスを崩し不時着。

すぐさまキャノピーを開けて夕也はSSDショットを撃ちまくる。

夕也「装着!」

赤く輝くSSDアーマーを身に着けて、ソルジャーズ01・ゲルメズとなる。

腕をもがれ、首をへし折られ

倒れている3名のソルジャーズをみつけ

夕也「名前も知らない、1度も皆と揃って戦えないまま‥

俺は隊長として、俺は何もできなかった‥許してくれ!」

散ってしまった仲間へ詫びを言い、夕也はブレードを手にしてバイオンと戦う。

足を数度斬り、まずは動きを止めようとした。

考え通りに、足を斬られて動きが鈍るバイオン。

好機と夕也はジャンプ。

ブレードを振り上げ、勢いそのままに額に突きたてた。

唸りをあげて崩れるバイオン。

刺さったブレードを抜き、さらに駈けてゾンビーたちを斬り伏せる。

襲い掛かるゾンビーを避け、飛び越え、蹴り飛ばし

ブレードで斬り、ショットで撃ち抜き、格闘術で身体を折りあるいは締め

次々にゾンビーを倒していく。

心を解き放った夕也はソルジャーズのころとは違う強さを見せる。

夕也「これが‥俺の戦い」

いままで行ってきた行為、やっと対面した椿への自分の行い

すべてが夕也の胸を叩く。

夕也「俺はバカだ‥俺は!」

なおも膨れ上がるゾンビーの群れに、夕也は果敢に突っ込んでいく。

いや、それを果敢と言っては間違いだろう。

これは玉砕覚悟の行動だ。

生きのびる意思はすでに夕也に無く、少しでもSSD隊員、国守軍兵士たちを逃す

そのためだけに夕也は戦う。

新たにバイオン10体が投入される。

指揮しているのはインキュバスだろう。

他のソルジャーズは、1機‥また1機と撃墜され

残るは3人のみ。

しかしこうしている間にもまた1機、グラウザウラーに機体ごと噛み砕かれ

残る2機もそれぞれ被弾。

不時着するもゾンビーに襲撃され、抵抗虚しく‥

ギュッとブレードの柄を握りしめる夕也。
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