彩心闘記セクトウジャ・3

□レベル11・4
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メフィスト「この人間風情が!」

ヴァーミリオンを蹴倒すが、その足をゲルメズ‥夕也がブレードで斬りつけた。

夕也「巨体を倒すなら足元から叩くまで!」

バランスを崩し、よろけるメフィスト。

伝助「こん、ドあほっっっ」

伝助の強烈な猫パンチっ。

夕也「イテっ! な、なんだ!?」

伝助「せやさかい、クリムゾンの身体をあんまり傷つけるなっちゅーたやろうが!」

夕也「そ、そうだった」

椿「でも厄介だね‥このままじゃ直に私らがやられちまうよ」

夕也「確かにそうだ‥早くしないと父さんが」

伝助「焦ってもしゃーない、気張るしか出来ひんっ」

椿「せいいっぱい、気張りましょ!」

夕也「ああ!」

地を進み、迫るグラウザウラー。

『照準!』

『照準よし!!』

『撃てーーー!!!』

放たれる大砲。

恐竜戦艦の艦橋に当たり、揺らぐ。

夕也「アレは‥」

伝助「侠真、みんな、来てくれたんかっ」

空に浮かぶ海賊船‥侠真の船・侠臨丸。

魔フォウズが人間世界へ大侵攻した時、侠臨丸は戦い

妖霊族を退けたものの、大破してしまった。

しかし‥

伝助「ごんとねん、近頃みょうに静かにしとんなぁと思ぉたら

船を再建しとったんか♪」

侠真、真忍、凛雫、ジャシン、インガ、カルマが船に乗っていた。

ジャシン「次はどこへ照準を向けるのか? サッサと決めろ」

侠真「うるせぇ! いま言おうと思ってたところだ、ゴチャゴチャ言うんじゃねぇ!!」

真忍「もぅ!あに様もジャシンも、 喧嘩は後からにしてくださいっ」

インガ「そうだよジャシン、でないとミライに嫌われちゃうよ」

凛雫「侠真さまもですっ、あとで反省文を書いてもらいますからね!」

ジャシン「侠真くん、とりあえず主砲付近に照準を合わせているぞっ」

侠真「ありがとうジャシンくん、撃ってくれたまえ!」

ジャシン「イエッサー!」

カルマ「なんだ、この変わりようは」

真忍「あに様やジャシンの勝てない相手が、仲間にいてくれてよかったわ♪

あ、私はぜんぜん、カルマに強くやキツく言いったりしないわよ」

カルマ「わかっております‥姫」

凛雫「そこっ、イチャイチャしていないで集中するっ」

慌てる真忍とカルマ。

インガ「あーあ、凛雫ちゃん‥愛理に似てきてるわよ」

凛雫「え? そ、そうですか」

互いに笑って持ち場に着く。

侠真「まずアイツから落とすぜ!」

全砲門が火を吹き、地上を進んでいた恐竜戦艦を木端微塵にした。

椿「やった!」

夕也「だが、まだ地上に敵が多すぎる」

仁「それなら心配ねぇ!」

現れる仮面の軍団‥

直明「未確認破壊脅威7号」

茂美「そんな名前じゃないって教えてくれたの直明さんですよ」

直明「調べていてわかったことだが‥アイツらはその呼び名でいい」

茂美「ダメです、そんな名前で呼んじゃ何もわかりあえませんよっ」

直明「くっ! で、で、で‥伝助‥」

茂美「伝助? そのあとは??」

直明「お前、ワザと言わせようとしているだろっ」

茂美「いいからいいから、早く言ってください!」

直明「チっ‥伝助プレゼンツ☆謎の仮面特別遊撃隊‥だろ!」

茂美「正解でーす♪」

ひょっとこ仮面=仁

虎仮面=愛理

怪しげなセレブ仮面=信代

馬仮面=孝太

舞踏会の令嬢仮面=満優

(顔上半分を覆う白いマスクは、仮面舞踏会のベネチアンマスクで
仮面と一体化した羽根帽子がついている)

縁日で売っている、特撮ヒーローのお面=勇護

直明「知らない間に、増えてやがる」

侠真「アイツ、来たようだな」

ジャシン「ああ‥みなアイツに感化されて、恐ろしくなっていく」

2人はゴクっと唾を飲んで地上を見ていた。


愛理「があぁぁぁぁぁお!」

仁「なにいきなり吠えてんだよっ」

愛理「私は獣よっ、虎よっ、戦う虎なのよーーー!」

仁の肩をコーナーリングのトップに見立ててスックと立つ。

人差し指をピンと天に突きたてて虎仮面は大ジャンプ。

愛理「がぁぁぁぁおぉぉ!」

ポポンっとゾンビーを蹴り倒して、クルっと回って飛び膝蹴り、肘打ち、

さらにドロップキック!

猛る虎はゾンビー十数体をなぎ倒して、1体に噛みついた!

直明「茂美、アイツだけは相手にするなよ‥アイツに関わったら‥」

茂美「か、関わったら‥」

直明「間違いなく、ヤられる」

茂美「は、はい」

虎仮面に近づかないよう、2人はこっそり戦い続けた。

ちょうどそのころ‥

事態が急変していることを承知で

桐花は火の海と化した樹海を、オフロードバイクを駆って進んでいる。

桐花「厳さん‥」

囚われた厳を救おうと来てみたが、早くもSSDベースが陥落していることに焦っている。

桐花「でも‥アイツのことだわ、きっと厳さんを国守軍へと送っている。

あくまでも自らの手を汚す主義じゃない人だから」

柳の性格は熟知している。

一時はそれを愛したこともあったのだが。

桐花「基地を出ようとしたころに襲撃されたとしたなら

移送車はいったん停止して‥‥すぐまた出ているはず。

基地の位置と攻撃の規模からして、そう簡単には走れない。

だったら!」

バイクを操り、飛んで岩の上。

小刻みにジャンプして岩から岩へ飛び移り

難所をいとも簡単に越えて、移送車が走るであろう予想ルートへ

大幅なショートカットを経て出る。

桐花「はい、みーつけた」

樹海を命からがらといった様子で逃げ走る陸守軍の車。

桐花「戦争ゴッコしたがるヤツラの思考回路って、アップデートは無しみたいね」

桐花はライフルを構え‥発砲。

フロントガラスは防弾仕様だが、続いて投げ込まれる手りゅう弾の破裂に

急停止する移送車。

2人、陸守軍兵士が降りて反撃してきた。

といってもどこから撃ってきたのかわらないまま、とにかく反撃しているといった様子。

桐花「どこ見て撃ってるのボウヤたち、もう1度訓練やり直してらっしゃい」

的確な射撃で2人をあっという間に倒す。

肩を撃たれた者、足を撃たれた者‥痛みで意識がもうろうとしていた。

桐花「だいじょうぶよ、骨は砕かないように撃ったし

そう威力もないもの使ってるし。

それに怪我なんて、時が経てば治るんだから」

その顔は指揮官当時のものに戻っていた。

閉じ込めたはずの過去だったが、『今』を守るために彼女はあえて過去に立ち戻る。

これが最後‥と。

『ひぃぃぃ』指揮官らしきものが車から転げ落ちるようにして飛び出て、

樹海を走って逃げていく。

桐花「迷子にならないようにね」

見送り、車へ。

桐花「お迎えに上がりました」

厳「桐花くん、すまないね。

ありがとう、助かったよ」

桐花「いいえ、風救隊の役目です‥それに、私の恩人として

また、これからのこの国にあなたは不可欠な人ですから」

厳「おやおや」

桐花「うふふふ、謙遜しないでください。

私たちは本当にそう思ってるんですから」

厳「せいいっぱい、君や風救隊の諸君の期待に応えられるよう努力するよ」

桐花「ありがとうございます‥で、厳さん」

厳「なんです?」

桐花「お迎えに来たといっておいてなんなのですけど

この車で樹海を抜けたところまで出てもらいますか?

さっき、通信は入れておきましたから今頃

風救隊員があなたを待っているはずです」

厳「それは助かるが‥君は?」

桐花「私は、つきまとう過去ってヤツと決着をつけてきます。

そう‥明日を生きるために」

厳「そうですか‥君が、終わらせるために向かうなら

私はどんなことをしてでも引き留めたでしょう。

だけど、明日を生きるために‥君が始めるために向かうのなら

私は背中を押したくなりますね」

桐花「ありがとうございます」

厳は運転席に座り

厳「桐花くん、必ず戻ってきてほしい。

まだ風救隊は生まれたばかりの子供と同じだ。

君の力が必要で、君が戻ってこなければ泣く者は大勢いる‥私も含めて」

桐花「その言葉を頂いたなら‥なにがなんでも戻りたくなりますわ」

厳「そうしてもらわないと困るよ‥待っている!」

厳は車を出す。

樹海の中にひっそりと舗装された小さい道を、車は駈けてやがて見えなくなった。

桐花「さて‥柳 忠正。

あなたはそうして戦い続け、いったいなにが欲しいというのかしら‥」

バイクは再び走り始めた。


風救隊本部・医務室

風救隊本部が慌ただしくなっており

気になった雪永がドアを開けて覗くと、隊員たちが走っている。

緊急事態‥SSDベースが未確認破壊脅威に襲撃され、

SSDは壊滅寸前、国守軍も大きくダメージを受けているとの知らせを聞いた。

雪永「みんな、モンスタリアの恐竜戦艦がSSDベースを襲っているらしい!」

墨彦「あの恐竜戦艦か!!」

桜花「けんど、エトちゃんの話じゃ

モンスタリアはもう、事実上崩壊してるといってもいいはずばい」

蒼唯「だからこその総攻撃だろう」

菫「クイーンとゾンビーたちだけが残った王国‥」

翠季「それに‥夢魔」

檸檬「紅ちゃんを襲ったメフィストもいる」

紅「みんな‥行こう」

蒼唯「バカ、お前は寝てろ」

檸檬「そうだよ、私たちが行ってくるから」

紅「ううん、もうヘッチャラ‥それに緋色たちもきっと、そこへ来る」

菫「勇者の勘? それとも」

紅「私、緋色のお姉ちゃんだから」

檸檬「‥‥‥だね‥お姉ちゃんだもんね‥」

紅の心が檸檬にもわかる。

姉として、弟・妹の辛さは自身も痛みを感じるほどにあるもので。

紅「緋色は私のところへきっと来る。

だから私は行くの‥緋色が来る場所へ」

ベッドから紅は降りる‥ふらついた身体を仲間たちは支える。

紅「ありがとう‥みんな」

雪永「紅ちゃん‥行こう!」

彩心たちは戦いへと出ていく。

墨彦たちが去っていくのを影太は見ていた。

影太「墨彦‥お前は私を超えていけ。

お前ならきっとそれができる。

多くの命を守り、救い‥

私ができなかったことはきっとお前が‥お前なら必ず果たせる。

そう‥鉄志もお前なら救ってやれる‥墨彦」

父として、影太は墨彦の成長に未来を託す。

影太「風救隊、総員出動。

避難誘導および救助活動に重点を置くように」

通信機で指示を出す。
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