彩心闘記セクトウジャ・3

□レベル11・7
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それぞれの戦いが始まり

座り込んで休んでいたピーノも、ポケットから回復丸薬を取りだし服用。

ようやく一息ついて、テッタタタと走り始めてすぐ立ち止まる‥

ピーノ「蝕しゃん」

駆け寄りたいのに、場をわきまえてあえて駆け寄らなかったルナの表情

そして蝕の悲しい叫びを思い浮かべ、ピーノは瞳から一つ涙を落とす。

倒れている蝕へ、魔法杖のないすティックを向けて

『ぺりりん☆』を連続で5回、唱えた。

チョット回復させる魔法の呪文‥

蝕「ん‥うぅぅ‥」

気が付き、起き上がる。

蝕「これ‥なんの真似よ、ボウヤ」

ピーノ「蝕しゃん‥さっきあなたは、『独りでいい』っていいましたよね」

蝕「ええ」

ピーノ「ボクにはしょれが、『独りはイヤ』とおんなじ意味に聞こえたんでしゅ」

寂しげな表情を見せる。

蝕はそんなピーノの言葉に、そして見せる表情に胸を突かれた思いをする。

ピーノ「魔法で完全にあなたを救えない。

戦いが終わったら、蝕しゃんの本体を海から引き揚げて
すぐに治療しましゅ!

そしたら、ルナ姉しゃんとしっかり話してくだしゃい。

ボクをじゅじゅ(ずず)が助けてくれたように

きっとルナ姉しゃんが蝕しゃんを助けてくれましゅ。

ボクを救ってくれたように、伝助兄しゃんや付喪堂のみんなが

蝕しゃんを救ってくれましゅ。

だから‥ここで待っていてくだしゃい」

蝕「で、お前はどこに‥って、聞くだけ野暮か」

ピーノ「ボク、戦わないといけましぇん。

誰から命令されたワケでもありましぇん。

誰かを傷つけたいワケでもありましぇん。

だけど、今は戦わないと誰も助けれないから

ボクたちは命を傷つけようとするヤツラと戦いましゅ!

戦う相手の中にも、助けたいと命はたくしゃんありましゅ‥蝕しゃんのように」

テッタタタとまた走って、真心弓をひき絞って『でゅわ☆』ストレートでまず第1投!

蝕「ピーノ‥ガキだと思ってたけどなんだ‥案外、男じゃないか」

ピーノの魔法のおかげで身体の自由が戻っていた。

立ち上がり、フラフラと歩き始める。

後ろで紅と緋色が戦う音が聞こえるが

蝕「ボウヤ‥いや、緋色‥助けようとしてくれてありがとうね‥

クリムゾンをよろしく」

緋色はきっと、姉のところへ帰ると確信して‥

蝕「信じられるのは自分だけ‥

仲間なんて、ともだちなんて‥人間なんて信じる者がバカなのよ。

ねぇ‥バディ‥私、間違ってる? 」

疲れている蝕は、幻を見ているのだろう。

瞳に映るのは、悲しげな顔をした牧師だった。

強がりを吐くように自分へ言い聞かせ、堕天使は誰にも知られず
ひっそりと姿を消した。

緋色「姉ちゃん!」

名を呼ぶが次の言葉が出ない。

もう戦う理由はない。

そんなこと、わかっているのに素直になれない。

クリムゾンを救うために悪魔へ刃を向けたときから

伝助に剣術の基礎を教えてもらいながら、守る戦いのなんたるかを学んだときから

蝕が戻ってくるなと怒鳴ったときから

姉と戦う理由ははじめから無いのだと、無かったのだと気づきはしたが
姉へ思いをぶつけるようにアガマルを叩きつける。

紅は緋色‥キルの攻撃をすべてレットウで受けきっている。

それは、幼い弟が泣きじゃくって姉へ小さな拳を当てている姿に似ていた。

何度も何度もただ、叩きつけるアガマル。

レットウはヒビ一つ入らずに、緋色の想いを受け止めていた。

疲れ、尻餅をつく緋色‥

紅「緋色! そんものなの!? 立ちなさい、立って お姉ちゃんにぶつかってきなさい!!」

緋色「うわぁぁ!」

苦悩の絶叫を発して、また立ち上がった緋色はアガマルで突きを撃つ。

紅は避けもせず、アガマルの切っ先を肩口に受けた。

流れる鮮血‥受け入れる心の代償は大きい。

けれどそれを怖がっては何も、誰も受け入れられないから。

緋色「ね、姉ちゃん‥」

紅「これが、緋色が私に流させた血だよ。

緋色‥いまもしかして泣いてる? 私は緋色が泣いているのと同じように血を流している。

いま緋色が感じる心の痛みは私の痛みでもあるんだよ。

緋色‥戦いはね、カッコいいものでもなんでもないの。

でも戦わなきゃ多くの命の血が流されて、泣く命もたくさん出ちゃうから

痛みをいっぱい感じてしまうから、私は戦っている。

私はこの前、戦うための覚悟を知ったんだ‥

悲しかったけど、いつかは戦わなきゃならないときが来る。

私はしっかりと覚悟を持てた‥

緋色は何と戦うの?

私なの?

私を殺してまでも、私にそばにいてほしいの?

でも私‥きっと死んだって緋色の傍にはずっとなんていられないよ。

心は誰のものにもならないんだから。

私は命に寄り添っていたい‥だから緋色だけの傍にはいられない。

心ってね、そうなんだ。

自由であって、自由であるためにたくさん傷ついて責任もすごくあって、
だからこそ自由で‥自由だからこそ、命は命でいられるんだ。

私は自由な心でありたい。

命でありたい、命を大切に全うしたい、そのためにたくさん傷つくし泣くだろうし
だからだから、そんな心を持ち続けたい!

緋色、緋色の心はどうありたい?

私を、誰かを‥命を奪ったり心を奪ったり

それでコレクションのように飾って満足できる?

違うよね‥緋色はそんな子じゃないってお姉ちゃんわかってる‥

緋色、もう帰っておいで‥帰ってきて、緋色」

紅の血で濡れたアガマルが、緋色の手から滑り落ちた‥

息を切らし、暗黒騎士の姿から緋色へと戻る。

瞳は涙であふれていた。

緋色「俺‥なんでこんなこと‥」

紅「緋色‥お姉ちゃんね、これからも戦うよ」

緋色「姉ちゃん‥うん‥」

紅「緋色がもがいていたように、

お姉ちゃんにも仲間たちにも、もがかなきゃならない
戦わなきゃいけない理由があるんだよね‥

それを放り投げるワケにはいかない、投げ出すワケにはいかないの。

前にも言ったと思うけど‥お姉ちゃんには

そうできる力があるから。

なにより、お姉ちゃんがそうしたいと思ったから。

私には私の進みたい道がある、歩いていきたい道がある。

緋色にもそういう道はあるんだよ。

なにもそれが、お姉ちゃんと別々の道じゃない。

遠くにはなれていても、違う景色を観ていたとしても
想いが一緒なら同じ道を歩いてるよ。

それが心の世界だって、お姉ちゃん感じてる。

緋色がお姉ちゃんを守ろうと思ってくれていたのは嬉しいし

やり方は間違えちゃったけど

戦いから遠ざけようと悩んでくれて、ホントにありがたいと思ってる。

だけど、私は私の答えを出している。

緋色の答えはなぁに? どうしたいの‥緋色が、しっかり考えて

これからちゃんと答えを見つけていかなきゃ‥緋色、今の緋色ならわかってくれるよね」

守っていたと信じていた姉に、守られていたのだと緋色は素直に認めた。

そして本当に姉を守るには、まず自分が成長しなくてはならないんだと

蝕、クリムゾン‥伝助、椿や夕也の姿、そしてなにより姉の言葉に
緋色は答えを見出していた。

紅「緋色‥じゃ、お姉ちゃんからね‥」

緋色は何となくソレがわかっていて

緋色「ああ‥」

ゆっくりと姉の下へ。

紅の瞳からも涙がこぼれる。

そしてギュッと握った拳を振り上げ

紅「めっ!」


諭すように、勇者☆ふんわりパンチ。

コツンと頭を叩く姉の拳は‥軽いけど重い。

自分を想ってくれるぶんだけ、重いのだとわかっている。

緋色「‥さい‥なさい‥姉ちゃん‥ごめんなさい‥」

過ちを認め、心から詫びる。

人は己の過ちを素直に認め、正しく詫びることができてようやく1人前だと
父や母が言っていたことを思いだした。

姉はもう素直に認め、謝ることができる1人前の人間だ。

緋色もそのスタートラインに立てた。

紅「お帰り‥緋色」

優しく抱きしめた。

自分よりも背の低い、だけど大きな姉の存在に
緋色はこうなりたいと願う。

そのとき、紅の心から心の防具が生まれた。

ボゥっと輝く光は、大きな布へと形を変える。

紅「綺麗‥」

緋色「それに‥温かい」

緋色が手にしていたアガマルは、元の錆びた正義の刃に戻っていたが

紅の心から生まれた布が、スルスルと錆びた刀を包んでいく。

布は‥錆びた刀の鞘となった。

『それは、おもいやりの布‥と、言うんじゃろぅ』

缶吉からの通信がツァイフォンに入る。

『おもいやりを欠いた正義は暴力でしかなく

正義とは、おもいやりを兼ね備えてこそ真の正義になり勇気をもたらす‥

緋色くんの刀は正義の刃。

本来、なんでも斬ることが出来る刀じゃけんど

緋色くんの正義が間違ったものじゃった ために錆びてしもぅとった。

刀には鞘が必要で、正義の刃は鞘を持っておらんため

むき出しの正義は時として誰かたちを傷つけるように、自分自身も傷つけてしもぅた。

じゃけど、紅ちゃんの心から生まれた おもいやりの布が鞘となって、
正義の刃は完全なものになったんじゃ」

缶吉の言葉通り、心の攻具・正義の刃と心の防具・おもいやりの布が一体化して
『勇気の旗』という心の道具‥マインドアイテムへと変化した。

長い柄に、くくりつけられた大きな旗‥

誰しもが迷う心を持っていて、この勇気の旗は迷うものを導き

闘志を与える重要なマインドアイテムだ。

『緋色くん、その旗を降ってみんさい』

言われるままに、緋色は柄を握って旗を大きく降る。

すると勇気の旗から生心力が飛び散って
戦っている彩心や付喪堂、霊皇たちの傷や疲労を回復。

もちろん突きによって血を流して紅の肩口の傷も癒えた。

さらには皆の戦闘力や防御力を高め、魔法力も回復させる。

紅「すごっ!」

大コーフンの勇者。

『これを受け取りんさい』

残るグレイバットと戦う付喪ライナーから、カプセルが射出される。

小さなパラシュートが開いて降りてきたカプセルを紅が手にするはパカンと割れて
中からメタリックな緋の色をしたツァイフォンが出てきた。

『伝助さんがの‥』

菫が救われ、彩心として加わったとき

伝助は緋色もまた、彩心になってくれると信じて
このツァイフォンを作っていた。

『伝助さんはそういうパンダじゃ‥きっといつか手を取りあえると信じ
その日のために走り続けとる‥そしてまた、その先へと進む』

紅「えへへ‥だよね」

だから大好きなのだと紅は思う。

紅「緋色‥行こう!」

緋色「姉ちゃんのためにだけじゃなく、自分のためにだけでもなく

俺は‥命のために、自由のために、心のために戦う!」

緋色の決意と覚悟がジョブチェンジを起こす。

暗黒騎士より、緋色の本来の心のジョブである聖騎士へと‥

紅「着心!」

緋色「着心!」

赤色と緋色の輝きが辺りを染め

紅「赤色の勇者! ブレイヴ・ルージュ!」

緋色「緋色の聖騎士! パラディン・ロードゥ!」

きらめく鎧はマモーブMk-3。

それを機に残る彩心たちも一斉に着心。
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