旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□第1話・3
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都内 クグツによる破壊は続いていた。傷つき、倒れ泣き叫ぶ人たち。

容赦ない破壊。

それはまるで、開発と称して自然を壊す様に似ている。

燃え盛る炎。

陽炎立つ道に、悠然と歩いてくる者‥勇護。

勇護「思いしったか‥人間ども!」

風に吹かれ、新聞紙が勇護にまとわりつく。手にする勇護。

ここ5年間の首相・大臣など政治家の発言&失言の特集記事のようだった。

勇護「フンっ」

せせら笑う。

その新聞を握り締めると、新聞は勇護の手の中で炎に包まれ、やがて燃え尽きる。

勇護「美しい国か…人が人を隔てて、一方は栄華を極め、それでも満足せずに欲望を追及する。

かたや、一方は貧困にあえぎ、苦しみもがきながらも報われず朽ちてゆく。

そして、その事を正そうともせず、理屈ばかりをこね、身勝手な言動をとる者‥
見てみぬ振りをする者。

フンっ随分と美しい国だな!

お前達人間の行いは今まで見せてもらった。

未来を創るべき若者たちが、理不尽な理由で他者をおとしめ、卑しめ、傷つけ排除する。

言われ無き辱めをうけた者たちは自ら死を選び、恒久の彼方へと去ってしまう…

ハンっ、それもそうだろう、本来、手本を示すべきもの達がしっかりとした道を示せないでいるのだからな!

迷い人たちは永遠に迷い続けるだろうさ!

まだあるぞっ。親が子を痛めつけ、殺し、子が親を痛めつけ、殺す…

憎しみの輪は広がり、肉親同士の殺し合いはもちろんの事、他者を憎み、
命を奪うなど、花を摘み取るぐらいの感覚だろう。

さらには年老いた者たちやか弱い者たちは死ねと言わんばかりの身勝手な秩序を作り、
それを強いる…誰が、なんの権利が、何の資格があって決めるのだ!?

公僕などと偽りに満ちた名を名乗り、または社会の代表と選ばれながらも実のところ、
欲しか頭に無い下劣な者どもが支配する国…

その下劣な者にすがり、群がり恩恵を貪る卑しい者たち。

物に感謝などせず、溢れるゴミの山‥蔓延する様々な病原体、すべては、きさまら自身が行った報いだ!

それでも、なおもエコだの環境に優しいなどとほざいては、金儲けをやめぬ‥

悪魔が見れば、さぞ美しい国だろうなっ!

世界にしてもそうだ。

絶えぬ争い‥絶えぬ差別に貧困…そこに虚偽の言葉を並べ立て、己の欲望を満たす
ためだけの殺戮…挙句、いわれのない攻撃で、幾千、幾万の涙と血が大地に流れたか‥


それでも人は変わらぬっ!

広がる核の脅威‥放射能に汚染され、苦しんだ末に数多の命は失われる。

なおも狂気の宴は終わりはしない‥人が人を殺すための道具‥その開発は躍起になって
行われはするが、一向に進まぬ平穏な時代を築くものの繁栄…。

醜く争い、いがみ合う国々…我々はもう待つのはやめた!

無駄な事と気付いたからだ。

知っているか?

美しき自然があるにもかかわらず、緑あふるる土地を破戒し、文明の発達だ、開発だと
おごり高ぶった建物を建てる。

文明とはなんだ?

文化とはなんなのだ!?

自然の恵である燃ゆる水がいずる所にいただけで、暴利を貪る事なのか?

飢餓に喘ぐ者を尻目に、貴重な食物をただ、金などとくだらぬゴミに変えていく事なのか?

結果、この星は泣き‥残るは醜い傷跡ばかり…そんなに滅びたいか!?

滅びたいなら俺が滅ぼしてやる!

お前達人間を一掃し、この大地を浄化したあと、我らの理想郷を創るのだ!

お前達が言う醜い美しい国は消えうせ、我らの‥真に美しい国創りが始まる‥まほろばが生まれるのだ!

散れ‥人間よ…この世に巣くう害虫たる人どもよっ!死ねぇ!!」

勇護の剣‥暗夜の切っ先より放たれる破壊光線。

倒れ、泣き叫ぶ人たち目掛けて向かう。
子を守る母…互いに庇いあう者たち…しかし…

老人を盾にする者もいれば、その逆も…。そんな光景を見て、高笑う勇護。

その時…光線をかき消す光の翼が現れた。純白の羽根を舞い散らせ、ゆっくりと広がる翼。

仁・愛理・孝太・信代…そして、満優と伝助の姿。動揺する勇護。

勇護「み、満優‥そうか、戻ってきてくれたのか‥考え直してくれたのだな!さあ、ともに
ゆこう!ともに我らの理想郷を…」

仁たちより一歩、前へと出る満優。

満優「黙りなさい、勇護。お前の行いを‥妖霊族の暴虐を許すわけにはまいりません」

勇護「満優、まだそんな事を‥何故だっ、何故俺の気持ちがわからぬ!」

信代「わかってないのはあなたのほうよ!満優さんがどれほどあなたを愛し、心配し、
心を痛めているか‥目を覚ましなさい!」

孝太「そうです!惚れた女を泣かせるなんて‥絶対にしちゃいけないと父に教わりました!
あなたも男なら、いい加減目を覚まして自分の過ちに気付くべきだ!」

愛理「だいたい迷惑なのよねっ!確かに、自然破壊だ戦争だって問題は山積みよ。
だけどねっ、これは人の問題なの!そりゃ、あんた達に迷惑かけてるかも知れないけどさ、
人が人とやり直さなきゃ、なんにも解決しない事なのよっ。あんた達にどーこーしてもらおうなんてこれぽっちも思ってなんかいないっ、いらない口出しはよして!」

勇護「その人間のために、俺たちはどれほど苦しめられたか!罪深き者たちがほざくな!」

仁「確かに人間は悪いさ!自分勝手で強欲で‥お前が言ってるのもわかる気がする‥だけど
全部じゃねえ!ここにいる人たちの中にも、互いにかばい合い、助け合う人たちがいる!
この世にゃ、あったかい人もいる、優しい人も沢山いるんだ!そんな人たちまで傷付けるのは、あんまり理不尽じゃねえか?違うか!?」

勇護「ええいっ!人間風情が何を御託をならべるかっ!お前達は何者だっ」

仁「火の精霊に選ばれし‥霊皇・仁(決まったぁ)」

愛理「水の精霊に選ばれし‥霊皇・愛理(あー恥ずかし)」

孝太「土の精霊に選ばれし‥霊皇・孝太(あわわわ、言っちゃっていいのかな)」

信代「風の精霊に選ばれし‥霊皇・信代(風よ‥みんなを‥わたしを守って…)」

心の中でそれぞれ思いつつ、戦闘態勢を取る。

勇護「残りの霊皇が揃った!?」

驚く勇護。

満優「光の精霊に選ばれし‥霊皇・満優。勇護様‥いいえ、妖霊族よ、人の世は私達が守りますっ」

勇護「満優、そんなにも人間の味方をするか!山を崩し、川を汚し、空を、海を傷付ける。
物に感謝の念も抱かず、挙句に俺たちの大切な友や民を殺した人間を‥腐敗しきったものどもを何故守ろうとする!」

仁「かならず!かならず俺たち人間の手で世界のゆがみは正してみせる!気付き、改める。
だからもう少し‥もう少し待っちゃくれねえか」

事態を回避するため、必死に呼びかける。

勇護「もう待てぬっ!いまさら命乞いか!」

満優「あなたは急ぎすぎたのです‥その焦りが迷いを生み、憎魔に魅入られた…
勇護様、あなた自身を‥お優しかったあなたに戻ってください」

胸が張り裂けそうな思いで叫び、願う。

勇護「黙れ!待ちすぎたからこそ、尊き者たちが奪われていったのだ!」

満優「犠牲が出たらればこそ、その命に報いるためにも、私たちは深き思慮が必要なのですっ」

勇護「ええい、黙れ黙れっ!!どうしても憎魔様の‥俺たち妖霊族・魔フォウズの邪魔をするとあらば‥クグツっ!」

勇護の号令により、あちらこちらから湧き出るように現れる傀儡。

群れをなして仁たち霊皇に向かい来る。
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