旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□第2話・1
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「霊皇戦隊セイレンジャー」第2話
            「戦え!たま太郎」
2008年12月


福福内・異空間 この空間は妖霊族・魔フォウズとの戦いに、セイレンジャーの拠点が
必要だったため、満優(みゆ)姫の魂力(エナジー)を使って生み出したものだ。

伝助はこの空間を「霊皇の宿」と呼んでいる。

その伝助がなにやら作業をしている。

伝助「‥おっしりフニフニ、お尻フニフニ‥♪」

最近覚えたテレビの子供番組の歌を口ずさみながら作業を進めている。

伝助が作っているのは『鋼速(こうそく)ローダー』と言う名の高性能戦闘バイク。

車体に肉球マークが堂々と入っている。伝助はこういったマシンを開発、設計するのが
大好きだ。

作り上げた物には品質保証の証として、この肉球マークをつけている。

まあ、使う側としたら迷惑な話しなのだが‥。

カチャカチャとエンジンあたりを調整している。

伝助「総右衛門、スパナ‥」

ハッと気付く。総右衛門も源左衛門も、もういない。

『フッ』寂しげな笑顔を一瞬見せると、再び『おっしりフニフニ、お尻フニフニ♪』と
歌いながら作業を続けた。


妖霊城 憎魔((ゾーマ)が異次元に築いた妖霊族の城。

この次元もまた、精霊たちが住む世界や人間たちの世界と隣り合わせであり、
重なり合っており、異なる世界でもある。

荒涼とした枯野にそびえる城。

その内部の中央にある王の間。


妖霊城・王の間 憎魔は玉座に、その眼下に勇護(いさご)・ジャシン・インガ・カルマ・
凛雫(りんだ)がいる。

憎魔のかたわらには透き通る棺の中に眠る淡い桜色のドレスの美女。

ジャシン「それにしても‥まさか霊皇が5人も集まるなどと‥ねぇ」

インガ「勇護!お前があの時に満優姫さえ始末していればっ」

勇護「だまれ!貴様に口出しされる覚えは無いっ。俺は憎魔様にお仕えする身、貴様たちとつるむ気など無い!」

激昂する。

インガ「なんだってぇ!!」

鎖短剣・怒淋(どりん)に手をかける。それを黙って静止するカルマ。

インガ「なにするんだいっ!」

怒りが収まらない様子。

ジャシン「まあまあ、所詮、世間知らずのお坊ちゃまには言うだけ無駄だと思いますよ。
愛しい愛しいフィアンセを殺すなんて出来るはずないでしょう。だったら、代わりに殺して差し上げましょう‥ね、勇護様。ククク」

嫌味たっぷりの口調で薄ら笑みを浮かべる。

その言葉に勇護はさらに激昂する。

勇護「満優には手をだすな!」

自身の武器である剣・暗夜を抜き、構える。

すると、

無言だったカルマも長剣・残哀(ざんか)を背中の鞘からゆっくりと抜く。

応戦する気のようだ。

憎魔「止めぬか」

威厳のある声が響く。ひざまずくジャシン・インガ・カルマ・勇護・凛雫。

憎魔「この場で争うぐらいなら、霊皇どもの首を獲ってまいれ」

勇護「はっ。今しばらくのお待ちを。かならずや、憎魔様にたてつく霊皇を討ち取ってまいります」

ジャシン「馬鹿な犬ほどよく吠える‥ククッ。

勇護様、出来ぬ事は出来ぬと言ったほうがよろしいかと。

満優は光の霊皇‥憎魔様に仇なす霊皇どもは私たちこそ討たねばならぬ敵。

満優は私の獲物でもあるんですよ、闇の霊皇・勇護様」

インガ「と、言う事はあんたの首も獲ってもいいんだよね、勇護」

勇護「ぐっ、言わせておけば!」

背にまわしていた暗夜を構える。

一触即発の4人。

凛雫「双方お控えなさいませ!憎魔様のお言葉が聞こえぬのですかっ!」

勇護とジャシンたちの間に割って入る凛雫。

インガ「凛雫っ、邪魔するんじゃないよ!」

凛雫「憎魔様のお言葉でございます!」

憎魔「ふふふ‥よい、凛雫。血気盛んは良き事じゃ、頼もしくも思う。

それに‥馬鹿な倅を思い出す‥真忍(まお)よ、お前の兄をの‥ふははは」

そう言って寂しげに笑い、傍らに安置してある美しい姫が眠る、透き通った棺を
愛おしそうにさすった。

憎魔の声を聞き、怒りが収まらない様子のまま、剣を収める勇護。

憎魔「インガよ、お前が行き人間どもを襲ってまいれ。ツクモ神を使うがよい」

ツクモ神とは‥自然ばかりでは無く、人が作りし物にも精霊は宿る。

人の想いが命となると言ってもよい。

人は物を大切にし、大事に愛着を持って使っていた。

だからこそ、昔から物は大切に‥粗末にしたら『ばち』があたると教え、
物をつく憑もがみ喪神と言う神に喩えて粗末にする人間たちを戒めてきた。

その、物に宿りし精霊たちを妖霊族のパワー『怨・魂力(おん・エナジー)』で狂わせ、
凶暴化させて破壊獣・ツクモ神は誕生する。

インガは憎魔の命を受け、地上へと向かう。


福福・屋上 福福は1階3/2が店舗。

残り3/1と2階が居住スペースで、その上に洗濯機と物干しスペースの屋上がある。

結構な広さの屋上。

作業を終えて真っ黒に汚れた伝助が、全自動洗濯機の電源を入れ、
洗剤と漂白剤と柔軟剤を準備している。

伝助「フフッフン♪フッフフン♪フンフンフンフッ‥くぼっ!がぼぼぼぼっ!!」

水が溜まり、回り始めた洗濯機に飛び込んだ。

そして40分後…洗い・濯ぎ・脱水の工程を経て、ピッカピカのさわやか真っ白になった
伝助が、さんさんと降り注ぐ太陽の光の下で日光浴を‥いや、彼の場合『干している』
と言った方が正しいのだが‥とにかく、日光を浴び、くつろいでいた。

伝助「…はぁ~‥ポカポカや…」


福福 仁は中華鍋を振るっている。

今日は土曜日なので客はまばらだ。

仁「あっしたは、たっのしい、にっちようびっ♪定休っ日♪」

ご機嫌の仁。

店内・奥のテーブルにつく愛理の姿が見える。

モバイルPCを前に、何やらメモったり、キーを打ち込んだりと、仕事中のようだ。

仁「あっしたは、こっころと、お買い物♪」

愛理「ちょっと!サバ味噌定食まだなのっ!」

仁「おわぁっ!‥あ~、びっくりした。もうすぐ出来っから。たくっ、食わしてない子じゃ
あるまいし‥」

愛理「何っ?!言いたいことかあるんならハッキリ言いなさいよっ」

この2人の仲はいまだ改善されないようである。

仁「だいたいさ、なんでウチん店で仕事してるわけ?事務所とか‥オフィスって奴?ねーのかよ」

火に掛けていた、別の鍋からサバ味噌を皿に取りながら言った。

愛理「それは‥いいでしょ、私の勝手なんだから」

仁「自宅トレーラーって奴か?」

愛理「そうそう、なんでも運びますよ♡えぇい、ついでだ、この店ごと運んじゃおっかな、
私の愛車・自宅でねっ‥て、バッカじゃないの!トレーラーじゃなくてトレーダーよっ
トレーダー」

仁は出来立てのサバ味噌定食を、ノリツッコミする愛理のつくテーブルへと運んできた。

仁「いやな、朝‥開店すぐからそこに陣取ってるからさぁ。朝飯もそこで食ったろ」

愛理「ここで仕事した方が食事もちゃんと摂れるし、何かと都合がいいのっ。料金は
ちゃんと払ってんだから別に文句はないでしょっ。私は客よ、客!だいたいファミレス
なんかじゃゴロゴロいるじゃない、たくっ」

そうがなると、お腹が空いていたのか勢いよく食事を始めた。


ゴミ収集場 放電のような閃光が走った後、インガが宙より姿を現した。
あたりをゆっくりと見廻す。

インガ「フン、自分たちがゴミのくせに、何かと物を捨てるんだね」

インガの手のひらに集まる禍々しいエネルギー『怨・魂力』。

インガ「生まれ出でよ、ツクモ神!」

怨・魂力の塊がインガの手のひらから放たれ、辺りをフラフラとさまよった後、
捨てられ、薄汚れている武者人形に取り憑いた。

眩い光の爆発が起こり、ツクモ神と化す武者人形。

インガ「生まれたようだね、ツクモ神・凶厄丸(きょうがまる)」

武者人形は、凶悪な鎧姿の獣となり、激しい雄叫びをあげた。

そんな凶厄丸の背後からもう一体、何かが現れる。

インガ「ん?チっ、なりそこないか」

怨・魂力で誕生するツクモ神‥時として、その強力なエネルギーの余波によって、
周囲の物体がツクモ神と化す時がある。

あくまでも余波で生まれし物のため、ツクモ神本来の力は持てず、妖霊族・魔フォウズはそれをなりそこないと呼んでいた。

どうやら武者人形の影に落ちていた、猫のキャラクターのマスコットが余波でツクモ神化したようだ。

インガ「凶厄丸!」

凶厄丸は刀を抜き、そのなりそこないと呼ばれる猫のツクモ神を斬ろうとした。

カルマ「待て!」

インガの後を追ってきたカルマが凶厄丸を止める。

インガ「何するんだいっ。邪魔するんじゃないよ!」

カルマ「なりそこないでも、人間にとってツクモ神は脅威となろう。捨て置け」

インガ「何‥ふん、まぁいいよ。凶厄丸、ついて来な」

カルマの言葉に納得したのか、凶厄丸を引連れその場を去る。

そんなインガの後をカルマも追った。残されたツクモ神のなりそこない…寂しそうに辺りをうろついている。

やがて、空へ向かって叫ぶ。

悲しみを含んだ切ない声だった…。
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