旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□短編・お正月編
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「霊皇戦隊セイレンジャー」

「明けましておめでとうございまする、旧年中はなにかと‥」

2009年1月

福福 元旦・快晴。玄関が開き、ピンク色の可愛らしい晴れ着姿の心が姿を見せる。

心「お兄ちゃん、早く早く♪」

どうやら初詣に行くようだ。

仁「ほいほい。忘れ物ないな?姫さぁん、行くよぉぉ」

仁はいつものジャンパーにジーンズ姿、満優が店から出てくる。

満優「お待たせしました」

パッと花が咲いたかのような雰囲気になる。

白を基調とした花模様の振袖を着て、光沢のある青色の帯を締めている。

帯には金や銀の糸で鶴の刺繍が施してあった。

心「満優姉ちゃん、きれい。ね、お兄ちゃん」

仁「う、うん」

頬を赤く染め、照れくさそうに答える仁。

満優の着ている振袖は去年、愛理が着ていたものだった。

祝賀会に結婚式‥政界・財界と結構太いパイプを持っているらしい愛理はその分付き合いも広く多い。

曰く『去年着たものを今年も着ていくなんてありえない』だそうで、

着ないのならせっかくだし、正月に着てみなよと言う事になって、
持ってきてくれたものだ。

一方、心の晴れ着は信代が持ってきてくれたもので、なんと12月に入ってから
心のために反物を選び縫ってくれた。

『あんまり上等な反物じゃないけど』なんて言うが値段ではない。

心のために‥そんな信代のこころ遣いが嬉しかった。

心「満優姉ちゃん、とってもキレイよ」

満優「ありがとうございます。心ちゃんもとても綺麗ですよ」

心「そうかなぁ」

そう言って照れる心。

『そーいや正月に着物なんて初めて着せてやれたなぁ‥』そう思いながら、
仁も嬉しそうな心を見て喜んだ。

仁「んじゃ、伝助、総じい、源さん、留守番頼んだからなっ」

満優「お願いしますね、いってきます」

心「いってきま~す」

心が歩くたびに袖が揺れるのが楽しい。

高価なものと知っているのでなかなか着たいなんて言えなかった心。

仁と満優からもらったお年玉を小さな巾着に入れ、元気よく小走りに仁たちの先を行く。

仁「あぶないぞ、気をつけろよ」

店の置くから『気ぃつけて』『お気をつけていってらっしゃいませ、どうぞごゆるりと
お楽しみを』『んっ』なんて伝助たちの声が聞こえてくる。

神社で愛理や孝太、信代と合流する約束だ。

巾着を手首に掛け仁の手を右手に、満優の手を左手にと心は握る。

3人が手をつないで歩いていった。


福福・店内 玄関の鍵を閉めたかをちゃんと確認すると、いそいそと準備を始める
総右衛門。

源左衛門は冷蔵庫からなにやら出している様子。

ドンッ!

一升瓶をテーブルに置く伝助。

伝助「ほなっ、いっちょパァっとやりますかぁ!」

留守番をいい事に酒盛りを始める。

源左衛門が冷蔵庫から取り出してきたタッパーのふたを開ける。

中身は数の子の明太子和え。源左衛門手製のものらしい。

総右衛門はコンビニのレジ袋からするめや、柿ピーなどを出している。

伝助「総右衛門、コップもってきて」

総右衛門「かしこまりました」

と湯飲みを三つ用意する。

その湯飲みのなみなみと日本酒を注ぐ伝助。

3人が席に着く。

伝助「みなさん、持ちましたやろか?」

総右衛門と源左衛門が湯飲みを手にしたのを確認すると

伝助「満優様と心ちゃんと信代ちゃんとその他、愉快な仲間たちが帰ってきたら
おせちをいただきますんやけど、その前に僕らだけで前祝いと言いますか‥

ま、とりあえずっ、あ・はっぴぃぃにゅぅぅぅいやぁぁぁん!」

乾杯!

ごくごくと一気に酒を飲み干す3人。

伝助「ぷはぁぁぁ」

最高の笑顔。

総右衛門「んー、五臓六腑に染み渡るとはまさにこの事でございまするな」

お前ん中にあるんかいっ!

源左衛門「‥ん‥いい酒だな」

渋っ!

伝助「あ、わかる?源左衛門。今日はぁ、お正月と言う事もありましてぇ、
奮発いたしまして良い品買ってまいりましたっ!」

最高級吟醸酒なんたらかんたら‥とラベルに書いてある一升瓶を2人に見せる伝助。

総右衛門は『ひゅーひゅー!よっ日本一』と伝助を囃したて、源左衛門は微笑んでいる。

※ ここで、作品の途中ですが念のためにお伝えしておきます。

この3人はくまでもぬいぐるみです。3人と表記していますが正しくは3体です。

デフォルメされてても精霊だろうが付喪神だろうが、どー見てもどー考えても
ぬいぐるみですっ。

ぬいぐるみですってばっ!

作者と読者の事などおかまいなしにドンチャン騒ぎは続く…。


神社 人手が多く、境内も参道も混雑し、大変賑わっている。

通りには出店が立ち並び、心と満優は小さなマスコットキーホルダーを売っている屋台に入ると手にとって見ていた。

心「かわいい♪ねえねえ、満優姉ちゃん」

満優「ほんとですね。これは‥牛ですね」

手にしているのは牛のマスコットが付いたキーホルダー。牛が赤いマントを身に着けている可愛らしい物だった。

仁「それは干支‥十二支って言ってね、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥と1年に1体、12年でひとまわり。昔はこれで時間や方角なんかも表していたんだ」

満優「そうなのですか‥仁さんはよくご存知なのですね」

あまりに美しいその笑顔に思わず見とれてしまう仁。

ハッと気が付き

仁「い、いや‥その…縁起のいいもんだから」

と満優と心の分を買う。

仁「ほい、心」

心「ありがとう」

仁「姫さんも」

満優「ありがとうございます‥かわいい」

とても喜んでいる様子。

そんな3人を遠くから愛理たちが見ていた。

愛理はスーツ姿でバリッと決めている。

信代は鮮やかなライトグリーンの振袖姿。

孝太はビシッと紋付・袴に羽織姿。

愛理「あらぁ♪パッと見、夫婦と子供って感じ♪一家団欒、楽しいお正月ってね」

信代「仁さんったら楽しそうですよね‥どうします?今行くとなんか邪魔しちゃって
って思われちゃうかなぁ‥」

孝太「オーイ!仁くぅぅん!満優さぁぁん!こっころちゃあん!(大喜)」

さわやかな笑顔を見せながら、踏んで転ばないように袴の両すそをつまんで3人のもとへ走っていく孝太の後姿を見て

信代「‥なんて‥アレ?(呆)」

愛理「あの鈍感機関車マンっ(笑)」

その頃…。


福福・店内 あいかわらずのドンチャン騒ぎが続いており、源左衛門はカウンター席へ
移動して1人静かに飲んでいた。

ガシャーン!大きな物音がして、チラッと様子を見る。

伝助「なんやとぉ!コラっ総右衛門、もういっぺんぬかしてみぃ!」

かなり酔っている。

総右衛門「ですからっ、本当の事を申しただけでございまするっ」

こちらもそーとー酔っている。

伝助「そっれっがっ、気にいらんのじゃ!満優様のなぁ、満優様のお気持ちを考えたら‥
ふぇぐ‥うぐっ‥うぇぇん」

怒って泣いて‥。

総右衛門「若、またお泣きになられて。男(おのこ)たる者、面前で軽々しく涙を見せるは恥にございまするぞっ。それに、泣いたところで解決には至りませぬ‥」

伝助「もうええっ!お前の顔なんか2度と見とぉないっ!出て行きさらせっ!!」

物凄い剣幕で怒鳴る。

総右衛門はハッとなる‥哀しい目になっていた。

潤む目頭を抑えて福福を飛び出していった。

総右衛門に悪態をついてしまった伝助は、ふてくされて横になる。

源左衛門「伝‥」

静かに声をかけ、そっと伝助のそばに座る。

シュンとしている伝助。

伝助「総右衛門の‥あほ…」

目にいっぱい涙をためていた。

源左衛門「あれはお前の言いすぎだ‥」

呟く…伝助は意固地に黙っている。ケンカの原因は満優のことだった。
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