旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□第3話・2
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信代の部屋 食事が済み、知美親子の事が気になりつつ部屋へと帰ってきた信代。

どうも力を使おうとすると気分が悪くなり、愛理から『疲れてんじゃない?』と言われ、

後片付けの手伝いは、みんなが『いいよ』と引き受けてくれたので、
甘えることにして一足早く帰宅した。

アロマをする気分にもなれず、ピントがぼやけたままの自分がどうしても気になり、
狭いユニットバスへと向かう。

入り口でシャツもズボンも脱ぎ、下着も取ると、中に入った。

精神を集中させようとシャワーを浴びる信代。

レバーは水のまま。およそ10分ほど頭から水を浴び続ける。

ズキッと頭が痛む。

痛みをこらえながらシャワーをとめ、気を落ち着かせる。

深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す‥そして集中。

ポゥっと信代の体から、金色や銀色のオーラが帯状に湧き立つ。

目に見えるほどのオーラは、信代がその能力を最大限に発揮している時の印。

信代「風‥偽りの空蝉を裂け…風‥真実の囁きを運べ…」

そう呟いた。

だんだんと頭の中で、ずれたピントが合ってくる。

苦しげな表情の哲也‥これはすでに視たビジョン…心配する知美‥これも視た…

この先‥この先を視なくちゃ。

頭が痛む‥こめかみあたりが脈打つように感じ、痛む。

だが、信代はその痛みをこらえ、さらに集中する。

知美の泣き顔が視える‥何故?…厭らしい顔つきの男達‥獣のような男達の姿が
フラッシュのように現れては消える。

そして、暗闇の中、血の色をした花弁が舞った。

これは何?

続けて視えるもの‥悲しい目をした男の人‥この人は…そうだ、知美さんの
亡くなったご主人だ…占ったあの夜、知美さんのそばにいた光の珠…

心配で、そばにずっといたご主人‥あともう少し…もう少しだ‥この先を視なくちゃ…。

信代の気が高まり、金と銀に輝くオーラがさらに点へ伸びてゆく。

あ…あれは‥。

突然、頭部を殴りつけられるような痛みが信代を襲う。

たまらずユニットバスルームから出て、床にしゃがみこむ。

信代「くっ‥痛い…」

頭を抑え、こらえる。

でも、視えた。

確かに視た‥あの顔…最後に視えたあの顔は…

信代「ジャシン!」

ハッと壁に掛けてある鏡を見る。

鏡に映る信代の部屋‥その中に、知美の亡き夫の姿が見えた…。

悲しい目‥何かを訴えるようだ。

その目の訴えで、信代は知美の異変を察した。

突然、音を立てて鏡が割れる‥いや、割れると言うよりは粉々に砕かれたと言ったほうが正しいか…。

信代の中に熱い怒りが湧き起こる。

知美に何があったのかはわからない。

しかし、何かがあったのは間違いが無い。

しかも、それは巧妙に隠されている‥元凶はジャシン。

置いてあった黄色のジャージを急いで着ると、日下部荘へと向かう。

外は雨‥激しく信代の体を打ち付ける。

知美の下へと導く小さな光の珠‥それは知美の夫の魂…想い。

信代「ごめんなさい‥もう少し早く気付いていたら…」

ジャシンの妖力のせいなのか、封じられていた信代の能力。

それでも、なぜ気づくことが出来なかったのか、悔やんでも悔やみきれない。

噛み締めた唇から血が滲む。

その血を拭おうともせず、信代は雨の夜道を駆けてゆく。

小さな光が照らす道を懸命に。


公園 知美が襲われた痕跡が一切、消えている。

その公園内へ、光の珠が照らす夜道を駆け抜けて来た信代がたどり着いた。

辺りを伺うが何も感じない‥ジャシンが消し去った事だけは確かだった。

信代はまた走り出す。


日下部荘・知美の部屋の前

信代「すみませんっ!すみませんっ!知美さん、いますか!?」

強くドアをノックし、問うてみる。

応答はない‥ドアのノブに手をかけると鍵は掛かっていない。

勢いよくドアを開けて、部屋へと踏み込んだ。

信代「知美さん!?」

部屋の中には知美はもちろん、哲也の姿も見当たらない。

信代「ジャシン‥」

怒りがこもる声で名を呟き、雨降る夜の街を駆け出した。
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