旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□第4話・2
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都内 傷つきながらも走る牙愁。

まるで誰かの匂いを追っている様子。


都内 富野直子‥直子が足早に歩を進めている。

買い物の帰り道、近くに聞こえた激しい爆音や悲鳴に恐怖し、逃げだした。

幸い、何事にも巻き込まれず、無事に家の近所まで帰ってこれた。

直子「なんだったんだろう‥なんか怖かったなぁ。早く帰ろっと」

すると、突然目の前に現れる怪物‥ツクモ神・牙愁。

直子「きゃあああ!」

驚いて腰を抜かしてしまった直子の姿を見て、牙愁は大きな雄叫びをあげる。

直子に迫るっ!

一条のレーザー光線が牙愁を捉える。

鋼速ローダーのカウル部に装備されているレーザー砲で、牙愁を攻撃する仁。

愛理たちも駆けつける。

鋼速ローダーを降り、直子を守る信代と孝太。

戦闘態勢をとる仁と愛理。

牙愁は唸っている。

仁「信代ちゃん、孝太、そのこ頼んだぞ」

烈火を転精輪から抜く。

愛理「仁、行くわよぉぉぉ」

水流を手にし、仁とともに牙愁へと向かっていった。

愛理の放つ一撃!

牙愁の目を眩ませる。

続けざまに繰り出す仁の斬撃!

その間に信代に促され、この場から逃げていく直子‥牙愁は直子の姿を目で追い、吠えた。

愛理「な、なに?コイツ‥」

すがるような悲しい目をする牙愁‥その目に逃げて行く直子の姿が映っている。

仁「あのこになんかあるのか!?」

愛理「信代ちゃん、こっちきてぇ」

何かあると察した愛理は、すぐに信代を呼んだ。

その声が聞こえ、直子を逃がしていた信代が急いで愛理のもとへと駆けつける。

慌てて孝太も、愛理のもとへ行きかける‥その時。

孝太の行く手をさえぎるように宙におきるスパーク。

勇護が姿を現した。

驚き、しりもちをつく孝太。

勇護「ここにいたか、牙愁‥ふん、霊皇どもめ、どこどこまでも邪魔を」

苦々しく吐き捨てた。

仁「勇護っ」

身構える仁‥闘志が沸き立つ。

愛理「仁、ここは任せたわよ!わかってるわね!!」

仁「あぁ!」

その返事で愛理はじゅうぶんだった。

仁はもう迷っていない‥満優のために、最善の対処を必ずする。

たとえそのせいで自分が泣くことになろうとも。

そう確信する愛理。

孝太、信代とともに牙愁へと向かった。

勇護「くっ‥またきさまか。よほど死にたいらしいな」

暗夜を抜く‥

仁「うっせえ!なに企んでるか知んねえけどなぁ、ぜってぇお前の好きにはさせねえぞっ」

烈火を肩に担ぎ、戦闘態勢。

にらみ合う両者。


愛理たちは牙愁を取り囲む。

低く唸り、威嚇する牙愁。

愛理「信代ちゃん‥頼んだわよ」

そう言って、牙愁へと立ち向かう愛理。

孝太もあとに続く。

愛理「孝太君、パンチっ」

孝太「え?は、はいっ」

孝太のパンチ!

効かなかった‥反撃する牙愁。

孝太の胸ぐらを掴み、放り投げる。

孝太「うわぁぁぁ」

ゴミ置き場に突っ込む孝太‥その隙を突いて、愛理は牙愁の背後に回りこみ、射撃。

至近距離からの射撃に弱り、両膝をついてガックリと力なく座り込む牙愁。

愛理は水流の銃床‥ストックで牙愁を抑え付け

愛理「信代ちゃん!」

愛理の作戦‥愛理が牙愁の動きを封じ、そうした所を信代の能力でこのツクモ神の

「想い」を探る‥孝太はその作戦の要‥おとりっ♪

ゴミだらけになって立ち上がる孝太。

牙愁のそばへ近づくと、信代は手をかざす‥ほのかにオーラが立ち昇った。

信代の脳裏に浮かぶ数々のビジョン‥


見えない壁の向こう‥キラキラした目でボクを見る女の子。

その後ろで「いくらだ」とか言ってジロジロ、ボクを見るおじさん。

キミはそのおじさんをお父さんと呼んでいたね。

突然、その見えない壁の中から出されたボクは、紙切れ数枚と交換に

キミが乗る車へと乗せられた。

見知らぬうちに連れて行かれ、やがてキミはボクをモモと呼ぶようになり、

嬉しそうに笑う‥

頭をなでてくれたり、抱きしめてくれたり‥あったかい。

それから長い時を過ごしたなぁ‥

晴れた日、笑った‥雨の日、泣いた‥いろんなことがいっぱいあった。

ケンカしたり、ラッキーだったり‥。

そうそう、散歩の途中にデッカイ男の子がキミをいじめた時は、

ボクそいつに向かって力いっぱい吠えたよね‥ねぇ、キミは憶えてる?

その時の男の子に負けないくらいに大きくなったキミは、

あまり一緒におさんぽしてくれなくなったんだ…

あとはお母さんがいっしょ‥でもね、怒ってばっかりだからつまんない。

いっしょにおさんぽしてくれないかなぁ…。

それから‥キミはおっきくてぱんぱんにふくれたカバンを手にいなくなっちゃった‥

たまぁに帰ってきても、あっちゃんとかなつめくんだとかお友達に会いに行ってしまう‥

めんどくさそうにカリカリしたご飯をボクにくれたけど‥遊んでほしかったんだ。

ボク‥キミと遊びたかったんだよ。

この頃はぜんぜん顔も見れなくなったし‥

それでも、ボクは憶えてる。

今まですごしてきた楽しかった日を。

大好きなキミ‥ボクのともだち‥。

ある日ね、カラダが動かなくなったんだ‥キミのお母さんやお父さんはボクを見て

「歳だからな」とか「もうダメね」とか言ってる。

としって何?

ダメってなんだろう?

でも‥動かないカラダ‥息も苦しい。

やがて、車に乗せられて‥白い建物に連れて行かれた‥カラダをごそごそと

触られて、なんか細くて尖ったのをお尻に刺されたんだ‥痛かった。

けれど、おうちに帰っても息苦しいのはなおらない‥頭をあげるのもやっとだ。

そんな時ね、思うんだ‥キミにあいたい…あいたいなぁ。

また車に乗せられて、こんどは遠い場所につれてこられた。

そこはね、悲しい目をしたボクがたくさんいたよ。

キミにあいに行きたいけど‥もう動けないや。

何日がたったんだろう‥さいきんご飯をくれていたおじさんが、ボクを

抱きかかえて小さな部屋へと連れて行く‥壁ばっかりの部屋だなぁ。

まぁ、昔入っていた部屋みたいに見えない壁はなかったけど。

その部屋の1番奥に寝さされた。

あとからボクみたいな仲間がたくさんこの部屋に入ってきてね‥

せまい‥なんかまっくらだし…。

あ、そうか‥ボク、死ぬんだぁ…キミにあいたかった‥直子ちゃん‥キミに。


そこで信代が見るビジョンは途切れた。

信代は胸が苦しかった。

モモの最後の瞬間の‥そして、ともに逝った多くの犬や猫たちの無念や苦しみ

そして悲しみがつたわってきて、胸が締め付けられる。

信代「ゴメンね‥苦しかったね‥悔しかったね‥悲しかったんだよね…」

鎮めるように囁いた。

ふたたび脳裏に浮かぶビジョン‥


あちらこちらと走る放電‥不気味に光るエネルギーの塊。

檻のすみっこに落ちていた薄汚れたリボン‥家に来た当事、

直子がモモの首輪につけたリボン。

リボンのそばにそのエネルギーの塊は近寄り、はじけたかと思うと、

ボクはなぜか立っていた。

目の前には黒くて、カッコいいのか変ななのかわからない服を着ている

男の人が立っている。

あっ、あれ‥前に見たことがある‥そうだ、剣ってやつだ。

この男の人、ゲームに出てくる人みたいな姿をしてる。

でも‥その男の人は泣いていた。

ボクの鼻を優しくなでながら泣くんだよ。

「辛かったろう‥悔しかっただろう」って。

そしてボクに言った‥ボクの仲間を助けてやれって。

ボクは死んだけど、ボクの想いがカラダをもってツクモ神になったんだって。

すごいや。

それで、新しいボクの名前は牙愁‥なんか強そうな名前だなぁ。

これでもう1度キミにあえるぞっ。

けど、その前にボクにはやらなきゃいけないことが出来た‥

仲間を助けること‥捨てた人間のことなんてどうでもいい。

悲しい目をした仲間達をボクは助け出したかった。

見えない壁の小さな部屋も、壁ばっかりのせまい部屋も、

どっちも悲しい部屋だから‥。

優しい男の人と仲間を助け、今日も街まできてみたら‥

ん?

くんくん‥キミの匂いがする‥あいたかったキミの匂い。

直子ちゃんの匂いだ!

この匂いを辿っていこう、きっとキミにあえる‥キミは待っててくれる。

また‥あったかく抱いてくれる…。
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