旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□桃の節句編
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「霊皇戦隊セイレンジャー」
「雛祭りなんですって♪」

2009年3月3日

綺麗に飾り付けられ、並んでいる雛人形。

五人囃子に三人官女、お内裏様にお雛様‥
パンダに犬が正座をして‥?

パンダに犬?

なんじゃそりゃあああぁぁぁ!!

愛理「ちょっとあんたたち、
なにやってんのよっ。

壊したりしたら承知しないからね!
いーからとっとと降りなさいっ‥それにしても源左衛門、どこいったんだろう」

伝助「なんや、せっかく気ぃよぉしてたのに‥」

ふくれっ面で渋々ひな壇から降りる。

総右衛門「それにしても何故に代金を支払った信代殿ではなく、
愛理殿に口うるさく言われなければなりませぬのかっ」

源左衛門はどこかに出かけているらしく、姿は見えない。

愛理「にしてもさ、よくこんなの買ったもんよね。

しかもポンって現金払い‥現金よっ。

知らなかったわ‥あの子がこんなにセレブだったなんて」

心「信代姉ちゃんすごいね」

飾られている雛人形を嬉しそうに見ている心。

少し古めかしいこの雛人形‥年代物のようで、一見地味なのだがようくみると
なかなかどうして、細かく丁寧な装飾‥さぞ名のある職人が精魂込めて作り上げたという
こころに響く逸品だ

骨董屋で買い求めたものなのだが、金額もひじょうに高価だった。

最低でも500万はくだらない代物。

伝助「そー言えば善さん、白酒が好きやってゆーてはったなぁ」

総右衛門「まことに‥」

遠い目をしながら、写真立てに収まっている老人を見ていた。

伝助がいきなり「この雛人形を買ぉてくれっ」と言ったのは昨日のことだった‥。


前日3月2日

昨日の激闘‥侠真や怨・魂力の嵐を起こしたと思われる真忍の出現に傷ついた満優。

また、魂力回復が万全ではなかったために苦戦を強いられた仁たちだったが、
1から鍛えなおしてさらなる力の向上を図ろうとみなで決意していたのだが‥。

信代「総右衛門ちゃーん‥おかしいなぁ‥どこいったんだろ」

孝太も信代に付き合って捜している。

愛理「ねぇえ、源左衛門!おっかしいな、さっきまでいたと思ったのに‥」

信代「愛理さん、源ちゃんもいないんですか?」

愛理「そうなのよ。せっかく無農薬の美味しい人参を手に入れたからさ、
あげようと思ったんだけど」

孝太「総右衛門くんもなんですよ‥霊卵のこととか、
もう1回ちゃんと聞いておこうと思って‥どこにいったんだろ?」

仁「おーい‥伝助‥あれぇ?」

霊皇の宿から出てきた仁はキョロキョロと。

愛理「えー、伝助も?」

仁「え?あぁそうなんだ、姫さんが捜してたから‥

ん?も‥ってことは総じいも源さんもいないの」

信代「そうなんですよ‥3人ともいなくなっちゃった」

孝太「どこに‥」

仁「俺の鋼速ローダーの修理もまだ終わってねえのに‥あっ♪

伝えまフォン持ってんだ。そうだそうだ、これ使やぁいいんだ」

転精輪を繋ごうとする。

愛理「仁、それより姫ちゃんの様子はどうなの」

仁「え?あぁ、霊皇の宿で調べ物中‥口にはださねえけど‥」

孝太「自分のともだちが次々と敵として現れたら‥辛いですよね。

満優さん‥なんかこう‥気分転換なことがあれば」

信代「明日‥そうだ、雛祭りでしょ♪

パーティーでもして気晴らしできたらですね」

愛理「パーティーか‥いいわね、それ。

心ちゃんも喜ぶだろうし」

仁「おっ♪いいねぇ、料理なら任しとけって」

孝太「いいですね、賛成です」

信代「だったら私、満優さんに言ってきますね」

愛理「あっ、信代ちゃん私もいっしょに行くっ。

姫ちゃん、遠慮しぃだからちょっとごーいん気味に言わなきゃ♪
仁、伝助はいいわよ。

女同士‥がーるずとーくって言うのしてくるからぁ」

信代「それいいですねぇ♪」

信代と愛理は霊皇の宿に向かった。

孝太「ガールズトークですか‥」

仁「どーせ儲け話になるだろうけど‥孝太、ラーメン食うか」

孝太「はい、ご馳走になろうかな♪」

仁「金払ってね」

厨房へ入り、ラーメンを作り始めた。

孝太「払う‥は、はい」

さみしーい空気が漂っていた。


それは2月の終わりごろだったか‥伝助・総右衛門・源左衛門は
親しくなった人がいた。

その人のところに行くのが日課となっていたようだ。

そして今日‥3月2日。

昼前ののんびりとした時間。

表通りのビルたちとは似合わないような古い一戸建ての家。

小さいながらも庭があり、縁側が心地よさげに広がっている。

その縁側で日向ぼっこをしている1人の老人。

名を「松前 善蔵(まつまえ ぜんぞう73歳)」と言った。

訳あって独身を貫き、年老いた今も1人暮らし。

伝助「善さん♪」

声をかけながら伝助たちが顔を見せる。

善蔵「おぉ、伝助どん‥総さんに源さんも来たか。ま、おあがり」

穏やかな口調で招き入れる‥とても嬉しそうだ。

伝助「ほな、失礼しまんにゃわっ」

総右衛門「これ、お土産にござりまする」

源左衛門「茶菓子にとおもってな‥明日は白酒を買ってくる」

芋ようかんを手渡す。

伝助「芋長のやでっ♪」

善蔵「いもちょう‥あの芋長の。

それは楽しみな‥でも、あんまり気を使わんでええよ」

とても喜んでいる。

源左衛門「こちらも楽しんでる‥気にするな。それより今日は随分と良い天気だな」

善蔵「もう春じゃな‥気持ちいい日和じゃ。さて‥今、茶をいれるでな」

立ち上がろうとする。

総右衛門「あぁ、そのままにけっこうでございまする。

かって知ったるなんとやらで‥」

急須を手に、お茶の用意をし電気ポットから湯を注いでいた。

伝助「おせんべいちょうだいなぁ♪」

言うが早いかでパリポリ。

総右衛門「若、お行儀が悪ぅございまするぞっ」

聞く耳持たずにパリポリポリ。

善蔵「ささ、もっとお食べ‥」

たくさんお菓子を出してくれる。

独身の善蔵は家族がいない‥兄は善蔵の幼い時に戦地で死に、
姉もいたがすでに他界した。

親戚縁者といえば姉の子がニューヨークに移住しているくらいか‥もう何年も連絡は無い。

ほかはみな、どこにいるものか‥まったくわからないほどだった。

子も孫もいない善蔵にとって、伝助たちは奇妙なともだち‥孫のように思っている‥

奇妙な‥だが。

善蔵「白酒か‥そう言えば明日は雛祭りじゃったな」

源左衛門「んっ」

伝助「なんや善さん、白酒好きやゆーて‥それだけやのぉて、じいちゃんやのに
お雛さん気にしとんの?」

総右衛門はくんだお茶をみなにわたしている。

善蔵はお茶を受け取ると、ズズッとすすり飲むと、

善蔵「いや‥の‥」

と、遠い目をした。

その目線を追って、しげしげと見ている伝助。

総右衛門「これ若っ、おやめなされっ」

伝助「せやけど、気になるやんっ」

源左衛門「何か思い出でもあるのだろう‥な、善さん」

善蔵「ふふ‥そうじゃなぁ‥思い出か。

あれはまだわしが幼い頃のことじゃった‥昭和19年。

9歳だったわしはの、激しくなる戦火から逃れるために親戚が住む村へと‥

疎開って知ってるかの」

伝助「あぁ!めちゃめゃすっきりな‥」

総右衛門「それは‥爽快でございまするっ」

伝助「オラ、東京さいぐだ、東京はすんごい‥」

総右衛門「それは都会にてございまする」

伝助「ぶぉおぉぉぉ〜♪」

総右衛門「それはほら貝にてっ!若、もはや『かい』しかおうてはおりませぬっ」

源左衛門「戦争の被害を免れるために、子供たちが被害の少ない地方へと避難することだ」

正座をしてお茶を飲んでいる。

善蔵「ははは、そうじゃ。疎開したのは良かったが、なにせわしは体が弱くての。

田舎の悪ガキどもによくいじめられた。

毎日毎日‥女の腐ったような奴じゃとか、そんなことでお国のために働けるのか‥

罵られてな‥今となっては馬鹿らしいことじゃが、当時はもう悔しゅうて。

辛い思いをしたもんじゃ」

伝助「女の腐ったのって‥ゾンビかっ」

腹を立てている。

総右衛門「まこと、女性に失礼でござるっ」

源左衛門「男尊女卑‥バカな考えだな」

善蔵「あれは‥疎開して半年くらいした頃だったかのぅ‥いつものように
いじめられたわしは、悪ガキどもに追いかけられてな。

叔母さんちの土蔵の中に逃げ込んだんじゃ」
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