旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□ホワイトデー編
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「霊皇戦隊セイレンジャー」
「告白‥遠き日の幸せ」

精霊たちの世界‥

豊かな森、たおやかな泉‥そばでは色とりどりの花々が咲き喜んでいる。

小鳥が歌い、命たちが舞うように飛び跳ねている風景‥

まだ、精霊の世が光にあふれ、美しい城が優雅にそのたたずまいを見せていた頃。


伝助が野原を駆け回っている。

伝助「ひゃーはっはっはっ」

どうやら、すこぶるご機嫌のよう。

頭は手ぬぐいで覆面をし、背中にはお手製の刀のおもちゃを背負っていた。

総右衛門「みつけましたぞ、若!お覚悟を!!」

伝助と同じような格好をした総右衛門が折り紙で作った手裏剣を投げる。

伝助「なんのっ、忍法フワっとタオルの術っ」

そう叫ぶと天高く跳びあがり、手裏剣を避ける。

空中で手にしているタオルを手と足で凧のように張り、
パラシュートのようにふわふわと落下。

総右衛門「やややっ、なんとっ」

伝助「ふはははは、ひっかかりおったなこの小童め!やってしまえ、源左衛門!」

伝助に気をとられていた総右衛門の足下の木の葉が突如に舞い、源左衛門が姿を現した。

源左衛門「獲った‥」

おもちゃのお手製短刀の切っ先を総右衛門の喉元に突きつける。

総右衛門「ま、まいったでござる」

観念したようだ。

伝助「ひゃーはっはっはっはっはっ!わしに刃向かうなぞ5千年早いわっ

この、たわけ者の犬のおまわりさんが! ひゃーはっはっはっはっはっ!」

源左衛門「で、伝‥」

総右衛門「若はなにゆえ、この遊びになりますると、

かように悪役っぽくなるのでしょうかな」

源左衛門「んっ‥わからぬ」

伝助「ひゃーはっはっはっはっはっ! ひゃーはっはっはっはっはっ!」

嬉しそうで可愛くて、ちょっと悪そうな笑い声がこだましていた。

勇護「伝助、伝助」

遠くから伝助を捜す勇護の声が聞こえる。

伝助「ひゃー…あっ、勇護様ここですぅ」

その声を聞き、こちらへと勇護がやってきた。

勇護「ここにいたのか‥おぉ、総右衛門と源左衛門も。お前達はあいかわらず仲がいいな。
遊んでいたのか」

3人を微笑んで見ている。

伝助「そうです♪」

勇護「邪魔して悪かったな」

総右衛門「いえいえ、若の策によりましてそれがしの負けにござりまする」

勇護「総右衛門が策で負けたか。ははは、軍師のお前も伝助には勝てぬか」

源左衛門「伝が敵を惹き付け、俺が死角より奇襲‥まぁ、単純なことでございます」

勇護「そうか‥なるほど。

総右衛門ほどの軍師相手には、かえって単純な手のほうが
通じやすいと思っての判断だろうな‥

それに、その策を務めるのが源左衛門ほどの手錬ならば、よりいっそうに確実性がある‥見事だ、伝助」

笑顔の勇護。

伝助「おおきにでおまっ♪」

とても嬉しそう。

源左衛門「それで、伝になにか用だったのでは」

勇護「あぁ、そうだ。伝助、満優がどこにいるか知らぬか」

伝助「あぁ、満優様なら人間の世界に用事があると、お出かけにならはりましたけど」

勇護「人の世に?

なにをしに行ったのだろう‥して、ついていった者は」

総右衛門「それならば‥珍平、君兵衛、餡子‥この3名がお供をいたしておりする」

勇護「そうか‥しかし心配だな‥いや、珍平も君兵衛も餡子もよくやってはくれるが‥
近頃の人の世は危険が多いからな」

伝助「火・水・土・風‥霊皇はんを捜すんやゆーて、お行きになられましたで」

勇護「他の霊皇か‥光は満優、闇は俺‥

しかし、残りの霊皇は何故、人の世から選ばれなくてはならないのだ。

今の人の世に、霊皇たる者達がいるとも思えんが」

満優「そんなことはありませんよ、勇護様」

振り向くと、人間世界から帰ってきた満優がそこにいた。

勇護「満優、帰ってきていたのか‥

黙って行っては心配するだろう、あまり人間世界へは行くな。

今の人の世にあるのは醜い欲ばかり‥我々の善き友だった人間は大いなる過去のもの‥
今では危うい者達ばかりだ。

満優になにかあったらどうするのだ?
俺は誰を愛すればいい‥満優だけを愛すると決めたこの俺は、誰のそばにいればいいのだ。

満優‥満優がいればこそ、俺は生きていけるのだぞ」

そっと満優を抱きしめる勇護‥その背中に満優は腕を回す。

満優「勇護様‥心配させてごめんなさい。

でも‥見捨てるなどできませぬ‥精霊の世も人の世も、みな手を取り合ってゆかねば。

見捨てることは簡単です‥でも、それではいけないと思うのです‥

待つことも、許すことも必要‥大切なことだと私は思うの。

必ず人は思い出してくれる‥ともに歌い、笑い‥ともに走り、泣いた日々を。

今はたとえ、忘却の彼方へと追いやってしまった思い出だけれど、
ともに歩む道を、きっとその胸に取り戻す日が来る。

だから、4体の守護せし元素精霊は人の世に旅立ったのでしょう‥ね、勇護様」

勇護の胸に顔を預け、満優はそう言った。

勇護「満優‥心美しき人よ…」

優しい強さで満優の細い身体を包むように抱く。

源左衛門は、そんな満優と勇護を食い入るように見詰める伝助と総右衛門の
首根っこを掴まえて、引きずるようにして、どこかへと歩いていった。

柔らかな風が頬を撫でる中、満優と勇護は互いの唇を‥重ねた。


精霊の森

源左衛門がまだ抵抗している伝助と総右衛門を引きずって歩いている。

源左衛門「もうこのへんでいいか」

2人を掴まえていた手を放した。

伝助「もぉ、なにすんねんな源左衛門。せっかく、ええとこやったのにぃ」

総右衛門「さようでござるっ。あ、あれはまぎれもなく、せ、せ、せっぷんの
間合いにてござったものを‥くぅぅ、もやもやにてございまするっ」

伝助「そうやそうや!僕らかて、せっぷんを見る権利はあるんやさかい、
ちゃんと見せてくれたってええやないか!!

せっぷんをみる権利を僕らにぃ!

おにんぎょさんかて、チュウくらいみたいんですっ!」

源左衛門は騒ぐ2人の目の前で、鋭く光る人参型の刀をチラッと抜いた。

伝助「総右衛門、それはあかん。

なんぼなんでも、お下品すぎる‥僕らおにんぎょさんは、綺麗なor可愛いお姉さんや
ちびっ子たちのために夢を見てもらわなあかん立場なんやから。

今のはしっかり謝罪してもらわんとあきまへんなっ。

ね、源左衛門♪」

変わり身早いっ!

総右衛門「若‥くぅぅぅぅぅ」

さめざめと泣く総右衛門‥

まぁ‥なんと言うか‥がんばれっ。

そんな風にふざけていると、満優とともに出かけていた
70cm大のパンダのぬいぐるみ「珍平(ちんぺい)」

30cm大のパンダのぬいぐるみで珍平の妹「餡子(あんこ)」の
兄妹がやってきた。

いっしょに歩いているのは
精霊族・次期将軍である侠真のお側役「ごん」と「ねん」。

ごんは、金色の豚の貯金箱で、ぶひーと高い声で鳴く時は可愛い声なのだが、
喋ると低いおっちゃん的な声になる。

ねんの方はといえば、金色の牛の貯金箱で、うんもと低い声で鳴く。

鳴き声以外は一切喋らないが、なぜかごんと侠真には、うんもですべて通じている。

珍平「おぉ、誰かと思ぉたら伝助どんに総右衛門どん、源左衛門どんやねぇか。
こんなところで何しとぉとや?」

伝助「おぅ珍平♪いなや、総右衛門のエロエロさ加減をビシッと叱っとったんや」

餡子「やんだぁ、総右衛門さんってば、そげにいやらしいこと考えてるだか?」

総右衛門「くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

ごん「ぶひー、ぶひぶひー」

可愛らしい声で何か言っている。

総右衛門「おぉ!ごん殿、そなたは信じてくれまするか」

ごん「このエロ河童犬」

おやじ声でズバッと斬るごん。

ねん「うんもんもんも」

ごん「エロ河童おじじ犬と言っているぞ‥ぶっひぶひぶひ♪」

ねん「うんもんもんも♪」

総右衛門「お、おのれぇぇぇ、たたっ斬ってくれるっ」

ぶち切れた総右衛門とごんとねんは追いかけっこをはじめた。

気にせず伝助たちは話しを続ける。

伝助「満優様について行ってきたんやろ?ごくろうはんっ。

珍平「いやいや、なんも苦労はなかと。

じゃっどん、人間世界はごみごみして好きになれん。

満優様もなんぼ霊皇を捜すためじゃっち、ゆーてもよく行きなさるわい」

源左衛門「4体の元素精霊があちらにいる以上、しかたもないがな‥

それに、あんなところでも俺たちの生まれた場所だ」

珍平「ほーやな‥生まれたとこじゃからしょうがなかたい‥まっこつ、しょうがなか」

逃げ回っていたごんが立ち止まり

ごん「ぶひー、ぶひぶひー♪」

と、可愛く鳴いた。

伝助「ん?なんや、ごんもそない思うか♪」

ごん「違う、腹減ったんじゃ」

伝助「おのれはややこいんじゃあぁぁぁ、喋れるんなら喋らんかいっ。

しゃあぁぁぁぁぁ」

伝助も総右衛門と、ごん&ねんを追いかけるのに加わった。

餡子「それよりもだなや、あんちゃん‥オラと君兵衛の仲さ、えぇ加減許してくれろ」

珍平「また、そげんこつ話か‥絶対に許さん。

おめぇとあの小僧を一緒にはさせんけんね」

餡子「なして?なしてダメなんね、なしてあんちゃは、あん人を嫌うんねっ」

珍平「あいつがライオンのぬいぐるみやからたい。わしゃ、ライオンは好かん」

餡子「そんなわけのわからん答えがあるもんね‥ひどい、ひどいよ‥あんちゃん。

あん人はそこらへんにおるチンピラライオンじゃねぇ。

優すぅいライオンだべさ。

なんもわからんのに、あん人を決めつけねぇでけろっ」

もめる2人を気にしてか、伝助は立ち止まり

伝助「もぉ2人とも、ケンカはやめときぃや。餡子もにいちゃんに、
そないヤイヤイ言わんでもええと思うし、珍平も珍平でな、
餡子の話ももっとちゃんと聞いてやらなあかんで」

ごん「ぶひー、ぶひぶひー」

ねん「うもー、んもんもー」

総右衛門「ほれほれ、ごん殿もねん殿も、この通り心配されておられますゆえ」

ごん「さっきから腹減ったって言うとるだろがっ」

ねん「んもんもんもんも♪」

伝助・総右衛門「おのれらはぁぁぁ」

鬼の形相で2人はまた、全速で逃げる金色の豚と牛を追っかけた。

源左衛門「伝も総も、もうやめておけ」

伝助「源左衛門、とめんといておくれやっしゃ!

あいつら、豚足とばら肉とサーロインとカルビにしてやらんと気がすまへんっ」

総右衛門「さようにござりまするっ。ついでにミミガーとテールにもわけてやりまするっ」

ごん「ぶっひぶひぶひ♪」

ねん「うんもんもんも♪」

伝助「しゃあぁぁぁぁぁ」

総右衛門「きぃぃぃぃぃ」

ヒートアップする伝助と総右衛門、からかうごんとねん。

源左衛門「まったく‥どっちもいい加減にしておけよ」
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