旧 霊皇戦隊セイレンジャー 2

□第11話・2
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校内

今は授業中、体育の授業も体育館で行われているらしく、校庭はひっそりとしている。

命在は校舎の裏へと歩を進め、何かを探していた。

命在「ここもハズレかい‥いいや、そんなはずないね。きっと‥」

空気を切り裂く気配を感じ、命在は軽く跳躍してそれを避けた。

命在が避けた後の地が大きく弾け、石は割れて粉々に‥

命在「これは!!」

『フフフフフ‥やっとみつけたぞ‥隠れることと逃げ足だけがお前のとりえよのぅ』

空間がポッカリ開いて、魔恐が姿を見せた。

命在「魔恐さまっ」

魔恐「ようも私を裏切って、おめおめと生きながらえておる‥

我が力を授けてやったものを、この腑抜けめが! ええい、目障りじゃ

私自らの手で引導をわたしてくれる。命在、覚悟いたせ」

命在「魔恐さま、それは違います!」

魔恐「問答無用じゃ!!」

紊乱を振るって命在を襲う! サッと避けて身構える命在。

その背後から

『命在‥』

ハッとして振り向くと、残哀を抜いたカルマの姿。

命在「アンタも討手に使われたのかいっ」

トンッと地を蹴って校舎の壁へ、さらにその壁を蹴って塀の上へ移動する。

命在を追って壁を、塀を砕く紊乱。

命在は駆けて攻撃をかわしていく。

魔恐「チョロチョロと!」

カルマは剣を構えるが、そのままで微動だにしない。

命在「魔恐さまっ、あたしの話を‥」

拒むように鞭が唸る。

魔恐「黙れ、申し開きはその命で行うがいい!!」

紊乱が命在の息の根をとめんと走る、寸前で避ける命在。

が、避けたところで足下がふらつき、倒れてしまう。

鞭が校舎の壁を破壊して、学校内が騒ぎ始めた。

命在「チッ、こんな時に あたしの身体ときたら‥情けないったらありゃあしない」

身体から力が抜けていくのを止められず、命在は自分の命が長く無い事を悟っていた。

その前に、何かを成さんとここまで来たものの、魔恐との唐突な再会によって
さらに力を消耗してしまった。

瓦礫の中に閉じ込められて、身動きが取れない命在。

魔恐「フフ、彗星もその逃げ足をとめられて堕ちてしまえば、ただの薄汚い屑よの」

鞭を手にして近づいてくる‥が、立ち止まって
振り返らぬまま、

魔恐「カルマ、お前は何をするためにここにいる?

命在を始末する気があるのか」

剣を持ったまま立ち尽くすカルマに、言葉を投げかける。

カルマ「魔恐様‥始末してよろしいのですか、ほんとうに」

魔恐「フン、何を今さら‥」

紊乱の柄を握り締める魔恐。

カルマ「目の前で無様にもがき続ける命在‥したが、命在の進む明日の先に、
もしかしたなら魔恐様の明日が見えるのかも知れません。

それを‥それを待たずに、我らの手で握りつぶして よろしいのですか。

それは魔恐様にとって‥」

魔恐「うるさい! 野良猫に明日などいらぬ!!

彗星ならば輝いておられもしようが、自らその力を投げ捨てて
私を裏切ったのは こやつじゃ!!

そのようなものに明日などいらぬ‥

暗く、湿った土の中で、己が浅はかな考えを悔やみ続けるがいい‥

2度と出られぬ、墓標の下の土の中で」

紊乱を高々と振り上げて、いっきに降ろす魔恐。

『命あるもの、誰にも明日はある!』

紊乱を受け止める人参刀!

人参武装・きゃろっとを装着した源左衛門が魔恐の前に立ちはだかった。

カルマ「現れたか、源左衛門」

『源左衛門だけではない!』

その横に降り立つ凛雫。

凛雫「真忍さま!!」

魔恐「凛雫! きさまぁぁぁ!」

怒りをクッキリと顔に浮かべて、魔恐は鞭を振るう。

凛雫は鞭を久涙で払い、

凛雫「真忍さま、私は貴女をお救いにまいりました。

侠真様も、貴女のためにお力を尽くしておられます‥それは満優様も、勇護様も」

魔恐「ええい、戯言ばかり口にいたすな!!」

柄から伸びる鋭い棘をかざして、魔恐は凛雫と切り結ぶ。

破壊された『伝助式がっちり守りますんやわ・セキュリティーシステム』だが
命在の出現に反応して、霊皇戦隊に信号を送っていたのだ。

まずは近くにいた源左衛門と凛雫が急行し‥魔恐とカルマに対面する。

源左衛門「凛雫、すぐに満優様たちも来る。あまり無茶はするなよ」

たとえそうだとわかっていても‥

目の前に魔恐がいる限り、凛雫の はやる気は抑えられない。

凛雫「真忍さま!」

跳躍して魔恐の攻撃をかわす凛雫。

カルマもようやく残哀を振って、源左衛門と戦った。

カルマ「源左衛門! 望むことがあるならば戦え!!」

源左衛門はきゃろっとの装甲で残哀を撥ねて、身体を捻ると強力な蹴りを打ち込む。

カルマは堪えてさらに斬りかかり、源左衛門も人参刀で応戦。

火花を散らす剣戟!

凛雫と魔恐、源左衛門とカルマの戦いが続く中、命在はようやく瓦礫から這い出てきた。

命在「うぅぅ‥う、うさぎ‥魔恐様‥」

おぼつかない足下で立ち上がり、戦闘が繰り広げられる場所へと進み出る。

凛雫「あれは‥」

魔恐「凛雫!」

鋭い突きで胸を貫かんとするが、凛雫は刹那で避けた。

魔恐「お前がまだ、私の目の前にいることが許せん!」

凛雫「真忍様‥少々手荒ぅいきますが、許されよっ!!」

蹴りや突きを繰り出して、猛る魔恐をとめようとする凛雫。


その頃‥


鋼破ローダーに乗った侠真が街を疾走している。

肩にごん&ねんの姿も。

侠真「凛雫、無茶はすんなよ」

胸の内でそう呟いて、先を急ぐためにアクセルをさらに入れる。

ピシっ‥急停車する鋼破ローダー。

サイドミラーがひび割れていた。

ごん「ぶ、ぶひぶっひ?」

『そう簡単に割れないように加工しているのに』と言っている。

ねん「んももっ」

『これはっ』

侠真「凛雫‥真忍‥2人とも、俺が行くまで!!」

グッと唇をかんで、アクセルを絞って ふたたび走り始める。


仁、愛理、孝太、信代、満優、勇護‥鋼速ローダーに乗って先を急ぐ。

しかし‥前を走る軽自動車が急停車したため、慌てて仁たちも停車した。

勇護「なんだっ?」

仁「わからねえ、追い越そうとしたら いきなり‥」

血相を変えて車から降りてくる若い女性‥

手にしていたジュースの空き缶を仁に投げつけた。

その缶は仁の額に当たりかけるが、振り払われて道路に転がり、音を響かせる。

仁「なにすんだよ、あぶねえなっ」

女性は『ひとでなし!!』と仁の顔を見て罵った。

愛理「はぁ? なにいってんの、アンタ」

詰め寄ろうとするが、気が付けば辺りに人だかりが出来て、
あっという間に集団と化していた。

『コイツ、爆破犯だぜ』『ってゆーか、コイツら、テロリストだろ』

『堂々と走ってんじゃねえよ』『とっとと逮捕すりゃあいいんだ』

『死んじまえ!』『俺たちで、やっちまおうぜ!!』集団は徐々に興奮状態となってきている。

孝太「ちょ、ちょっと待ってください! な、なんか危ない雰囲気ですよ」

信代「この人たち、なにを言ってるの‥‥ダメ、心が乱れすぎていて視えない!

いいえ、まだなにかある‥これは‥この感じは、ジャシンの力!!」

愛理「またあの変態含み笑い男っ!?」

満優「そうとなれば、なにがあるのか油断できません‥早くここから立ち去りましょう」

勇護「そのほうがよさそうだな。

このまま何か起こっても、俺たちはこの人間達に手は出せん!」

興奮しては、押してくる集団にもまれながら、勇護は大声で言った。

『逃がすな!』『ぶっ殺せ!!』もはや集団は暴徒と化している。

仁「そうだ!」

迫る者達を押し退けて、鋼速ローダにまたがると、パネルのいちばん端のボタンを押した。

ボンっ! 仁の鋼速ローダーの車体の下から黒と白の煙が大量に出る。

勇護「な、なにをしているっ、仁!?」

仁「いやっ、伝助があぶなくなったらこのボタンを押せってこの前言ってたから」

満優「そういえば、脱出用の機能を付け加えたと言ってましたね」

愛理「なんにしても、ちょーどよかったじゃないっ、みんな行くわよ!!」

信代「前へ進めないようですから、いったん下がって‥」

孝太「別ルートで急ぎましょう!!」

黒白の煙に巻かれて戸惑う人間達。

その隙に各 鋼速ローダーに全員乗ると、すぐにその場から走り去る。

仁たちは、背後で自分たちに投げつけられる怒声を浴びていた。


あゆみの通う小学校

校舎内の騒ぎなど関係無しに、魔恐は凛雫を抹殺せんと薔薇水晶の鞭・紊乱を振るう。

凛雫は鞭をかわして飛び跳ね、崩れた壁を蹴って魔恐へと突進する。

凛雫「でぇやぁぁぁ」

久涙を突き出して放つ強烈な一撃!

その一撃を防ぐ悩螺の爪。

凛雫「おまえ!! そこをどけっ!」

命在「魔恐様は あたしが守るのさ!」

火花を散らす流星と彗星‥凛雫と命在は互いに力を込めて攻撃する。

凛雫「力不足がのこのこと戦場に出るな!」

命在の力の無さを察して、凛雫は叫ぶ。

命在「ハンっ、力が足りないのは百も承知さ!

たとえそうでも、あたしにはやらなきゃいけないことがあるんでねっ!!」


回想


魔恐「死ぬのは嫌ぁぁぁ!!」

膨れ上がる魔恐の怨・魂力‥魔恐の前へと瞬時に駆けつけた命在の気と交じり合い、
そこに満優たちの魂力が重なり合って共鳴を起こす魂‥。

命在「な、なんだ‥これは!?」

命在は知る‥真忍の過去の出来事を。

争うことに追い詰められた人間に刺され、絶命する様‥

父・憎魔の独りよがりの いびつな愛で、無理矢理に眠りから覚まされた様‥

その心の奥底にあるのは、助けを求める手であると言う事を知った。

命在「生きたい‥お天道様の下で、笑っていたいんだね‥」

己が辿った運命と、魔恐の心が重なっていく。

伸ばす手を邪魔する存在は誰か?

満優か‥侠真か‥凛雫か‥

命在「誰だい! 魔恐様を苦しめるほんとうの奴は‥!!」

『クククク』

命在は知る‥魔恐を苦しめる存在が誰かを。

穢れない真忍が、涙しながら天に祈るヴィジョンを鮮明に感じた命在。

命在「魔恐様‥魔恐様がほんとうにほしいものは‥」


命在「あたしの命にかけても守りたい‥愛してほしい子がいるんだよっ!!
その子を笑顔にするためにっ」

それが犯し続けた己の罪への償いでもあるのだろう。

しかし、その守りたいと願うものから鞭が振るわれる。

背中を強打され、崩れる命在。

凛雫「真忍様!?」

魔恐「野良猫、きさまも凛雫も目障りだ! 2人まとめて、我が手で滅ぼしくれようぞ!」

命在「うぅ‥魔恐‥さま。

ど、どうかお聞きください‥

ジャシンは‥アイツはあたしの中の力を奪い、さらには魔恐様をも狙っております‥」

魔恐「フン、それがどうしたという?

お前の力が奪われたのは、おまえ自身が弱いからであろう。

奪われるも阻むも力の理、誰を怨むこともなく、ただ己の弱さを憎め。

それに、私を狙うだと‥ンフフフ、それも一興ではないか。

退屈なこの世ならば‥ハハハ、狙うとあらば向ぅて来るがいい。

誰にも私は負けはせぬ‥負けは死と同じ。

ふたたび私が死ぬことなどありはせぬ‥たとえジャシンが狙おうとも、
あに様が槍を向けようとも、満優姉さま、勇護様、霊皇どもが刃向かおうとも
私は負けぬ、死なぬ!

向かうは斬れ、逃げるは殺せ‥

ハハハハハ、このような世界もろとも、ぶっ壊して差し上げましょうぞ!」

紊乱の柄の棘が、命在を貫かんと振り下ろされる。

その棘を止める久涙の刃。

魔恐「つくづく忌々しい奴よのぅ、凛雫っ」

睨む魔恐と視線を外さぬ凛雫。

命在「なんのマネだい、流星!」

凛雫「別にきさまに同情した訳では無い‥ただ、守りたいと思ったから守るだけだ‥

お前の真忍様への想いを、私は守りたいと思っただけのこと。

そう‥水と風の‥愛理や信代、霊皇たちのように!」

紊乱を押し返して、クルリと左回転しての後ろ回し蹴りで魔恐の左肩付近を攻撃。

命在「魔恐様に手を出すんじゃないよっ!!」

全身の力を振り絞って、凛雫へ攻撃を仕掛ける。

凛雫は難なく避けて、さらに魔恐へ蹴りを放つ。

魔恐も左手を大きく振って、凛雫の蹴りを払うと紊乱を振るった。
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