旧 霊皇戦隊セイレンジャー 2

□第11話・4
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愛理「インガぁぁぁ!」

翼をまとって宙を翔け、セイブルーはインガに斬りかかる。

応戦するインガと もみ合い、戦いの渦へ‥

メアリー「人は弱い‥よわいのさ、哀しいほどにね。

でもさ そいつを嘆いてばかりじゃいられないのさ‥

人は弱さの中から 本物の強さを知るもんなんだよ」

源左衛門「ホンの少しならいいだろう‥私がやらなくてもいい、誰かがするだろう

気づいてくれるだろう‥許されるだろう‥そんな考えが、世界を歪ませる。

少しぐらい不自由な暮らしでいい‥ちょっとくらい不便な生活のほうがいい。

満たされすぎることで人は堕ちていくのなら、不自由も不便もあるほうがいい。

人は今まで、不便なことがたくさんありながも それで命を繋いできた‥

あとを受け継ぐお前たちは、感謝こそすれ

不平不満ばかり口にせず、自分に出来る何かをやることだ‥

誰かを愛せ‥誰かと共に成長しろ」

源左衛門とメアリー、2人の言葉は名張と敬子に厳しく‥痛く、重く‥深く問いかけてくる。

拓真「うあぁぁぁぁ!!」

ツクモ神との共鳴に苦しむ拓真‥

ルナ「羽根よ、想いを守り念を断ち切れ!」

6枚の羽根が拓真の周りを囲み、ルナの魂力を照射‥拓真と虚玩の共鳴を防ぐ。

ルナ「源左衛門さん、メアリーさん、この子の苦しみは私が抑えておきます。

今のうちに!」

そんなルナを襲うクグツ兵‥タロとジロが翔け抜け、ルナを守る。

淑「そうはさせませんことよ、悪党ども!

ルナさんは私が必ず‥メアリーさん、精霊主婦の会・会員として
立派に戦いなされてくださいねっ」

メアリー「主婦の会? なんだいそれ」

淑「女子の誇りと心意気でございますっ」

メアリー「なんかよくわからないけど‥気に入ったよ、任せておきな!」

源左衛門「行こう、メアリー」

メアリー「あいよっ」

2人は、ツクモ神と戦う伝助のもとへ‥

伝助「ちょっと疲れたぁぁぁ!!」

素直すぎる心の声を叫びながら撃つは、ササニシキ。

虚玩の爪と笹葉がぶつかり、火花を散らす。

総右衛門「うりゃりゃりやりゃ!!」

群がるクグツ兵をポムボーン・バルカンモードで撃ち払いながら、総右衛門が

総右衛門「 源左衛門殿、ご助成つかまつるっ」

総右衛門の後に続く、ごんとねん。

ごん「ぶっひぶひぶひっ」

ねん「うんもんもんもっ」

仲間の応援に力がわきあがる源左衛門。

源左衛門「伝助!」

ガッツポーズを見せながら、

伝助「ほないっちょ、やりまひょか!」

メアリー「ちょいとおやじ、冷やで1杯おくれな」

伝助「へーい、今すぐにぃ♪姐さん、つまみは炙ったイカでよろしゅうおまっか?

って、飲み屋のオヤジとちゃうわぁぁぁいっ」

ノリツッコミを叫びながら、笹葉で迫るクグツ兵を斬り倒していく。

メアリー「ほんと、アイツって楽しいヤツだよ」

総右衛門「これこれ、若をあまりからかうでない」

苦笑いしながら、ボムボーン・ブラスターモードを撃つ。

短剣で虚玩に立ち向かうメアリー、源左衛門は動きに合わせる。

メアリーはツクモ神の右脇腹を切りつけ、同時に源左衛門は左方向から一文字に胸を。

次いでメアリーが腹部に短剣を突きたてると、その柄を源左衛門が蹴り押す。

しかし、刃は虚玩に深く刺さらない。

源左衛門「表皮がさらに硬くなっているか‥」

伝助「ちょっとだけねぇぇぇ!」

ちょっとどころの硬さではないのだが、持ち前のポジティブシンキングで放つ笹寿司!

ツクモ神は踏ん張るが、押されて後方へ退くを余儀なくされた。

一方、トジュウの群れと戦う仁たち‥

金剛でトジュウを切り裂き、信代と背中合わせに立つセイイエロー・孝太。

孝太「なんて数だ‥クグツ兵もツクモ神っぽいのもウジャウジャと」

信代「でも‥私たちは負けない。

みんながいるから‥孝太さんがいてくれるから」

孝太「信代ちゃん」

照れる孝太だったが、もちろんクグツ兵が気を利かすわけでも、
トジュウが遠慮するわけでもなく、混戦に巻き込まれてしまう。

向こうから、伝助の『ちぇすとぉぉぉ』勇ましい声が聞こえてきた。

孝太「なんか今回さ、伝助くんたちと僕たちの役目が入れ代わってない?」

信代は跳ねて身体を横に回転、クグツ兵へ蹴りを放ち着地すると

信代「確かにかも‥ま、いいじゃない‥ねっ♪」

両手に持つ疾風でトジュウを切りつける。

仁「くそっ! ンナロっ!!」

烈火を振り抜き、次々と斬っていく仁は

仁「くそっ、キリがねえな」

倒れては次々と現れるトジュウやクグツ兵‥さらに追い討ちをかけるように、
ビルに映し出されているニュースの映像がセイレンジャーを誹謗する。

『テロリストは裁かれ、地獄へ堕ちるべし』

いわれなき数多の憎しみが、言葉や映像を通してセイレンジャーを襲う。

愛理「あいつら‥うっさーいっ!! きぃぃぃぃぃ」

孝太「あ、愛理さんっ‥そんなに興奮しちゃいけませんよ(汗)」

信代「くじけそうになりますけど‥私たちを信じてくれる人もいます」

信じてくれた知美の顔が胸に浮かぶ。

『死刑は当然! その身内も叩き出せ!』

無表情の人間達は、考えることをせず‥

誰かが偽りの叫びを上げると、そちらに集まってしまう

インガ「アハハハハ、惨めだねぇセイレンジャー!

どんなに必死に守ってみたって、当の人間どもはお前たちを疎ましく思っているよっ。

そこまでして、守る価値があるのかい? ジャシンは言ってたよ、
人間どもにそんな価値はないってね。

同感さ、何の罪もない亭主や子供を殺すヤツラだからね‥人間は!」

愛理「アンタは!!」

言葉より先に手が出る愛理は、翼の勢いをそのままにツララで胴を斬りつけた。

とっさに腹部を庇うインガ‥その姿は『母親』を感じさせた。

愛理「え!?」

とっさに攻撃する手が緩む‥しかし、インガは左腕に切り傷を負った。

インガ「ぐぅぅ‥」

インガの動きに、

信代「インガ‥」

凛雫「お前‥まさか!」

察したものもいれば

孝太「インガ、覚悟しろぉぉぉ」

察せないものもいて‥タイジュをインガ目掛けて撃つ!

満優「いけません!!」

タイジュより放たれた弾丸を、セイホワイト・満優のアケボノが切り払う。

軌道をそれて、道路を砕くタイジュの力。

仁「姫さん! だいじょうぶ!?」

孝太「あわわわ‥ど、どうして」

侠真「なにやってんだ満優! アイツを倒せただろうにっ」

勇護「いや、侠真‥訳がありそうだ」

満優「ダメです‥私には、私たちにはインガを傷つけることは出来ません!」

孝太「な、なんで?」

侠真「コイツの言うとおりだ、なぜ倒しちゃならねえ!!」

勇護「落ち着け、侠真」

仁「勇護の言うとおりだ‥俺たちは、インガを倒しちゃいけねえ。

だよな、愛理」

愛理はインガの前に立っていた。

愛理「なにやってんのよ、アンタ!! そんな身体で‥そんな大事な身体で、
何でこんなバカなことしてんのよっ!!」

インガが身重だという事を感じ取った一同。

インガ「ぐ‥うるさい、黙れ黙れ黙れ!! お前たちに言われたくはない!」

怒淋の鉄球を、愛理に投げつける。

怒りに痛みも忘れて、鉄球を右手で弾いた。

インガ「なに!?」

倒れているインガの襟首を掴まえて、

愛理「インガ! 命を宿したアンタが何で命を苦しめるの!?

なんで 小さい子たちを襲ったりするのよっ。

アンタ母親でしょ‥命の大切さがなんでわからないのよ!」

インガ「黙れ、人間どもに言われたくないねっ!

あたしの子を殺したのは人間じゃないかっ‥。

あんなに可愛かったエムを‥惨たらしい姿に変えた人間が、何を偉そうに言ってんだ!

私の子を殺した人間の行いを見てみなよ‥そこにいる女もそうだ、
お前たち人間は、自分達の勝手都合で子供を可愛がったり疎ましく思ったりする‥

気に食わなければ殴り、従順でなければ蹴り、まるで所有物のように子供を扱う!

ならばなぜ子を産む? ジャシンは言った‥人間どもは共食いをすると‥

それがほんとうならば、子など産むべきではないだろう‥違うか、人間!?」

敬子は、インガの叫びに殴られる。

愛理「そう‥あの人も子供をね‥

インガ、親も子供だから‥いっしょに成長していくものなんだよ。

あの人も悪いけど、アンタの今はどうなのよ‥

確かに、以前のアンタは悪くなんてなかったんでしょうよ‥

そりゃ、親から子を奪った人間は悪い、同じ人間として私も許せない。

いくら言い訳したところで、その罪が消えるわけじゃないわよ‥

でもね、アンタも今おなじことをしているようなものなんだよ!

大切な存在を奪われる悲しさも怒りもわかっているアンタが
どうしておなじことをしようとするの、
命を宿して、親になろうとしているアンタが、なんでこんなことするのよ!!

それはアンタが間違ってるっ。

人間も間違ってるけど、アンタも間違ってる‥私も間違うことがあるだろうと思う。

間違ったときは、その間違いをまず直さなきゃ‥インガ、自分の間違いを正してから
世界の間違いに叫びなさいよ!」

インガ「くっ」

満優「インガ‥あなたなら知ってるでしょう?

赤ちゃんの小さな手、 眠りながらも、お乳を飲みながらも、しっかりと握っています。

その小さい手の中に何を抱いているのでしょう?

明日への希望? それとも大きな夢? それともお母さんやお父さん、たくさんの命からの愛?

どちらですか?」

インガ「そんなこと‥決まっているだろう!」

満優「そうですわね‥すべてをその小さな手に握っているのですものね。

そればかりではなく、もっともっとたくさんの抱えきれない『幸せ』を
手の中に強く握っているのです‥ほら、それがわかる貴女ですのにどうして?

どうして、怒りに任せて命を摘み取ろうとするのです。

それがなくした愛の願いだったのですか?

貴女の悲しみも怒りもわかります‥

いえ、貴女はわからないと私たちを責めるかもしれませんが
少なくとも、わかりたいと思っています。

信じてほしい‥こんな戦いは今すぐ終わりにして、
精霊の世を私たちで元のような姿に戻しませんか?

失くしたものは多く、傷も深いです‥怒りもあるでしょう。

でもその怒りを誰に、どこにぶつけてもきっと‥きっと自身を傷付けるだけで
何もはじまらない、生まれることはないのです。

復讐は自らを傷付けるだけ‥それだけではありません、愛するものの想いまで裏切り
傷付けてしまうことなのです。

もう傷つくのはやめにしませんか? 貴女の中に宿りし命のためにも
愛にあふれた暮らしを取り戻してほしい‥インガ、お願いします‥戦いを捨ててください」
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