旧 霊皇戦隊セイレンジャー 2

□第12話・前編・2
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都内・ビルの谷間

谷間を埋めるように、爆発が走っていく‥煙と炎が立ち上る中を
切り傷だらけになった孝太と信代が苦しげに倒れていた‥

しかし、戦う気はまだ衰えず!

3本角の銀色鬼は、戦刀でビルの壁をなぞりながら、ゆっくりと迫ってきている。

『シュアァァァ』ニヤリと笑うかのように、牙へ唾液を糸引かせながら口を開けた。

孝太「ぐうぅぅ‥ま、負けるもんか‥」

金剛を手にして立ち上がる。

信代も疾風・閃を地について立ち上がった。

信代「ツクモ神、私たちは負けない!」

疾風・撃を毅然と突き出し、銀色のツクモ神にそう叫ぶ。

『シュアァァァ!』刀を上段に構えて、ツクモ神は駆け出した。

信代がいち早く反応して、ジャンプ! ツクモ神の胴払いを左手に持つ疾風・閃で受け
右手に構える疾風・撃で首を狙う。

怯むことなく、銀色の鬼は突っ込んできて‥額の3本の角で、信代を刺そうとした。

その角を防いだのは孝太の金剛。

そのまま、孝太はバットを振るようにツクモ神を吹き飛ばす。

ツクモ神はビルの壁にのめり込み、次いで瓦礫の下敷きになった。

孝太「はぁはぁ‥信代ちゃん、だいじょうぶ?」

信代「うん‥孝太さん、ありが‥」

礼を言い終わらないうちに、瓦礫を跳ね除けて鬼は立ち上がる。

『シュアァァァ』まるで戦いそのものを楽しんでいるような‥猛る鬼は
戦刀をギラつかせて向かってきた。


都内

仁の首に毒々しい桃色のツクモ神は手をやって、建物の壁に叩きつける。

仁「がっ」

血反吐を吐いて、苦痛に顔を歪ませる仁。

愛理「ちょーしブッこいてんじゃないわよぉぉぉ」

チビッ子には、とても聞かせられないような悪い口調の気合の声で、水流を乱射する愛理。

槍をクルクルと回し、まるで盾のように使うと、まるで獲物を見つけた狩人のように
槍を投げつける鬼。

あまりに早いスピードに、愛理は危うく串刺しになるところだった。

ギリギリで槍を飛び避けて、アスファルトの上を転がる愛理。

愛理「痛たたた‥ったく、もうアッタマきた! アンタっ絶対許さないからね!!」

水流を撃つ‥光弾はツクモ神の肩や太もも、胸と着弾する。

鬼の身体を爆発が走るが、動じることはなかった。

槍を構えると、穂先に光が集まってドリルの形になる。

仁「させっかあぁぁ!」

強い打ち込みでツクモ神の身体を反らせた。

ドリルは粒子になってしまう。

仁は続けて横に払い、さらに袈裟切り、逆袈裟、回転しての蹴りから さらに飛び蹴り
間髪入れずに突きを繰り出した。

鬼は苦もなく、仁の攻撃を槍であしらい‥烈火をクルリと柄尻で回してそのまま胴を叩く。

仁「がっ!」

あっという間にビルの壁へ叩きつけられ、仁は崩れ落ちた。

愛理「仁!」

近づくと、意識はあるよう‥愛理はほっとした様子を見せ、すぐさま

愛理「このぉぉ」

と、ツクモ神に向かっていった。

槍を水流で受けて抑え、背面から左肘を叩き込む。

すぐに前転で間合いをとると、水流を数発撃った。

火花散る鬼の身体へ体当たりする愛理。

倒れこむと、馬乗りになって拳を放つ愛理だったが‥

『バルルル!』

ツクモ神は、したから手を押し上げて軽く愛理を放り投げた。

愛理「きゃあぁぁ!」

ふたたびアスファルトに叩きつけられ、息が詰まる。

『バルル‥』

槍を引き、構えると穂先にドリルが発生‥

仁「あ、愛理‥」

立ち上がろうとしたが、また倒れてしまう。

『バル!』

槍を突き出し、ドリルを開放した。

身動きできない愛理に迫るドリル!

愛理「ぐっ、ごほっ!」

呼吸が思うように出来ず、苦しんでいる。

ドリルが愛理を貫かんとした寸前‥愛理を救ったのは6枚の小さな羽根だった。

赤・青・黄・緑・白・黒に輝く羽は祈願天使翼!

ルナ「愛理さん!」

背中のリボンを翼に変えて、ルナは天を翔けて舞い降りた。

ルナ「イグニス、ヴァダー、撃ちなさい!」

赤い羽根、青い羽根が連続攻撃。

鬼の眼をかく乱させていると‥

『全国2億4千万人のひとみの皆様、お待っとさんでしたぁぁぁ』

空より飛び来るは、もう『ち』で始まる言葉括りは捨てた上に

日本人口数と、往年の名曲『2億4千万の瞳』と、

全国にいらっしゃる ひとみさんとが混ぜこぜになっての
必殺・笹かまぼこを撃つ伝助だった!

伝助「それでは皆様ぁぁ‥はいっ、ご一緒にぃぃ!」

『ヨッ、待ってました! 猫熊屋!!』

歌舞伎のような掛け声を要求しつつ、伝助は斬り込んでツクモ神を後退させる。

伝助「なにしとんねん、仁! シャキッとせんかい!」

間合いをじゅうぶんにとったところで喝を入れた。

仁「へへ‥そーだよな。シャキッとしねえと」

立ち上がる仁。

烈火を構えて伝助と並ぶ!

ルナ「伝助さん、ツクモ神から やはり何かを感じます!」

伝助「せやな‥総右衛門の解析どおり、みょうちくりんな力を持ってけつかるな」

伝えまフォン・赤を取り出しなにやら操作‥

ルナ「トゥルパ、アネモス、ルーチェ、オプスキュリテ、敵を阻みなさい!」

4枚の羽根は鬼の周りを飛びまわり、光線を発射したり当たっていったりと
攻撃を続ける。

伝助はその間に伝えまフォンのディスプレイを見て

伝助「うーん‥やっかいやな」

愛理「がっ! ゴホゴホゴホ‥」

伝助「愛理っ、そんな体調やったら 外ん出るときはマスク必須やで。

エチケットちゅーもんを考えなアカンっ」

愛理「マスク!? あたしゃ風邪ひいてんじゃないわよぉぉぉ!」

水流乱射! 弾を『ほっ、よっ、アッほいっ』なんて避けながら

伝助「ケッ、せやったら敵に手ぇも足もお尻も出せへんで
負けそうになってましたんかっ、おおぅ」

意地悪そうな目つきで愛理を挑発。

愛理「尻なんか出すかぁぁぁ! おんどりゃあぁぁ、ブッ殺す!」

伝助「せやったら相手はアッチどすっ、行ってきなはれぇぇ」

愛理「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

鬼気迫る迫力で、我を忘れた愛理はツクモ神へと突撃していった。

仁「愛理‥」

伝助「かまへん かまへん、アレくらい怒っとったほうが ええねん。

愛理は怒れば怒るほど強ぉなるさかい」

仁「けど‥なんか‥ちょっと怖ぇ」

伝助「ルナ、愛理のフォローよろしくや。すぐに僕らも混ざるさかい」

ルナ「はい!」

ルナはツクモ神と戦う愛理のフォローへと向かった。

伝助「さて‥こんな時やからチャッチャと話すで、よぉ聞いとってな」

仁「ああ」

伝助「アイツの身体からは、霊皇の魂力を抑えようとする結界のエネルギーが出てんねん。

それは十中八九、ジャシンの術で張ったものやと思う。

結界のせいで、セイレンジャーの力が弱められてまうんやろな‥

転精も今はでけへんかも知れん」

仁「転精も出来ないって‥」

伝助「心配しぃな! 合宿でみんなパワーUpっぷをしとるさかい、

ジャシンの術なんか、ちょちょいのポンで破れるに違いないっ」

仁「ちょちょいのポンって」

伝助「兄妹でおんなじとこに引っかかんなっ」

(いつぞやも‥去年の12月のたま太郎のときにもポンって言っていたな‥)

伝助「まぁ‥ちょちょいのポンは いいすぎやったかも知れへんけど
今のみんなやったら だいじょうぶや!

やる気になったら でけるっ、山より大きな猪はでへぇんってゆーやろ」

仁「山みたいにデッケェ火の獅子や、闇の狼とか土の熊とかいるけど」

伝助「時間がないっちゅーのに、口ごたえ さらすな!」

仁のおでこを肉球でペチリと叩き

伝助「えーか、自分のやってきた事を信じたらええんや。

通ってきた道は嘘つかへんっ。

嘘つかへんのやったら‥『おまーえなら、行けるさトム』やっ」

アニメ名作劇場 トム・ソーヤの冒険の歌より、一節を拝借して伝えてみる。

仁「お、おう‥俺、トムって名前じゃねえけど‥とにかくやってみる!」

どうやら、伝わったらしい‥。

伝助「ほしたら、僕もいきまひょかっ」

そう言って笹葉魂撃守國景を構えると

伝助「ちぇすとぉぉぉ!」

力を込めて、ツクモ神にササニシキを撃っていった。
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