旧 霊皇戦隊セイレンジャー 2

□12話・後編・1
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「霊皇戦隊セイレンジャー」第12話
            「届け、この想い」後編

2009年10月

いったんその場で回復処置をする一同。

伝助は弟子のごん、缶吉とともに各々の武装のチェックを怠らない。

淑の秘薬『ふぁいと万発☆ヒャヒャヒャのヒャー・輝皇丸』を飲む一同。

今までの兵糧丸以上の回復力を誇る新薬らしい。

とうぜん、口の中や胃の中に広がる‥例えるなら『渾沌と混迷を極めし刹那の叙情詩』

伝助「なんのこっちゃ?」

そ、そう‥なにがなんだかわからないほどに、複雑怪奇・奇妙奇天烈・摩訶不思議な味。

そのため、しばらく伝助はじめ付喪の衆以外は‥KO!

気を失って横たわる仁たちを、ルナ、淑、餡子と、さらに回復処置。

10分が過ぎただろうか‥

ようやく意識を取り戻した頃には、体力が満タンに回復し、傷も完治していた
仁たちであった。

信代「街‥だいじょうぶかな」

最小限に止めれたとはいえ、被害はかなりであろう街を見つめて、信代は呟く。

出会った人たちも、家族も無事だとメールや連絡が入って
安心はしたのだが、それでも犠牲者が多く出たことに胸を痛める信代たち‥

愛理「伝助、アンタの‥ヘボン式ローマ字綴方だったけ、ちゃんと機能してんでしょうね」

伝助「伝助式がっちり守りますんにゃわセキュリーティーシステムじゃ!

『式』んとこしか おーてないやんけっ。

心配しな、ちゃんと機能しとるさかい みんな避難でけとるで」

ルナ「建物は大きく崩れてしまいましたが‥だいじょうぶ、生きている限り
命は立ち上がるものですからね」

源左衛門「あいつたち‥途中から加わったあいつたちが、避難誘導に専念しだしたのも
大きな力になったな」

総右衛門「に、ござりまするな」

空守隊の男の顔を思い浮かべる総右衛門。

伝助もまた、陸守隊の男を脳裏に浮かべていた。

伝助「さ、これで一応メンテ終了や」

その後、伝助はヨロレイホーの説明を満優を除く霊皇に伝え、
ごんとねんが皆にお茶とお菓子を薦め、僅かな休息をとった。

缶吉「ほいじゃ‥のぅ、凛雫さんよ」

凛雫「ん? どうした、缶吉」

缶吉「凛雫さんの刀、見たところ えれぇ切れ味しとると思うけどな
霊皇の皆さんや侠真様と比べたら、少―し負けちょると思うんじゃ」

凛雫「そうかも知れんな」

缶吉「ほじゃけえ、凛雫さんに渡したひもんは はふんふょ(渡したいものがあるんよ)」
と、言いながら口を開けてなにやら取り出す。

それは、美しく輝く銅色の拳銃。

凛雫「これは?」

缶吉「わしがこさえた銃に、珍平さん、君兵衛さん、餡子ちゃん、そしてわしもじゃが
魂力を込めて完成した銃なんよ。

満優様か勇護様にお渡ししようと考えとったけど
今は戦力Upがなによりじゃあ思うんよな。

さけぇ、凛雫さんに渡そうと思うた‥受け取ってくれるかい?」

凛雫「ほんとうに、私がもらってもよいのか?」

缶吉「おう、もらってくれりゃあ嬉しいが」

凛雫「遠慮なく使わせてもらう‥ありがとう」

缶吉から銃を受け取る凛雫。

遠くにいた珍平、君兵衛、餡子にも手を振り

凛雫「お前たち、すまぬっ‥ありがとう」

笑顔で手を振り返す3人。

凛雫「で、名はなんという?」

缶吉「それが、まだないんじゃ‥なにかいい名前をつけてくれんかのぅ」

凛雫「そうだな‥雅な雰囲気を湛える形状に、輝く銅色の美しさ‥

銅雅(どうが)‥では、どうか?」

缶吉「銅雅か‥ええ名じゃ♪」

凛雫は新たな力、銃・銅雅を手に入れた。


そして‥


満優、仁、愛理、孝太、信代、勇護は鋼速ローダーにまたがる。

伝助、総右衛門、源左衛門、淑、メアリーは
ルナの操るサイドカータイプの鋼速ローダー・デュアルに搭乗。

侠真が乗る鋼破ローダー、ごんとねんはカウル部分に座っている。

ごんによって、もう1台作られた鋼破ローダーには凛雫が乗った。

そして、カルマはゴウラスの背に乗り、珍平、餡子、君兵衛、缶吉たちも乗っていた。

満優「目指すは妖霊城‥真忍の奪還と戦いの終結のため、私たちは進みます!

願いはひとつ‥生きることです。

皆さん、お願いです‥生き抜くことを強く願ってください。

生きてふたたび、この世界へ帰ってまいりましょう。

そして出来うることならば、私たちだけではなく‥

憎しみと怒りを‥叶うものならば絶望も、連れ戻せるならば‥

光あふれるこの世界へと‥必ず!」

戦士たちは空間を駆けて妖霊城を目指す‥死ぬための戦いでなく、生きるために、
守るために進む。

それは、敵味方関係なく‥命の尊さを胸に抱いての出陣だった。


妖霊城

城の周りを固めるクグツ兵団とトジュウ群、その数千以上。

ジャシンによって、沈没する災滅艦より助け出された半獣のインガは
怒りに満ちた表情で指揮を執っている。

霊皇への怒りなのか‥生き延びている、己への怒りなのか‥

『インガ、何を恐れている? お前は怒りに任せて戦い続ければいい。

怒りの獣へと変るのだ‥美しく、醜悪な怒獣へとな‥その命が果てるまで戦い
私に美しき姿を見せてくれ‥クククク』

先ほど‥霊皇たちを迎え撃つため、

指示された持ち場へとつこうとしたインガに、ジャシンはそう言う。

そして『お前のすべては、私のものだ』

薄っぺらいセリフを吐く男の目は、冷たいものだった‥

インガ「その言葉の中に、少しでも『愛』があってくれたなら‥この子と私と‥

ジャシン、お前と暮らす退屈な日常もあったのだろうな。

退屈で、なによりも大切な暮らし‥朝、昇る日とともに目覚め、汗を流して働き
家族がいっしょに食事をして‥笑ってその日1日の出来事や
つまらない冗談を話して、月や星とともに眠る。

私は朝に洗濯、食事の用意に後片付け‥愛する子と、ジャシンの寝顔を見ながら
夜は針仕事‥そんな暮らしもあったのかもしれない。

この子を‥生みたい、この子だけはと僅かな望みを抱いていたが
やはりお前は気づいていない。

いいや‥気づいていたとしても、お前は気にもしないだろう‥

私はお前のおもちゃなのだから。

思うように動き、命じるままに汚れていく ただのおもちゃ。

魔恐と私と、そう大差はない‥どちらも、お気に入りの人形なのだから。

お前の瞳に映る私は、お前に愛されていない‥魔恐も愛しておらず
お前はお前自身をも愛していないのだろう。

お前にあるのは『虚』だけ‥

愛も生も、怒りも悲しみも、お前にとっては
虚しく、不要なものにしかすぎない。

許せ‥お前を生むことはもう叶わぬようだ‥」

そっと腹に手を当てるインガ。

インガ「身を獣に変えながら、血と罪にまみれ続けた私が
最後に望んだ我儘だった。

叶うことはないと思いながらも、一縷の望みにすがった母だったけど‥

けれど、獣として戦えと命じられた‥そしてそのまま死ねと。

もう‥ムリだ‥許してね‥許して」

半獣の姿のインガの肩が、かすかに揺れている。

ドクン‥インガに宿る小さな命は、母の悲しみを懸命に抑えようと
1度だけ鼓動を大きく打った。


城の中では‥


王の間

ジャシンと魔恐が、玉座に座る憎魔の前に立っていた。

ジャシン「では憎魔様、私と魔恐も霊皇を迎え撃つため出陣いたします」

魔恐「こんどこそ、満優姉さまや勇護様をこの手で‥」

憎魔「魔恐‥あまり無理はするなよ。

霊皇どもとの決戦、わしも出る‥こしゃくな霊皇を捻り潰し、
精霊の力を今度こそ根絶やしにしてくれよう。

侠真もろともの‥」

ジャシン「では‥陣に出ますゆえ」

魔恐を従え、ジャシンは去っていく。

憎魔「侠真‥親不孝ものが」

ゆっくりと目を閉じ、悲しげな顔を憎魔は見せた。

ジャシンと魔恐、通路を歩きながら

ジャシン「ツクモ神・三鬼衆の正体に気づかぬとは‥おいぼれよ、哀しいな‥クククク」

歩みを進めるジャシンの後ろに、心技体の狂いし鬼たちが付き従う。

魔恐は‥目が虚ろなまま、ジャシンの後をさまようように追っていた。
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