付喪堂綴り・1

□第1章・1
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都内

ごん&ねんが、テクテクと歩いている。

街の喧騒の中、テクテク歩く金色のブタさんとウシさんの貯金箱‥

さすがは東京! (いやいやっ)

ごん「ぶひー‥美味しそうな匂いがするぶひ」

クンクンと、漂う匂いを追って歩く。

ねん「んもんもぉん♪」

美味しそうだと、すでにヨダレ。

香ばしい‥炭火で焼いた、焼き鳥の匂い。

ごん「ぶひぃぃぃ☆」

お肉大好きな、ごんとねん。

慌てて、長蛇の列に並んだのだが‥

『おうおう! なにやってやがんでぇ』と、怒鳴り声。

辺りをキョキョロと探す ごんたちだったが‥声の主はどこにもいない。

『バカ野郎、どこ向いてやがる! こっちだっ、こっちだよ!』

声のするほう‥そう、上を見上げる ごん。

ねん「うんも?」

ごん「ぶひー!?」

パタパタと羽ばたいて、眉毛の太い青い鳥‥の、ぬいぐるみがいた。

放送は終了したが、まるで某・朝の人気番組のマスコットのような姿。

大きさは50センチほどか。

時代劇に出てきそうな旅人風の合羽を羽織、三度笠を目深にかぶって
パタパタ飛んでる旅鴉ならぬ、旅青い鳥。

腰には鉄串1本、差していた。

青い鳥「こちとら、ずっと並んでいるんでえ!

後から来やがったくせに、割り込むたぁ いってえ どういう了見でいっ」

ごん「ぶ、ぶひぶひ」

と、ごんはケンカをしまいと平謝りだったのだが‥

ねん「んもっ!?」

ねん、まさかの やる気っ!

青い鳥「ほっほぅ‥おもしれえじゃねえか、やるってんだな。

相手になってやろうじゃねえか!」

ねん「んもんもももっ」

空腹で気がたっているのだろうか‥ねんは1歩も退くことなく、
青い鳥とにらみ合い、火花を散らしていた。

ごん「ね、ねん‥やめるぶひっ」

ねん「んもももーん」

どうやら、ごんに止めるなと言ってるよう。

青い鳥は1度、高く舞い上がると
急降下して黄色いくちばしでツンツクツン。

が、缶吉の強化コーティング済みのボディには傷ひとつ入らない。

青い鳥「ほぅ、思ったより頑丈じゃねえか!」

ごん「ねん、やめるぶひっ」

ねん「んもんもーんっ」

青い鳥は、鉄串を抜いて逆手に持った。

ねんも、吽雌を出そうと思ったが‥
先の天獄での戦いで、武器はボロボロ‥どうしようもなく、廃棄となってしまっていた。

それだけ激闘だったということだが‥それは源左衛門たちも同じで。

使い物になるのは、伝助の笹葉魂撃守圀景と
ルナの祈願天使翼、総右衛門&淑の ほねっこブースターぐらいだろうか。

あとの武装は、戦いの後すべて壊れてしまった。

ねん「んももっ」

えーと‥武器がなければ拳で叩けと言っている。

それはまるで‥

演歌界の大御所の津軽三味線を題材にした大ヒット曲の一節のようなことを叫んで、
ねんはさらにヒートアップ!

並んでいる人たちも、騒ぎによって大慌てである。

青い鳥は鉄串で殴りつけてくる。

それをサッと避けて、ねんは体当たり。

青い鳥は、大空へと飛んでかわした。

突然、バトルを始めた ぬいぐるみと貯金箱‥とうとう

『もしもし、警察ですか!? 青い鳥のぬいぐるみと
金色のブタとウシの貯金箱が暴れているんですっ』と

よくよく考えてみると、ワケのわからない通報をされる始末。

ごん「ぶひはケンカをしてないぶひっ」

チッと舌打ちしたが

ごん「そうだぶひっ!」

ごんは伝助からもらった、伝えまフォン・金を取り出し通信‥


付喪堂

伝助「なんやてっ!? ねんと青い鳥のぬいぐるみが暴れてる?

ふん、ふふんふん‥わかった、場所は駅近くの焼き鳥屋なっ。

すぐに行くよって、それまで気ぃつけるんやで!」

総右衛門はすぐさま『場所はここやで機能』で確認。

源左衛門「よし、俺とメアリーで対処する」

伝助「いいや、僕とルナで行ってくる。

相手は初めて会うやっちゃ‥用心しなアカンし
それには、源左衛門の人参刀もメアリーの鮪剣も、もうボロボロでアカン。

相手が何もんか わからへんっちゅーことは、何があるかも わからんっちゅーこっちゃ。

せやさかい、僕とルナで行ってくる」

源左衛門「心配するな。

刀はなくとも、俺には拳がある。

それに、カルマに戦士の心意気を叩きこまれたからな‥それで じゅうぶんだ。

俺が行く」

伝助「そうか‥ほしたら、くれぐれも気ぃつけてなっ」

そう言って、ニッカリ笑顔で送り出す伝助。

源左衛門「ああ‥いくぞ、メアリー」

メアリー「あいよ! 久しぶりに、ひと暴れできそうだねぇ。

最近、身体がなまってたんで ちょうどいいさね」

総右衛門「では、それがしと缶吉とで
制御室にてサポートいたしまする」

缶吉「ほぅやのぅ」

伝助「頼むで、総右衛門、缶吉」

源左衛門とメアリーは、2人そろって焼き鳥屋へと急行した。


焼き鳥屋・前

ケンカはさらにヒートアップ。

鉄串を防ぐために、ねんはゴミ箱のフタを盾のように持つ。

カンカン、カンカン! 激しい音を立てて青い鳥は攻撃するが
ねんは ことごとく防ぐ。

青い鳥「ええい! こんちくしょう!」

フタを蹴る青い鳥。

ねんは後ろへゴロゴロと転がる。

ごん「ぶひっ!」

ねんを助けようと、青い鳥の前に立つ ごん。

青い鳥「なんでぇ なんでぇ! 2人がかりで こようってんだなっ。

この卑怯もんがっ」

ごん「無手の相手に鉄串ふりかざすような、
そんな奴に卑怯者呼ばわりされたくないぶひっ。

青い鳥「なんだとぅ!」

怒り心頭といった感じで、青い鳥は ごんに飛びかかる。

ごんは、近くに置いてあった角材をとり
槍のように持って、青い鳥へ振った。

『おっとっと!』と、声を上げて急上昇。

青い鳥「みてろよ!」

握る鉄串にペッとつばを吐いて、滑りにくくすると

青い鳥「うりゃあぁぁぁ!」

ごんへと突進してくる。

ねん「んももっ」

円盤投げのようにゴミ箱のフタをかげて

ねん「んもっ、んもっ、んもももぉぉぉぉん!」

と、オリンピック選手のように叫ぶ。

勢いよく、青い鳥へと投げられたフタを
『てやんでぇ!』』気迫のこもる怒鳴り声とともに、鉄串で弾き飛ばした。

ごん「お前から、焼き鳥にしてやるぶひっ」

青い鳥「そういうテメエは、チャーシューだ!」

(いや、ぬいぐるみと貯金箱だって)

空へ向けて、角材で突く ごん。

青い鳥は器用に避けて、まるでアクロバット飛行。

『でえぇぇぇい!』気合いもろとも、鉄串を振り下ろす。

ごんは角材を巧みに操り、頭上に迫る鉄串を防いだ。

メキッ! 鈍い音を立てて、角材は折れてしまう。

しかし、とっさに ねんが ごんの身体を引っ張り
危うく避けて、アスファルトを叩き割る鉄串。

ごん「ぶひっ!?」

ねん「んもっ!?」

恐ろしい威力‥直撃すれば、さすがに割れてしまうかも。


青い鳥「へへんっ、ビビッてんじゃねえぞコラァ!」

ごん「どんだけ固い鉄串ぶひっ」

青い鳥「あぁぁん? コイツか‥コイツぁ、俺が元いた場所の近所の焼き鳥屋の串よ。

イケ好かねえ頑固じじぃだったが、頭とおんなじで串まで固ぇ。

ちょうどいいからよ、旅に出るときに かっぱらって やったんでぇ!」

『あははは』と、悪びれる様子もなく笑う、余裕の青い鳥。

ごん「ぶー‥笑ってられるのも、今のうちぶー。

侠真さまのように槍は使えないぶひが
ぶひ(俺)の獲物は豚=とんだけに、トンファーぶひっ」

真っ二つに折れた角材を、両手に持ち直す ごん。

青い鳥「ほぅ、本気を見せてやるってか? そいつぁワクワクするぜ!」

ごん「ねん、周りの人たちにケガがないよう気をつけるぶひっ」

ねん「んもも!」

『任せとけ!』と言ってるよう。

そんな風に言っている間に、青い鳥は仕掛けてきた。

青い鳥「うらぁ!」

強烈な前蹴りから、力任せに鉄串を叩きつける。

が、ごんも角材トンファーを操って、見事に防ぐ。

青い鳥「こんなろう!」

身体を左へクルクルと回転させながら、青い鳥はジャンプする。

そしてそのまま、回転力を加えて1撃!

ごんもたいしたもの‥瞬時に攻撃の破壊力を察してか、角材トンファーを重ねて防御する。

青い鳥「ちっ!」

空中から、蹴りを放つ。

たまらず、ゴロゴロと転がる ごん。

ごんの左手に持たれていた角材を ねんは拾い

ねん「んももぉぉぉぉ」

ブンブン振り回して、猛烈アタック。

今度は、青い鳥が吹き飛ばされる。

ゴミ置き場のカラス避けネットに突っ込み

青い鳥「イテテテ‥こんなろう、やりゃあがったな!」

さらに激怒して、鉄串を構えた。

ねん「んもー!」

めっちゃ睨んで、やる気の ねん。

『やめろ!』そこへ響く、源左衛門の声。

源左衛門「こんな往来でケンカ沙汰とは‥なにをやっている!」

源左衛門の一喝で、ごんとねんはシュンとなってしまう。

メアリー「来る道で騒いでたのを聞いたのさ。

ぬいぐるみと貯金箱が、焼き鳥をとりあってケンカしてるってさ‥

ったく、なんてファンタジーなケンカなんだろって
みんな苦笑いさ」

(確かに)

源左衛門「訳はゆっくり聞いてやる。

だが、ここはひとまず去らねば‥時期に警官も来るだろうし」

メアリー「役人が来ちまったら、何かと厄介だしね。

仁や孝太たちに来てもらったりするのも悪いじゃないか」

身元引受人というか‥所有者というか‥の、ことを言ってるようだ。

ごん「ぶひ‥」

ねん「んも‥」

2人は落ち込みながら『はい』と。

しかし、青い鳥は怒りで我を忘れている。

青い鳥「次から次へと出てきやがって!」

鉄串をふりかざし、源左衛門に殴りかかる。

ヒョイと避け、背中にパンチ。

青い鳥「イテっ! やりゃあがったな、ちくしょうっ」

鉄串を振り回し、源左衛門につっかかる。

源左衛門は青い鳥の手を取り、軽くひねると
そのまま投げ飛ばす。

全身を激しく道路に打ちつけられ、苦しむ青い鳥。

源左衛門「お前は‥」

何かに気付く。

青い鳥「ぐっ‥おらぁぁぁ!」

立ち上がり、なおも突っ込んでくる青い鳥。

振り回す鉄串を、なんなくかわす源左衛門。

源左衛門「だから‥力任せの剣では、ダメだと教えただろう!」

足をチョコンッとひっかけて、青い鳥を抑え込む‥続けて腕をからめ捕り、関節を極める。

青い鳥「ぎゃ!」

痛みで、思わず悲鳴。

メアリー「なぁんだ‥あたしの出番はないようだねぇ」

源左衛門「おい‥太まゆげ。

いい加減にしろ、他の人たちに迷惑がかかる。

これ以上続けると、少しばかり痛い目に遭うぞ」

冷静に、言い聞かせるが

青い鳥「しゃらくせえや!」

青い鳥は、素早い身のこなしで源左衛門を振り払う。

源左衛門「なに!?」

思わぬ青い鳥の素早さに、体勢が崩れてしまう源左衛門。

青い鳥はスゥと息を吸い、いったん鉄串を腰の帯に収める。

ごん「観念したぶひか?」

ねん「んもっ」

メアリー「いいや‥違うようだね」

青い鳥のぬいぐるみは続いて『フッ!』と、強く息を大きく吐いた。

青い鳥「うらあぁぁ!!」

鉄串を素早く抜き放ち、源左衛門へと‥

源左衛門はサッと避けようとしたが、髪の毛が数本
ハラハラと散る。

ごん「ぶっ!?」

ねん「んももっ!?」

メアリー「おやおや‥アイツ、居合いを使うんだねぇ。

威力は伝助に比べて遥かに劣るけど、速度はチィっとばかり
太まゆげのほうが勝ってる‥って とこかね。

スジはよさそうだけど」

源左衛門「いい腕と才能をしているのに‥

怒りに我を忘れるのと、鍛練を嫌うのが悪いクセだ‥なぁ、ずず」

ずず「なんだ!? なんで テメエが おいらの名前を‥!?」

動きが止まった瞬間、源左衛門の突きが みぞおちに1発。

ずず「うぅぅぅ‥」

メアリー「ほら‥終わっちまった。

なぁんだ、結局 暴れるこたぁ出来なかったねぇ」

源左衛門は、倒れる ずずをサッと抱え

源左衛門「メアリー、帰るぞ」

メアリー「あいよ。

おっ、ちょうど役人もおいでなすったね‥ごん、ねん、鉄串持って とっとと来な!」

ごん「ぶっひぶひぶひ」

ねん「うんもんもんも」

ごんは、ずずの落とした鉄串を拾い
源左衛門とメアリーの後をついていく‥後ろで、警官の声が騒いでいた。
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