付喪堂綴り・1

□第1章・3
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ずず「すまねぇ‥俺ひとりが辛ぇ苦しいと思っていたが‥

そうだよな、メリケンから夢の国へとやってきて
そっから おっかさんのところへとやってきたお前にゃあ
俺の何倍も辛ぇ世間だったんだろう」

伝助「源左衛門‥アイツ‥

ずずって、もしかしたら汐留辺りからオカンちにいったんとちゃうか?」

総右衛門「おそらくは」

源左衛門「あぁ‥ずずも、良い暮らしから叩き落とされた身。

辛い苦しいはアイツと同じだったろうに」

伝助「なにがあっても、あの2人を助けなアカン!」

ピーノ「うるしゃい! お前たちに、なにがわかるっていうんでしゅかっ。

箱の中で おかぁしゃんを待ち続け、ともだちにも捨てられ
カビて死にしょうになって‥旅に出てからも苦しさは ちゅじゅき!(続き)

ボクは何も悪いことはしていないんでしゅよっ。

なのに、なのに‥なのにぃぃぃ!」

ピーノは大きく手を振った‥瓦礫が浮かび、弾丸のようにずずたちへと飛んでいく。

伝助「ちぇすとぉぉぉ」

笹の葉さぁらさらで、瓦礫を撃ち落とす伝助。

伝助「みんな、気ぃつけるんやでっ」

笹葉を手に、前へと出る。

ルナ「あの子の力は‥」

ピーノ「これが僕の力でしゅ‥魔法が使えるんでしゅ。

じぇによしへの怒り、じゅじゅへの憎しみ、おかあしゃんへの悲しみ‥

怨みがボクのなかで積もり、魔法の力をボクに与えてくれたんでしゅ!

だってボクは夢の国出身なんでしゅから!!」

夢の国の魔法とは、若干違うような気はするが‥

ピーノ「うるしゃい!! じぇによしのせいで、おかぁしゃんは苦労してるでしゅ‥」

伝助「オカン‥お前、おぉたんかいな!」

ずずは、鉄串を抜いて伝助の横に。

伝助「ずず!」

ずず「ピーノ! おっかさんに会ったってのはホントか!?」

ピーノ「ああそうでしゅよ。

でも、おかあしゃんはやつれていました‥ご飯もいつも独りっきりで食べてるって
寂しい目をして言ってました」

姿を変えて松太郎と名乗り、近づいた女性は恋しい母の浜子‥

ピーノは名乗りもできず、陰で涙するしかなかった。

ピーノ「僕がこんなに辛い目に遭ったのも、じゃによしのせい‥

おかあしゃんが苦労するのも、じぇによしのせいなんでしゅ!

ボクは、じぇによしに恨みをはらしてやるんでしゅよ‥

じゅじゅ、なんで邪魔をしゅるんでしゅか!

邪魔はさせましぇん‥ボクの魔法で、2人ともやっつけてやりましゅよ!!」」

人差し指を立てて、ビンッと弾く真似をすると
落ちていたナイフが飛んで、伝助とずずへ。

ピキーン‥笹葉でナイフを撥ねる。

伝助「魔法やなんてファンタジーな力を使いよって!」

動く・喋る・食べる・寝る・笑う・泣く‥DXな生きてるぬいぐるみも、
じゅうぶんファンタジーなのだが‥。

ずず「熊猫の兄貴っ。アイツはオイラの大切な きょうでぇにござんす‥

オイラの手で、悪い夢から覚ましてやりとぉにござんす」

伝助「それが いちばんや! ずず、手伝いしたるさかい
思う存分にやったれ!」

源左衛門「俺たちも力を貸すぞ」

落ちているナイフを蹴りあげ、手にする源左衛門。

総右衛門「さようにござりまする」

メアリー「ボウヤ、しっかりおやりよ‥ケツは あたしたちが持ってやるからさぁ」

淑「あの子の苦しみも、早く解いてあげたいですわね」

ルナ「神は私たちに苦しみを与えられます‥

でも、それは私たちが乗り越えられるものと思し召しくださいますからこその試練。

ならば、乗り越えてみせるのが私たちの成すべきこと!

恐れず怯まず、力の限り‥進むのみです!

苦しさも辛さも、溺れそうになるものたちへ手を伸ばし

出来うる限りのことをする‥さぁ、進みましょう‥力を合わせて!」

伝助「ほな、付喪堂ft.ずず☆

いっちょ行きまひょかあぁぁ!!」

付喪堂+1は、ピーノに向かって走り始めた。

ピーノ「ぬにゅにゅにゅにゅ(ぬぬぬぬ)! ボクの邪魔はさせましぇん!」

右手をグリングリン回転させると、真っ赤な炎が大地から噴出す。

ルナ「ヴァダー、アネモス、防ぎなさい!」

水の羽根・ヴァダーと風の羽根・アネモスが炎を弾き

ルナ「イグニス、トゥルパ、撃つのです!」

火の羽根・イグニスと土の羽根・トゥルパが光線で地を撃ち、ピーノの動きを止める。

ピーノ「金の毒蜘蛛、銀の蝙蝠、我に従いて骸を増やしぇ!」

巨大な毒蜘蛛と蝙蝠が現れ、襲いかかる。

源左衛門「行くぞ、メアリー」

メアリー「あいよ!」

ウサギが跳ねて、猫が駆ける‥息の合った連係攻撃で、毒蜘蛛を斬りつける2人。

源左衛門はナイフ、メアリーは短剣。

刃を閃かせて、毒蜘蛛の吐き出す糸を斬り伏せると
源左衛門はナイフを投げて、毒蜘蛛の目を潰す。

続いてメアリーは毒蜘蛛と地面のわずかな隙間に入り込み

腹部へ短剣を突き立てると、いっきにジャンプ!

叫ぶ毒蜘蛛に、源左衛門はウサギの牙を撃った。

土ぼこりを立てて、沈む毒蜘蛛。

超音波を発して、辺りを破壊する巨大蝙蝠‥爆発を潜り抜け
総右衛門「まっしぐらにござりまするっ」

走る弾丸・総右衛門。

蝙蝠をかく乱してる間に、隙をついて淑が

淑「女性主権あたーくっ!」

ほねっこブースターで、加速しての体当たりを放つ。

淑「言いなりになるなんて、いけません! お仕置きしますわよっ」

気絶し、姿を消す蝙蝠をキッと睨んだ。

ピーノ「にゅにゅにゅにゅ! まだまだでしゅ!」

両手をグリングリンと回転。

地を割って、岩石で出来た巨大なマリオネットが出現。

ピーノ「魔法は強いでしゅ! 頭の中にイメージしたのが出てきましゅ!!」

操る仕種をすると、岩石マリオネットが動き出した。

ずずはなんとかピーノを取り押さえようとするが、なかなか近づけないでいる。

ルナ「羽根よ!」

編隊を組む黄・緑・白の羽根に乗り、伝助は岩石マリオネットに挑んでいった。

伝助「長距離と短距離の間の距離は、中距離ぃぃぃ!!!

すっごく当たり前の、誰もが知っていることを力強く叫んで放つ、ササニシキ!

よろめく岩石マリオネットへ、伝助はさらに笹寿司を撃つ。

ピーノ「にゅにゅっ! 負けるもんでしゅか!」

さらに激しく操るピーノ。

暴れまわる岩石マリオネットに

伝助「もうアタマんきたで! 僕が主役の時にと思ぉて取っといた技やけど‥

今、見せたらぁぁぁ!」

伝助は、右手に持った笹葉の刀身に
左手の肉球をブニッと押し当てる。

伝助「笹葉紅葉☆」

すると、笹葉が紅葉色に輝きだした‥伝助は跳ぶ!

空中で縦に何回転もし、そのまま岩石マリオネットへ真っ向斬り!

伝助「伝ちゃんスパーク!」

ビシッと乱斬りを決めて着地。

斬られた岩石マリオネットは、脆くも崩れ去っていてく。

ピーノ「うわぁぁぁ!」

魔法を破られ、吹き飛ばされる‥『クッ』と悔しさを強くにじませながら
ピーノはまだ立ち上がった。

ずず「もうやめねえか、ピーノ!」

ピーノ「うるしゃいっ」

手を振り、魔法で石を飛ばす。

ずずは鉄串で石を撥ね、そばへと近づこうとした‥

ピーノ「来るな、来るな、来るなぁぁぁ」

両手を上げると、地面から火が噴きあがる。

総右衛門「ややっ!? まだあのような力が残っておりましたかっ」

慌てて、総右衛門がずずを助けに行こうとするが

源左衛門「待ってくれ、総右衛門」

と、止める。

総右衛門「しかしっ」

伝助「こっからは、ずずにやらさなアカンことや‥でないと、ピーノも助からへん」

メアリー「そうさ‥ボウヤが気張るときだよ‥見守っちゃあくれないかねぇ」

淑「あなた、そういたしましょ」

総右衛門「う、うむ‥」

ルナ「『子どもたちよ、私たちは ことばや口先だけで愛することをせず、
行ないと真実をもって愛そうではありませんか』ヨハネの第一の手紙3章18節‥

愛すればこそ、その愛を伝えるために立ち向かわなければならない時がある。

今が、ずずさんにとってその時なんですね」

ずず「うわっ! アチチっ」

苦しみながらも、ずずは歩みを止めない。

ピーノ「来るなと言ってるんでしゅっ、じぇによしの前に じゅじゅ!

お前から倒してやりましゅよ!」

手を振るたびに、爆発が起きた‥飛び散る小石に額や顔、胸に胴、手足を傷つけられ
それでも怯まずに前へ!

ずず「やれるもんならやってみやがれってんだ!

それでも俺はオメェを抱きしめる‥もう2度と離さねぇように
ギュウゥゥッと抱きしめてぇんでぇ! そんためなら、これくらいの火や石
なにが痛いの恐ろしいのかってんだ‥オイラぁ、オメェと離ればなれになっちまうのが
よっぽと恐ろしいし‥悲しいや!」

目に涙をいっぱいためて、ずずはピーノへと進む。

ピーノ「来るな、来るな、来るな‥」

手を振り続けるピーノ。

爆発はまだ次々と起きる‥『うわぁぁ!』吹き飛ばされ、転がる ずず。

さらに追い打ちのように、周りが爆発し炎上。

ピーノ「じゅじゅ!」

思わず叫んだピーノ‥煙と炎の中から、ずずはフラフラと出てきた。

ずず「へ、へへ‥呼んだか? ピーノ。

もう‥ちょっと待ってろ‥今行くからな」

鉄串を杖代わりに、ずずは歩を進めた。

ピーノ「もう来るな‥来ないでくだしゃい‥」

力なく手を振る‥爆発も火も、少しずつ小さくなっていた。

ずず「すまねぇな、ピーノ‥

最後まで残ると言ったオメェの寂しさ、オイラ‥なーんにも考えてやらなかった。

寂しがり屋で、おっかさんが大好きなお前が
いきなりおっかさんを失って、どんだけ辛かったか‥

テメェの辛い悲しいばかりを思っちまって、そばにいる大切なヤツの苦しいを
オイラわかってやれなかった‥バカだ、オイラ大バカだ!

勝手に旅に出て、勝手にオヤジを恨んで世間をすねて‥なんて自分勝手なヤツなんだ。

ピーノ、すまねぇ‥こんなオイラを許してくれ‥」

見れば、ピーノも泣きじゃくっていた。

ポロポロと涙を落とし、鼻水もかまわず‥泣きじゃくる。

ピーノ「辛かったでしゅ、寂しかったでしゅ‥不安で不安で‥怖かったでしゅうぅぅ!

おかあしゃんも、じゅじゅも‥誰もいない暗い場所で
まるまって寝たときは、このまま目が覚めなければいいのにって‥

朝起きると、よけいに辛くなりましゅた‥捜しても捜しても見つからない。

もう会えないって‥もう2度と会えないって‥そう思うのが、いちばん怖かったんでしゅ!

だから、じゅじゅを恨むことで忘れないようにしようって。
間違ってるってわかってましゅたけど、じゅじゅを忘れたくなくて‥ボクは、ボクは‥」

あとは言葉にならないピーノ。

ずずは、そんなピーノの前に立った‥ピキーン‥甲高い音を発して、鉄串が折れる。

『あっ』体重をかけていたせいで、バランスを崩して倒れかける ずず。

『あぶない!』ずずを助けようと、ピーノは手を広げ‥
そのまま、ずずはピーノを抱きしめた。

ずず「やぁっと‥着いたな」

ピーノ「じゅじゅ‥お帰りでしゅ」

ずず「あぁ‥ただいま」

2人は、失くした時を取り戻すように‥
しっかりと抱きしめあった。
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