付喪堂綴り・1

□第1章・3
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伝助「よかったな‥源左衛門」

源左衛門「あぁ‥世話になった、伝助」

伝助「なに生ゴミくさいことゆーてんねん」

メアリー「それをいうなら水くさいだろっ」

フーっと怒りながら

メアリー「まぁね‥ありがとよ、伝助。

けどさぁ、兄弟ってのはいいもんだねぇ。

ケンカもするけど、支えあう‥あたしも兄弟が欲しくなっちまったよ」

淑「アラ、お姉さんでしたら私がなって差し上げますわよ」

ルナ「あ、それなら私も♪」

メアリー「よしとくれよ、口うるさい姉だの天使な姉だの‥

堅苦しくてやってられないさね」

ルナ「いいじゃないですか、なかなか天使の姉さんっていませんし」

淑「口うるさいのではありません、女性の品位と地位を向上させるべく
意見を申しているだけでございますのよっ」

メアリー「あぁもう、わかったわかった。

なら、ついでに餡子を妹にして
パンダの妹も持ってやろうじゃないか。

付喪四姉妹だねぇ♪」

そういうメアリーに笑う伝助たち‥メアリーも明るい笑顔をしていた。

ピーノ「じゅじゅ‥」

ずず「なんだ?」

ピーノ「ボクたち、忘れられてましぇん?」

ずず「みてぇだな‥」

2人はゆっくりと伝助たちの輪に入ってみる。

伝助「うひゃひゃひゃひゃ♪付喪四姉妹で、アイドルデビューでけるんとちゃう」

なんて、大笑い。

ずず「へへへ、へへへ」

ピーノ「フュフュフュ、デヘへヘ」

いっしょに笑ってみる。

一同、一緒に笑っている‥

伝助「うひゃひゃ♪ところで‥なーん いっしょに笑ぅてけつかんねん!」

いきなり、厳しいツッコミという名のロシアンフックを左右でお見舞いする伝助。

『ガっ』『ぐぇっ』と声を発してKOされるピーノとずずだが‥

すぐに抱き起されて、歓迎の抱擁責め。

かわるがわる、力いっぱいギュウウウ♪

頭をなでたり、頬をスリスリしたりと大歓迎。

ピーノ「じゅ、じゅじゅ‥なんかおかしくないでしゅか‥コレ」

ずず「よ、世の中 こんな受け入れ方もあるんでぇ」

ピーノ「そ、そうなんでしゅか‥」

続くこと5分‥歓迎責めという、史上初の受け入れ方を経験して
ピーノとずずは、伝助たちの仲間になった。

ピーノ「イロイロ、しゅみませんでしゅたっ(すみませんでした)!」

深々と頭を下げる。

ずず「兄ィ、それに熊猫のアニキ! オイラ‥男が男に惚れたってヤツでさぁ!」

伝助「BL的な意味でかっ!?」

ずず「ちげぇやす(違います)! 漢気に惚れたってことで」

伝助「あぁ、ソッチな」

メアリー「なにをどうドッチに向けたら、そんな風にとれるんだいっ」

ツッコむメアリーは気にせずに、伝助とピーノ、ずずは話を続けている。

『フー』と怒るメアリーをルナと淑がなだめている。

ピーノ「熊猫しゃん、今日からはお兄しゃんと呼ばせてくだしゃいっ」

ずず「アニキ! オイラもお願げぇいたしやす!」

2人は頭を下げて頼む。

伝助「アニキやお兄さんや、イケメンや王子様やなんて呼ばれてもぉ♪」

照れ笑いをしているが‥

総右衛門「後半、なにやら違った呼びかたが混じっておりましたな」

源左衛門「‥聞き逃しておこう」

総門「御意」

伝助「ほしたら みんな仲間やなんやし、家族や♪

我ら、大家族や! 広い草原の小さなお家の、狭い部屋に住む おっきな家族やぁぁぁ♪」

ピーノ「『草原』部分があのドラマ参考みたいでしゅが、
やったでしゅうぅぅぅ♪お兄しゃん、ありがとうございましゅっ」

ずず「アニキ、お世話になりやすっ。

源左衛門に兄ィ、ありがとうございやした」

大喜びの一同。

が、ふらつくピーノ。

慌てて、ずずが支える。

ずず「どうした!?」

ピーノ「ち、力が‥身体に力が入りましぇん」

総右衛門「ふむ‥思うに、魔法とやらを使いすぎたのではなかろうか。

ピーノの力はまだ成長段階で、それを無視して使ったがゆえ‥

まずは、ゆっくり休んで地からを回復するのがよかろう」

伝助「怨みで力を暴走させた代償っちゅーこっちゃな‥

でも、休んだら元気になれる。

心配ないで」

ずず「よかった‥」

ピーノ「そうでしゅか‥よかったでしゅ」

ルナ「あら‥何か忘れている気が‥」

そうだ‥銭好だ。

倒れたままの銭好を伝助たちは担いで、この世界の入り口前まで移動した。

総右衛門「閉じぬということは、ピーノ殿の世界でもなく
やはり銭好氏の作り出した世界にござりましたか」

ピーノ「じぇによ‥いや、おとうしゃんの世界でしゅか‥?」

ずず「あぁ、オヤジはおっかさんを追い出したことを後悔していてな‥」

ピーノ「後悔‥ずっと、謝りたかったんでしゅね」

伝助「その後悔の念が、何かに作用して‥この世界がでけたんかも知れへんな」

源左衛門「どちらにせよ、データを取ってあるから分析せねば‥だな」

伝助「そやな。分析して、調べ取ったほうが えぇな‥」

総右衛門「ん? 若、これは‥」

気を失っている銭好の頭上に、なにやら光が‥それは文字へと形を変えた。

伝助「なんや?‥これは‥」

『紺色の商人』と書かれている。

伝助「色と職業‥なんでこんなんが?」

まだわからないことだらけの新しい世界‥伝助たちの新しい冒険の始まりだった。


2010年1月


元気になったピーノはその後、ずずとともに浜子の部屋を訪れた。

驚いていた浜子だったが‥すぐに喜びの涙と変わり、固く抱きしめあう。

『おかあしゃん』『おっかさん』想いのこもった声が聞こえていた。

実は、目を覚ました銭好は
伝助たちと話をし‥不安と焦りから気を迷わせてしまい
今まで激しく後悔と自責の念にさいなまされていたこと、

そして踏み外した道と知りながら、流れのままに諦めていたことも苦しかったと告白。

ピーノとずずは、そんな父を許した。

銭好も、捨てるように物置小屋に置いてしまったことを謝る。

ぬいぐるみを見れば、浜子を思い出してしまい
いたたまれない気持ちに何るから‥それで遠ざけてしまったのだと話していた。

そんな父を浜子に引き合わせるべく、ともに連れてきていたのだ。

銭好と浜子‥久方の対面は、2人の心の傷を瞬時に癒す。

結局、銭好は今の会社をたたんで
元いた家に戻ることにした‥もちろん、浜子といっしょに。

独りで住んでいた家を引き払い、浜子とともに思い出の家を改装して
カフェでも始めるとのこと。

酷い取り立てに苦しんでいた者も、安どの笑みを思い出すことが出来た。

『あんさんら‥銭は人を滅ぼしもするし、助けてもくれまっせ‥

大切に使わなあきまへん‥よぉ覚えきなはれや』

2度と借金をしないように‥銭好は、すべてを放棄して
皆に言って聞かせた。

社員たちはしたたかなもので、すぐに同業へと移ってしまったが‥

『このご時世、すぐに仕事がみつかって よかった』と泣いて喜んでいた。

『おとうしゃん、なじぇに大阪弁を喋りましゅか?』と、ピーノ。

銭好は『金貸しをやるのに‥
まずは雰囲気だけでも掴もうと、とりあえず大阪弁をしゃべっていた』と
関西の人のイメージを誤解しているカミングアウト。

カタチから入る主義のようで、とりあえず今後
大阪弁は使わないことと‥浜子と仲良くすることを約束して
銭好、浜子、ピーノ、ずずは家族だんらん‥

短い間ではあったが、幸せな時間をすごしたビーノとずず。

2人は、巣立ちの時を迎えていた。

浜子「ほんとうに行ってしまうの?

ピーノ、ずず‥辛くなったら‥寂しくなったら、いつでも帰ってくるんですよ」

ピーノ「はい、おかあしゃん。

でも、だいじょうぶでしゅ‥ピーノはもう泣きましぇん。

ボクは強い男になって、おかあしゃんや おとうしゃんを守るんでしゅ!」

ずず「おっかさんやおとっつぁんに会いたくなったら、オイラぁ目を閉じまさぁ。

まぶたに浮かぶ、おっかさんにおとっつぁん‥会いたくなったら‥会いたくなったら、
オイラは目をつって‥で、すぐに飛んで会いにきまさぁ♪」
会いに来るんかい!

ピーノ「じゅじゅと2人、力を合わせてやっていくでしゅ♪

2人だけじゃないでしゅし‥おにいしゃんも、仲間もたくさんいるんでしゅよ」

ピーノは、伝助に『頼れるお兄さん』を感じ
弟になると決めた様子。

浜子「そう‥よかったわ。

ピーノ、ずず‥元気でいるのよ‥お母さん、あなたたちのためにも
ずっと元気でいるからね」

銭好「ピーノ、ずず‥たまには帰ってきてくれよ‥待ってるからな」

ピーノ「はいでしゅ♪」

ずず「東京土産を持って、会いにきやすぜ」

握り合わす手と手‥一見すると人とぬいぐるみだが、心は立派な親子である。

カビた仲間の弔いは手厚くすると
約束もしてくれ、ピーノとずずは
親元を巣立った。
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