付喪堂綴り・1

□第2章・2
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付喪堂

五月晴れの昼下がり。

ずずは今日も、セクトウジャのメンバー説得に出かけている。

ピーノはルナと夕飯の買い出し。

きっと、チョコレートを買ってと
ねだっているだろう。

伝助、缶吉、ごん、ねんは
マシンの製作にいそしんでおり

君兵衛、餡子はパトロールに出動中。

珍平は付喪大福の在庫を数えている。

総右衛門と淑は、制御室でハートフィールドのデータを解析中で‥


ハートフィールド

そよ風が吹いている野原。

駆け抜けるはウサギとネコ。

後からついてくる白色の僧侶・バイスと黒色の武闘家・シュバルツ。

2人はハートフィールドに巣食うモンスターたちと戦い、自身のレベルアップに努めていた。

見守る源左衛門とメアリー。

メアリー「2人とも、レベル10になったね‥ちょっとアイツが遅れてるか」

シュバルツは、相変わらず銃でのみの戦い方。

源左衛門「拳を振るえぬ武闘家か‥しかし、それを乗り越えるのもアイツの心の戦いだ。

今は見守ってやろう」

メアリー「あいよ」

シュバルツ「きゃ!」

襲い掛かるモンスターに、思わず気圧される。

源左衛門「雪永(せつな)、相手から目をそらすな!」

雪永‥『祈白 雪永(いのしら せつな)』というのが
バイスとなる、心のジョブ・僧侶と 心の色彩・白を持つ者の名前。

シュバルツ「この!」

ジュウザーを連射する。

メアリー「ほらほら、どこ見て撃ってんだい!

そんなんじゃあ、当たるものも当りゃあしないよっ、墨彦!」

墨彦‥『伽黒 墨彦(かぐろ すみひこ)』というのが
シュバルツとなる、心のジョブ・武闘家と 心の色彩・黒を持つ者の名前。

源左衛門「なぁ、メアリー‥」

メアリー「なんだい?」

源左衛門「傷は痛むか?」

メアリー「ああ、コレかい」

伝助との格闘で、傷ついた額を指さした。

メアリー「なんともないさ。

ルナが丁寧に縫ってくれたから跡も残ってないし
淑のクソ不味い薬も効いたしね」

源左衛門「あれから伝助がな、お前にも俺にも
悪いことをしたと謝ってきてな‥」

メアリー「おやおや‥どうしてまた?」

源左衛門「女性にとって、顔を傷つけられるということが
どれだけ たいへんなことかわかっているヤツだからな‥

アイツはアイツなりに、気にしていたんだ」

メアリー「そうかい‥あのバカっ。

今夜でもまた、からかってやろうかねぇ」

楽しそうに言うメアリーに

源左衛門「手加減してやれよ」

微笑む。

メアリー「なにごとも本気でやんないとねぇ」

イタズラっぽい笑顔のメアリー。

メアリー「ねえ、おまえさん」

源左衛門「なんだ?」

メアリー「もし‥もし、あたしがホントにあのとき裏切っていたら
おまえさんはどうしたね?」

源左衛門「ん‥考えたこともなかったが‥

そうだな、俺のこの手でお前をとめていただろうな。

他の誰でもない‥俺自身の手で‥お前を抱きとめてやるさ、あのときのように」

メアリー「うふふ‥ありがとよ、おまえさん」

源左衛門の肩に、メアリーは首を預けた。

互いを愛しく想う気持ちにあふれる2人の向こうで
バイスとシュバルツは‥かなり苦戦していた。


『ほらほら、しゃんとおしよっ!!!』


優しさも厳しさも、きっとそれは親心。

甘えさすばかりが親でなし、厳しく当たるばかりが親でなく‥

けど親だって時には悩むし、不安になるときだってある。

だから、感謝をこめて伝えましょう。

『おかあさん、いつも ありがとう』

想う心に咲く花は、きっと赤いカーネーション‥

母である方も、母になろうとしている方も
さぁ‥赤いカーネーションの花束をどうぞ。



「不可思議萬請負業 付喪堂綴り」
第2章『赤いカーネーションの花束をどうぞ』完
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