彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル6・5
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蝕は身体の力を失った緋色の髪を鷲掴み、乱暴に持ち上げる。

蝕「ボウヤの心、読ませてもらうわね」

仮面を取ると、ルナに似た美しい顔立ちが覗く。

緋色の虚ろな瞳に自分の瞳を重ね‥

蝕「へぇ‥そうなんだ‥うふふふふ、可愛い子‥」

緋色は姉を大切に想い、戦わしたくはなかった。

父を早くに亡くした綺赤家の、たった1人の男である緋色。

父の代わりに、姉や母を助けていくと決意はしたが

余りにも押さなかった緋色は実際、働くにも働けず

その気持ちとは裏腹に母の仕事による収入で送る暮らし。

大学をしっかりと出て、社会に出てほしい‥働いて、大切な女性と回り逢って

孫の顔でもそのうち見せてくれたら親孝行さと母の茜は笑う。

そして、姉の紅は

すでにあちらこちらでバイトをしながら、いずれ継ぐ店のために

パティシエールの勉強中で‥

無邪気というか純粋というか、素直さゆえに傷つくことも多く

ドジな性格は見ていてヒヤヒヤするし、愛しくも思う。

大切な姉を守ってやりたい‥弟であり、あまり記憶のない父の幻を追うように

姉の紅を守ると固く心に誓ったものを

またも、姉を守り切れていなかった現実に打ちひしがれた。

しかも、姉は命を賭して怪物と戦っていた‥国が対抗する組織を作ったはいいが

組織は姉たちをも未確認破壊脅威として銃を向け

守っている人間たちも

国に同調して真実を見ようとも知ろうともせず

『あんな奴らブッ潰せ』『あんなのにいられたら迷惑』と

眉をひそめて言っている。

ネットの書き込みはさらに辛辣・悪辣で‥

誰もかれもが、ネットの向こうに顔を隠して

命が奪われる現実を笑いものにしては、誰かに罪をなすぐりつける。

それがさも正当な意見のように罵り

自分に起きていないことには関心が無いように、罵倒する。

誰もが批判し、誰もがこの事態を面白がっている。

命が奪われるかもしれない現実

暮らしを破壊され、泣いている人々がいる現実

それらすべてを、『興味本位』というフィルターにかけて

傍観しては、誹謗中傷する。

緋色「人間なんて自分が苦しくならないと、なにもわかろうとしないんだ!」

蝕「そんなの、とっくに知ってるよ!」

ピオレータ「自分だって人間じゃない。

私は元人間‥いまじゃ紫色のゴーストよ、フフ」

緋色「結局ボウヤは、大好きなお姉ちゃんを守れなかったばかりか

姉に到底追いつけないような力だったことがショックで

八つ当たりに暴れて斬りかかったってところかしら。

まぁね、どうあがいても何も出来ないことはショックで鬱々としちゃうだろうけど

なんてことはないわ、やっぱりガキが駄々こねてるだけじゃない。

よくある青春の1ページって言えば聞こえはいいけど

タダのガキの始末が悪い駄々ね‥付き合ってらんない」

ピオレータ「じゃ、ヤっちゃう?」

蝕「もう、すぐに殺そうとしないの‥やめときな。

こんなボウヤ、手にかけるのもメンドしいわ。

このまま悔やんで悩んで、もがき続けたらいい。

もしもイヤになったら‥そうね、街を歩けば街路樹があって

いい枝振りの木もたくさんあるし、川だってドブ川も薄汚い河川もアチコチに流れてるし

高いビルもいっぱいあるわ‥幕引きぐらいなら、できるでしょ? ボウヤ。

どれを選ぶかはボウヤ次第よ‥お好きなものを選んで頂戴、うふ♪」

掴んだままの髪で首を近づけ、耳元で囁くと無造作に倒す。

蝕「さて、それじゃ帰りましょうか」

ピオレータ「私、お腹すいたっ」

蝕「アンタも私も、食べなくても死なないわよ」

ピオレータ「それでも、空いたっ」

蝕「はいはい、だったらお茶でも飲みましょうか」

再び空間を斬って、消え入ろうとする。

緋色は悔しさと苦悩の叫びを空へ地へと吐いた。

その慟哭に蝕は振り返り

蝕「そうだ‥ボウヤ、もしもその気があるんなら

私のところへ来てもいいわよ。

ボウヤの力、私がちゃんと使ってあげる‥育ててあげる。

そうね‥強い男にしてあげるわ」

艶っぽい流し目を緋色に送り、堕天使は亡霊を連れて消えて行った。

緋色「俺は‥俺は‥」

淀んだ瞳から、涙があふれて止まらなかった。


病院

緋色が廃棄された病院にいたころ‥

翠季は命を救うために、力の限りを尽くしているこの場所にいた。

看護師が近づいてきて

看護師「ご家族のかたですか?」

と、尋ねる。

翠季「い、いいえ。

通り合わせた者なんですけど、チョット急いでて私

あの男の人とぶつかっちゃって‥」

看護師「ああ、それならあの方、外傷は見当たりませんし

レントゲンやCTの結果も、どこも意識不明の原因は見当たりませんでした」

翠季「え? じゃあ‥なんで」

看護師「脈拍も血圧も異常なくて‥意識だけが戻らないんです。

ただ、原因とは言えないんですけど‥」

翠季「なんですか?」

看護師「あの患者さん、末期の胃癌でした。

それによる衰弱かと検査したんですけどね‥」

翠季「直接的な原因ではなかったってことですね」

看護師「ええ‥なにか患者さんについて思いだしたことがありましたら
すぐに教えてください」

翠季「はい」

看護師は集中治療室へと入っていった。

翠季「末期の‥」

ふと気付いたら、手に遥希の上着を持っていた。

背中におぶって病院へ来たとき、ストレッチャーに乗せるわずかな時間に
とりあえず上着を脱がした看護師から受け取っていた物だった。

翠季「勝手にごめんなさい」

一度、両手を合わせてペコリとお辞儀。

身元について何かわからないかと、上着のポケットをまさぐってみた‥

暗い灰色のフードのついたトレーナー。

翠季「免許とか、どこかの会員証やポイントカードの入ったおサイフとか
なにか身元のわかるもの‥」

ゴソゴソとしてみると

翠季「ん?」

手に当たった物‥取り出してみるとそれは、何かのスイッチ‥起爆装置のようだった。

翠季「え‥えぇぇぇぇぇ!!!」

『お静かにっ』看護師さんに怒鳴られて

翠季「す、すみません」

ササッと玄関を抜けて、とりあえず外へ。

翠季「こ、これ‥押しちゃダメっぽいスイッチよね‥

っていうか、爆弾を爆発させるヤツよね‥」

刑事ドラマや2時間サスペンスで見かけるソレに

ちょっと顔をひきつらせながら、とりあえずツァイフォンで伝ラボに通信してみた。

すると、缶吉が通信に出て

翠季「あ、もしもし‥」

経緯と事情を缶吉に話し、起爆スイッチを写メにとってメールで送る。

缶吉は伝ラボで画像をスキャン。

解析し、各情報網と照らし合わせてみると

缶吉「ほっほぅん‥こりゃ、一連の爆破事件に使用された爆弾の起爆スイッチかも知れん」

翠季「えっ!?」

現在、警察で調査中の事件だが

その最新データと照らし合わせて、ほぼ間違いないと断定。

缶吉から、警察への連絡と起爆スイッチの取り扱いを伝えられ
スイッチの機能を破壊した。

翠季「缶吉くん、私‥ちょっとここにいるね!」

翠季はツァイフォンの通信を切る。


伝ラボ

缶吉「あらら‥切ってしもぉた。

ま、仕方がないのぅ‥翠季ちゃんには翠季ちゃんの思うところがあろぅし。

1人でも抜けるんはキツイが、もーちょっと気張ってくれよ! みんな!!」

そう戦闘中の仲間たちに通達する。


都内

アズゥ「グリゾンビー! 突っ込みな!!」

威勢のいい声でアズゥはゾンビーたちを鼓舞する。

ゾンビーたちに一定時間攻撃力を高める魔法『ホグーム・カセィール・アスワド』を
最大の強化呪文『ニハーイィ』を付けて唱えた。

通常、個体にかける魔法だが

最大強化したからこそ、一斉に多数へ効果与えるのはアズゥの閃き。

アズゥ「広くかけた分、効果は薄いが‥それでも!」

かなりの戦闘力を発揮して、ゾンビーたちは付喪堂を襲う。

ベルデ「アイツらの足を止めてくれれば助かる‥そのあいだに僕はセクトウジャを!」

雪永「桜花さん!」

桜花「はいよっ」

2人はツァイフォン手にし、耳に当てると『着心!』

ディスプレイから生心力がほとばしる。

ツァイフォンからあふれた生心力は、まず左腕のマモーブを装着させる。

鎧の左手首部分に、スロットがあり

右手に持ち替えたツァイフォンを、スロットに装填。

すると左腕に集中していた生心力がはじけて、

心の色彩に合わせたカラーリングの鎧・マモーブが全身を一気に包んだ。

雪永「白色の僧侶 プリースト・バイス!」

桜花「桃色の召喚士 サモナー・ローズ!」



まいど♪儲かりまっか? ボチボチでんな☆

伝助でおます♪

お話しの途中でっけど、ちょこっと解説を僕がいたしますんにゃわ。

マモーブ‥セクトウジャの身を守るだけでなく

戦闘力や生心力を増幅させる戦闘アーマーだす。

これは、人それぞれに持っている心の防具『心の壁・ハートウォール』っちゅーもんの
データを基盤に、僕が恐るべき知能と驚きの技術力で開発・設計・作製した物でおます。

ハートウォールは心の壁‥誰もが持ってる心の防具‥

でもこれは、強固過ぎたら独りぼっちになってまう諸刃の剣みたいなもんどす。

で、心の主それぞれに壁は厚かったり薄かったりするんでっけど

わかりやすぅに説明しますと

紅ちゃん→薄い

翠季ちゃん→厚かった→今、薄い

蒼唯→めっちゃブ厚い

こんな感じどす。

ほんで、ハゲたおっちゃんツールツル‥ちごたっ!!!

激しゅうなる戦いに、強化したマモーブを投入しましたんや。

『マモーブMk-2 (マーク2)』

携帯電話型のツァイフォンを折りたたんで左手首のスロットに装填しますと

マモーブMk-2が完全起動。

同時に、折りたたんだツァイフォンの表面がディスプレイ・タッチパネルとなりまして

携帯電話型ツールから、スマートフォン型ツールに機能が変化しますねん。

もちろん、ツァイフォン自体の強度も増しておますし

それに加えてマモーブの力によって、ツァイフォンは保護もされておりまっから

破損することはまず あらしません。

つまり‥Mk-1よりもMk-2は、さらにヒーローちっくな装備になりましてん♪

ではでは、続きをお楽しみください。

セクトウジャの皆さん、はりきってどうぞっ
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