彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル6・7
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正徳「犯罪は‥ストーカー、イジメ、虐待と
陰湿さや凄惨さを増している。

それこそ、心が壊れてしまっている人間のようにね。

それを傍観している人間の心もまた、壊れ始めているのかもしれない。

自分には徹底的に甘く、他人には過ぎた厳しさを突き付け

弱者であろうと、組むべき理由があろうと無視し

理由も犯罪を犯したという事実さえも関係なく

レッテルを張り散らかしては排除する。

陰口、ネットでの書き込み‥自身が正しいと思いこみ
言葉の暴力を正義とすり替え、振りかざすヤツラに正義などない。

あるのは殺伐とした自己満足と虚栄心だけだ!

そんな人間の心が壊れていると言わずして、なんといえばいいのだろう‥

そう考えるときがあるよ。

だからといって、犯罪者となった者の罪を軽くしろとは言わないし

より厳しく罰するべきとも思う。

ただ、罪を憎んで人を憎まず。

そして赦すということも、忘れられすぎているとは感じるよ。

人が人を裁く‥その重さを感じなければならない。

世の中は罪だらけだ。

国が犯す罪もある。

国の強引な行動によって泣かされる人々の傷も罪ならば

戦争によって傷つけあい、殺し会うことも罪。

それを忘れて、戦争の放棄を投げ捨てたこの国は

今や国守軍を持っている‥その力の矛先は、手をつなぐべき君たちにも向けられている。

それは大きな罪だ。

社会のせいだ、時代のせいだと言うつもりはない。

だが、こんな社会を作りだした我々国民にも罪があり

戦争という最も愚かしい国の犯罪は、国民が国に犯させることでもある。

今のSSDや国守軍の様を見れば一目瞭然だろう?

国は隙があれば戦争をしようとする。

軍需産業はもちろん、あらゆるところで経済は潤うからだ。

私は戦争というものは、国の尊厳や威信と建前や大儀を抱えるが

とどのつまりは金儲けだからだと感じている。

あらゆる経済は、戦争によって利益を生むところと破たんするところに淘汰され

『国民』という、国にとって金がかかる弱者も含めた人間たちを

国にとって利益かそうでないかを分けられる機会であり

すべてが都合よくできている。

その国の暴走‥謀略を唯一、止められるのは国民の意志だ。

国あっての国民だろうか?

ちがう。

国民あっての国だ。

我々がその土地に根付き、愛しているからこそ土地は国と呼ばれる」

翠季「なら‥世界もまたそうですね。

国も世界も人の心が決めるもの」

正徳「そうだね‥キミの言う通りさ。

国も世界も心が決める。

警察は罪を犯したものを捕えるが、罪の本質を見失ってはならない。

なにが正しくてなにが悪いのか。

それこそ、心でしっかりと見極めなくてはならない」

翠季は正徳の言葉に『闘士』というものがなんたるかを知った気がした。

自分もそんな闘士になりたいと強く想う。

正徳「お嬢ちゃん‥キミの仲間は今、戦っているんだろ」

翠季「はい」

正徳「なら‥アイツは‥屋鋪は今、うかつに手を出せない状況にある。

とすれば、次に狙うのは‥」

おそらく遥希だろう。

正徳「よし‥お嬢ちゃんと話せてよかったよ。

なにかあったらいつでも連絡してくれ」

名刺を渡して

正徳「といっても、定年も近い老いぼれ刑事だが」

笑いながら正徳は病院へ向かった。

翠季「私‥強くなりたいな。

あの刑事さんのように強くなって、自分の使命を全うしたい。

もっともっとレベルを上げて、心を鍛えて

本物の闘士になりたい、賢者でありたい」

固く心に誓う。

拳を握り、また病院へと向かう。

正徳の背中を追いかけるわけではないが、遥希のことが気にかかる。

過去、苦悩、凶行、犯した罪。

その心が壊れているからこそ、内なる世界で声にならない声で助けを求め

誰かの手が差し伸べられるのを、乞うていたのだろう。

そしてその手を振り払い、傷つける自分を自分でコントロールできず。

割れた隙間から迷い込んだ遥希の心の世界は

荒涼としたハートフィールドを、翠季は崩したいと思う。

そして、光のもとへと連れ出したいと願った。


病院内

爆破事件によってけがを負った人たちが大多数、病院へと運ばれてくる。

その中に檸檬がいた。

ビルの影にフラフラと座り込んでしまった檸檬。

なんとか立ち上がり、重い足を引きずるように歩いてきたが
途中でまた座り込んでしまう。

そこがちょうど、爆破事件の起きた映画館。

すると、事件に巻き込まれた怪我人と勘違いされ

この病院へと運びこまれてしまっていた。

意識不明や大量の出血といった重篤・重症の者はおらず、

救命センターではなく各病院に搬送されている多数の負傷者たち。

伝助式がっちり守りますんにゃわセキュリティーシステム・フォロー回路が
働いた結果、最小の被害で済んだことを人間たちは認めたがらない。

そして都内各病院のうち、中でも設備が整い

大人数の医療スタッフを有するこの病院には
かなりの負傷者が搬送されていた。

檸檬はフラフラする足を抑えて、

ケガにより苦しんでいる人たちの手当ての手伝いを始めていた。

檸檬「だいじょうぶですか? すぐに看護師さんが来てくれますから」

ガーゼで傷口を抑えて、声をかけたが

檸檬が看護師でないと知ると『余計なことしないで!』とヒステリックに怒鳴られる。

万が一、傷口から細菌が入ったら‥看護師でない人間の手当てを
いらないものと拒む人間もいる。

が、その言葉はさらに檸檬を追いつめてしまう。

『ギルルルル』檸檬の耳に入る唸り声。

檸檬「な、なに?」

恐怖の表情は消えないまま、檸檬は声の在り処を捜す。

すると、玄関に付喪ライドが5台停車した。

降りてきたのは餡子、珍平、君兵衛、ごん、ねん。

檸檬「あれは‥餡子ちゃん?」

珍平と君兵衛はホイピエロイドやグリゾンビー、なによりもSSDと国守軍が来ないか警戒。

ごんとねんは、綺麗な看護師さんと ふれあい中で

餡子は愛・伝えまフォン-浅葱から専用武装の『みちのく小町』を展開。

各医療ツールや酸素供給、さらに防御用のビームシールド展開など
支援能力に特化したバックパックだが

大きな注射器型の突撃武器『きりたんぽ』や

メス型の薙刀『なまはげ』

カプセル薬型のミサイル『いぶりがっこ』など

武装もかなり充実している。

餡子「戦うナイチンゲールだっぺさ!」

その迫力は有無を言わせず、治療はみるみる間に進む。

檸檬「す、すごい‥」

自分を拒否した人間も、餡子の手当ては受けていて

『ありがとうございます』と礼を言っていた。

餡子「ん? あんれまぁ、檸檬ちゃんじゃないの」

檸檬「私‥」

餡子「手伝ってケロ」

ニッコリ微笑む餡子。

なぜここにいるのか?

仲間たちが戦っているときに、なにをしているのか、していたのか?

問わず、頼ってくれる餡子に檸檬は‥

檸檬「う‥うん!」

暗い恐怖のトンネルも、少し出口が見えたようで。
先程、激しく断った人のガーゼを代えると

『ありがとうございます‥』と、ややバツが悪そうに礼を言われる。

檸檬「いえ‥」

どう受け答えしていいかわからず、檸檬は黙々と作業を続ける。

檸檬「なんで餡子ちゃんの言うことは聞くんだろう?」

餡子「そんなこと、わだす(私)自身もわからねぇだよ。

だども、わだすはわだすの出来ることさ精一杯にやる。

それだけだよ。

聞いてくれても、聞いてくれなかったとしても のし。

わだすだけじゃねえ、缶吉さんも あんちゃんも君兵衛も

わだすの仲間はみんなそうさ‥もちろん、檸檬ちゃんもな♪」

檸檬「え‥」

餡子のまなざしに、応えたいと檸檬は思った。

そうか‥餡子はやはり『覚悟』を持って行動している。

『決意』や『覚悟』というものを心に持って

それが他の心を揺り動かすのだと感じた。

これまでにもそう感じ、そう行動したいと思えど

迫りくる恐怖に瞳を逸らしてしまう自分が情けなく、悔しい。

檸檬「私も頑張らないと!」

助けを求める人たちのため、戦士は立ち上がろうとしていた。

檸檬「あ‥そうだ」

そういえば先程『ギルルルル』と

低い獣のような声を聴いた。

檸檬「あれは‥」

なんだったのだろう?

思いだして、辺りの様子を伺う。

しかし、あのとき聞こえた声は聞こえず‥

檸檬「私の気のせいだったのかな?」

そう呟いて、また痛みで苦しむ人たちのところへ行こうとした時だった。

『ギルルルル』

檸檬「えっ!?」

振り返るが、姿はない。

君兵衛「檸檬さん!」

ライオン(ぬいぐるみ)が檸檬に跳びかかり、押し退けたところへ炎が落下。

檸檬が先程までたっていた場所が破裂し、巻き起こる爆発。

餡子は咄嗟に、みちのく小町から防御ビームシールドを照射。

爆風と炎を防いだ。

ごんとねんも、患者たちを守る。

次に真上から高温の熱気。

見上げると、病院の天井に異様なふくらみを見せる炎の塊があった。

餡子「な、なんだぁ!?」

今にも破裂しそうな塊を

珍平「どすこーい!!!」

2階へ上がる階段途中の手すりを踏み台に
大きな戦槌・めんたいこを持ってジャンプ。

珍平「どっせーーーい!」

叩きつけるハンマーで、炎の塊を打ち出した。

壁を突き破り、飛んだ塊は外で破裂。

宙で爆発したために、大きな被害は回避できた。

君兵衛「餡子、ここにおる人たちを逃がしぃ!」

珍平「相手はおそらくホイピエロイドたい! ここは おいどんたちが食い止めるっ」

餡子「だども!」

ごん「ぶひひっ」

ねん「うんもー」

トンファーのトンカツと金棒のビーフスロガノフを持ち、やる気を見せる。

檸檬「あ、餡子ちゃん! この人たちをお願いっ」

立ち上がり、ツァイフォンを手にする檸檬。

餡子「檸檬ちゃん」

檸檬「これが、私に出来ることだから」

ツァイフォンから取り出す長柄の斧・イエックス。

幾度も立ち上がってはまた、座り込んでしまう自分。

それでも仲間たちは手を差し出し続け、そ手を掴んで立ち上がる。

ピーノは初めて会った時、自分を『お母さん』だと言った。

でも‥そんな強さは自分に無い。

強くありたいと思う心はある。

いつか、いつか母になる自分は強くなれるのだろうか?

強くなりたい‥もっともっと強く!
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