彩心闘記セクトウジャ・2

□レベル6・9
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ハートフィールド

扉から出てきた蒼唯、檸檬、雪永、墨彦、桜花、翠季。

見渡す限り、何もない水面。

遠くに小島がポツンとある。

翠季「ここは‥」

墨彦「なんだ? なーんもねぇ‥ってか、沼? ちっせぇ島?」

翠季「この水、深さ自体はぜんぜん浅いです」

桜花「なんで知っとっとね?」

翠季「私、1度ココに来たんです‥ホイピエロイドの心の主の‥このフィールドに」

雪永「心の主の‥あぶない!」

不意を突いて、爆破粘液が吐きかけられる。

蒼唯「アルド・ビンニー!」

土を操る魔法を撃って、防御壁として使い難を逃れた。

墨彦「ふざけんな!!!」

ジャンプして右キック。

キックが当ると同時に体を捻り、左脚で裏蹴り。

着地し、足元を払う水面蹴りから左アッパー、右エルボーと畳み掛ける攻撃を見せる!

『ギルルルル』デスクリミナル動きを止めるどころか、さらに力を入れて暴れる。

さしもの武闘家も吹き飛ばされて

雪永「墨彦!」

声に、左腕でガッツポーズで大事ないことを告げた。

蒼唯「負けておいて、ガッツポーズとはだらしのない!」

デスクリミナルの膝上をトンと蹴って、いともたやすく頭部へ駆け登る。

見おろす形でブルュッタを数発撃つ!

肩を蹴って間合いを取り、すぐにダッシュ!

が、吐き出した爆発粘液で視界をふさがれ

蒼唯「くっ!」

気付いたときにはすぐ目の前‥

雪永「蒼唯さん!」

飛びかかり、蒼唯の肩を抱いて転がる雪永。

すぐそばで爆発が起きた。

追うホイピエロイドへ桜花のピュートが打たれる。

檸檬「とおりゃぁぁぁ」

イエックスを振り上げ、力を込めて振り下ろす。

とっさにガードする左腕ごと、檸檬は叩き斬ったが‥吹き出す血がまた、爆破燃料。

檸檬「きゃあぁぁ!!」

マモーブで守られているとはいえ、激しくダメージを受けた。

墨彦「この!」

蒼唯と墨彦は、同時キックを撃って、雪永と桜花もコンビネーションアタック。その間に檸檬は立ち上がる。

檸檬「うぅぅ‥」

翠季「檸檬さん、だいじょうぶですか!?」

檸檬「う、うん‥」

マモーブが守ってくれた‥

だが、なぜ自分が傷ついて誰かの心を救わねばならないんだろう?

死んでしまうかもしれない戦いに身を投じ、何故?

恐怖と迷いがまた、頭を持ち上げる。

翠季「みなさん、ホイピエロイドは‥あの人には事情があります!

犯罪を犯した人ではあるけれど、それには事情があって」

檸檬「ねぇ‥事情があるんなら、罪を犯してもいいの?

こんなに暴れて、命まで奪われそうになって‥

そんなことも、事情があるなら許されるの? 許していいの!?」

翠季「檸檬さん?」

檸檬「私、ずっと考えてた‥なんで悪い人たちのためにまで
私たちが戦わなきゃいけないんだろうって。

SSD、国守軍、それを支持する人たちも

私たちのことはいらないって言う‥捕まえろ、倒してしまえ‥そう言うじゃない!

イジメをしていて、心がホイピエロイドになった子がいたときも‥

あれは、翠季ちゃんが仲間に入ってくれた時だったよね」

翠季「あの時の‥」

それは7月のこと‥

翠季が自身の苦悩を乗り越え、セクトウジャに加わったときのことだった。

深森広夢(ひろむ)という、母子家庭の中学生をイジメていた
クラスメートの女生徒・有畑 雅は、その心の歪みからホイピエロイドを誕生させてしまう。

確かに、親からの愛情不足という理由はあったのだが

だからと言って人をイジメる理由にはならない‥

どんなことがあってもイジメていいワケではない。

檸檬「あの子も、なんで助けなくちゃいけなかったの?

私たちが傷ついてまで、助けるべき子だったの?

これまでもホイピエロイドはいた‥それって全部、心が悪い人たちがいたからだよね!

モンスタリアも、人の心の醜さが集まって生まれた怪物なんでしょ?

それじゃ‥それじゃ人って‥」

蒼唯「この世界で最も恐ろしい怪物なのかもしれないな!」

ブルュッタを撃ち、デスクリミナルを後退させる。

雪永、墨彦とホイピエロイドに攻撃。

蒼唯「ならどうしたい、檸檬‥このまま戦うのを辞めるか?

それとも、モンスタリアの仲間になるか? SSDでも、国守軍でも、仲間になるか!?

お前の勝手だ、好きにするがいい。

だが、これだけは言っておく!

紅は弟がいなくなっても、お前たちが戦っているとなったとき

引き戻して戦おうとした。

私はそれがいいと判断し、紅もその時納得した‥弟のことが、どれほど心配だったか。

それでも、みんなのところへ行くと‥だが、伝助に弟のことを優先しろと言われ

やっとのことで弟を捜しに出た。

アイツは、どんな時でも誰かのために戦っている。

家族、友人‥見も知らぬヤツでも助けようと、アイツは戦っている。

私はいい‥戦うことを、命を奪うことを教えられて育って来た人間だ。

SSDの前身組織に入れられて、国の汚れ仕事を嫌と言えずに

この手を多くの血で汚した人間だから‥

だが、紅はどうする? 雪永も墨彦も、桜花も翠季も、そしてお前も!

戦いとは無縁の日常で生きて来て、ある日突然に闘士となった。

心の力で戦うものに。

だが、紅はいつも真剣だ。

墨彦も雪永も、桜花も翠季も真剣だ。

ならば、お前はどうなんだ!?

私は、すくなくともお前も真剣に戦っていると知っている。

怖がりだが、臆病だが、身体を張って戦ってきた戦士だと思っている!

迷ってもいい、戸惑ってもいい。

だが、戦場で目を瞑るな! 常に相手を見据え、仲間に目を配り、己の進む道を見失うな!

そんなことは、家に帰ってからでいい。

でなければ、お前自身の命が危険に晒される。

それは、仲間全員の命も危険に晒されるということだ。

コイツたちは‥墨彦たちは、どんな時でも仲間のことを真っ先に思うヤツラだから!

自分のことよりもまず、仲間のことを大切に想う‥そんなヤツラを危険に晒すな、檸檬!」

昔‥誰よりも大切だった仲間を撃ち殺した蒼唯の慟哭。

どん底を生き、回り逢った大切な心の仲間たち。

自分の命よりも、守りたいと想う仲間だから、蒼唯は叫ぶ。

桜花はピュートを振るい、デスクリミナルを打つ。

雪永「檸檬ちゃん。

僕はね‥戦いを経て、少しだけわかったような気がするんだ。

悪に堕ちるのは簡単だ‥不倫も不正も、暴力も戦争も

やろうと思えば、驚くほど簡単にできてしまう。

なら、悪に堕ちるのが本当なのか?

違うんだよね‥難しいからこそ、人は正しく生きようとするんだよ。

悪に堕ちるのを踏みとどまるのが、

僕たちがこの世界に生まれてきた意味なんじゃないかなって‥

それが、人の価値なんだって。

もしかして、それを神様は望んでいるんじゃないかな。

人の真価を、求めているんじゃないのかな」。

翠季「どうして? なんで? 悪い人まで助けなきゃならないの‥

そう思う心も、壊れかけの心になって

いつしか取り返しのつかないほどに、壊れちゃうんだと思います。

私たちは、壊れる心がこれ以上でないように考えていかなくちゃいけない。

もしも壊れた心が出たときは、みんなで戦って、そして考えて

壊れた心が出てしまったその意味を、もっともっと考えて

いつの日か、壊れた心が出ない世界を作らなきゃいけない。

私たちは心の闘士だから。

心を授かり、生まれてきた命なんだから

神様の望みを叶えてあげないとですよ‥檸檬さん」

墨彦はデスクリミナルへブラックダイヤモンドを放ち、皆を援護。

桜花「そうたい。

神様は いつか笑顔がいっぱいの、命が安らぐ世界ば望んでるんやけん

私たち命は、それを叶えてあげんと いかんのよ。

神様はお願いされっぱなしやから、たまには私たちでお願いば、叶えてあげんとね」

墨彦「おりゃ!」

飛び蹴りでデスクリミナルを飛ばし

墨彦「人が心の中から、イヤな感情を捨てれるような

そんな世界を作るために俺たちは戦ってるんだろ?

拳を振るう罪も苦しみも、いつか終わる時が来るように‥

今、戦わなかったら、もっと多くの命が傷ついて

もっと多くの心が壊れちまう!

それじゃ いつまでたっても、笑顔であふれる世界は実現しねえからな」

起き上がるホイピエロイドと組みあう墨彦。

墨彦「オイ! 聞こえてるか!!

これ以上暴れるのはやめろっ。

もう戦いは終わりだ、終わらせなきゃいけねぇんだ!」

雪永「あなたはなんのために戦うんですか!? そこまでして、なぜ誰かを傷つけるんです!?」

『ギルルルル』デスクリミナルが叫ぶと

水面が隆起して、表面に凹凸の無いヌルリとした人型の何かに変化する。

人間と比べて、およそ3倍の大きさ。

一方は男性、一方は女性。

フォルムによって、性別だけ判別できた。

翠季「あれは‥」

おそらく、男性型の怪異体は暴力によって遥希を苦しめた者の象徴。

女性型の怪異体は欲望によって遥希を穢した者の象徴。

翠季「虐待‥それによって心を壊された人が、人を傷つけてしまった‥」

両怪異体の周りに、平均な人間大の怪異体。

それはきっと、遥希が殺めて来た人たちの象徴。

檸檬「そんな‥」

桜花「檸檬ちゃん! 目を逸らしたらダメとよ!!

逸らせばそこに、傷が出来る‥傷は心を蝕んで、やがて壊すんやと思う。

目を逸らしたから助かるワケじゃない

知らん顔してれば、安全なもんじゃない

私たちは、常に立ちふさがる困難と向かい合わないと

心は壊れていくだけになってしまうとたい!」

女性型の怪異体に鞭を振るう桜花。

檸檬「ど、どうして心が壊れたりするんだろう‥

そんな人って、初めから壊れてるんじゃ‥」

雪永「生まれついて、心が壊れていると‥サイコパスとか言うって聞きましたけど

それでも僕は、ほとんどの人がそうじゃないと信じたいです。

そうでなきゃなんか‥寂しいじゃないですか。

若いと言われても、子供と言われても、青いと言われても、甘いと言われても

僕は寂しい人になりたくない!」」

男性型の怪異体へ十字槍を突き出す。

翠季「この世界は、そんなにイヤな、寂しい世界なのかな‥私もそんな風に思いたくない。

そう、今の私は‥そう思いたくない」

翠季も、女性型の怪異体へ長剣を振り下ろした。

蒼唯「グダグダ言っても言わなくても、火の粉は確実に降りかかってくる。

ならお前はどうする? どうしたい!?

黙って見続け、自分も心を壊していくか

身体は傷ついても、心とともに強くなっていくか‥好きにしろ。

お前の命であり、お前が歩く道だ!」

告げると、蒼唯はホイピエロイドへ猛ダッシュしキック!
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