彩心闘記セクトウジャ・3

□レベル11・1
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都内

闇夜を翔るクリムゾン。

背中に乗るのは暗黒騎士・キル。

追うセクゾースト。

赤色の勇者 ブレイヴ・ルージュは装心して、レットウを手にクリムゾンを追った。

紅「はあぁぁぁ!」

スピナーでダッシュ! ジャンプして斬りかかる紅。

クリムゾンに騎乗するキルはアガマルを手にレットウと激突。

真夜中に走る火花を捨てて、2人は斬撃やパンチを高速で繰り出した。

クリムゾン「マスター!」

紅「ちょっと黙ってて!」

クリムゾン「まぁ!」

戦竜は火を吹く。

勇者はその火をくぐってルージュ・パーツで射撃。

キル「クリムゾン、俺を降ろせ!」

クリムゾン「で、でも」

キル「いいから降ろせ!」

クリムゾン「はい」

戦竜は地上すれすれを飛び、キルは飛び降りる。

紅「緋色!!」

装心を解き、ブレイブ・ルージュはジャンプキック。

キルは左腕でキックを払い、アガマルで紅を突く。

紅もレットウでアガマルを打ち払い、左手で

紅「勇者☆お姉ちゃんの本気ゲンコツ!!!」

姉の本気が、弟の履き違えている愛情を叩く。

キル「ぐっ!」

倒れそうになるのを堪えて、キルは二段突き。

紅「そんなのっ」

レットウは突きをパパンと払いのけて、そのまま左後ろへ大きく反らせ

いっきに振り抜く紅!

クリムゾン「このっ」

紅と緋色の間に入る戦竜。

紅「邪魔しないでって言ってるでしょ!」

クリムゾン「そう言われても、マスターをお守りするのが私の役目ですからっ」

紅へと尾を打ちつけるクリムゾン。

ガードを取るが、その重みにダメージを受ける。

紅「痛いなぁぁぁ!」

キレてクリムゾンに体当たり。

さらに回転しての後ろ蹴りで、倒れるクリムゾンへもうひと押し。

クリムゾン「きゃあ!」

その隙に斬りかかるキルへ振り向きざまの

紅「本気ゲンコツ!!!」

若干、省略して叫んだ技はさきほどの『勇者☆お姉ちゃんの本気ゲンコツ』

鼻っ柱を叩かれて、キルも思わず後ずさって尻餅‥暗黒騎士への変化も解けてしまう。

はぁはぁはぁ‥紅は息を切らせているが、レットウを手にまだ闘志は衰えない。

そんな姉の強さに、驚きを隠せないでいる緋色。

紅「緋色‥なんかお姉ちゃん、久しぶりに緋色の顔を見た気がする」


紅は強くなった。

これまでの戦いで得た経験はもちろんのこと

勇者としての覚悟を魔涙・デスティアーとなってしまった
光臣神父の心を救うことで知った紅。

神父はまだ立ち上がりも問いかけへの反応も見せないが

皆が嬉しいときは幸せそうな笑顔を浮かべ

皆が悲しいときは励ますような微笑みを見せ

その心はいつか回復すると確信させるものだった。

だから紅は立ち上がる。

心を救うため、守るために。


キル「なんで姉ちゃんばっかりそんなに!!」

それは嫉妬‥力を与えられた緋色が、姉を超えられないが故の嫉妬。

『力』は与えられたままでなく、

その力をさらに強くするために己を磨くことで強さを増していく。

緋色は、伝助も認めるその剣の才を磨くことなく

堕天使に与えられた力のままに、姉を襲うしかないがため

姉との差に取り戻しようのない開きがあることに気づいていない。

いや‥気付こうとしていない。

紅「緋色‥家へ帰ろう‥竜さんも連れてきていいから」

子犬や子猫を拾って帰るような感じでサラッと
クリムゾンのことも話す勇者。

クリムゾン「マスター!」

火球を吐く。

紅はその火球を切り払い、跳んで戦竜へパンチ。

紅「ゴメン‥少し黙ってて」

どさっと倒れるクリムゾン‥気を失った様子。

緋色はアガマルを手に立ち上がる。

紅は着心を解く‥姉と弟、互いに刀を手に対峙する。

紅「緋色‥」

緋色「姉ちゃん‥」

戦う意識が膨らみ始め、砕けたコンクリートや空気をビリビリと振るわせる。

緋色「俺は、姉ちゃんに戦いを止めさせる」

紅「私は、緋色を家につれて帰る」

同時に駈けだす紅と緋色。

緋色「うおぉぉぉ!」

斬り上げる刀は紅の腕をかすめ

紅「はあぁぁぁ!」

斬り下ろす刀は緋色の肩口へ深々と食い込む。

刃は裏を向いていて‥

緋色「ふざ‥けんな‥」

峰打ちで倒される緋色。

気を失った緋色のそばで紅はヨロヨロ‥力が抜けて座り込んだ。

弟を殺してしまうかもしれない恐怖に勝ち、戦いを終えた紅は安堵の表情。

紅「ゴメンね‥緋色」

打ち据えた肩を案じる。

仄かな光は回復魔法。

緋色の傷は治り、眠っていた。

紅はもしかしたなら、自身の身体に何かあっても構わないと覚悟をしていた。

それで緋色を連れて帰れるなら‥と。

それでも、緋色助けられないままに果ててしまうかもしれない怖さや

緋色をその手にかけてしまう恐怖が拭いきれないでいたのだが

紅の覚悟は『緋色の目を覚まさせる』という想いを導き

今夜、襲い掛かってくる緋色と刃を交えた。

仲間に頼るでなく、自分が乗り越えなければならない戦いだった。

結果‥緋色の暴走を一時的に出はあるが、止めることができた。

後は緋色へどう、説得するのか、納得させるのか‥想いを届けられるのか‥だ。

『よっこいしょ』なんて声を出しながら、ようやく立ち上がり

セクゾーストのそばへ寄る。

紅「どうやって連れて帰ろう‥」

緋色とクリムゾン‥紅は悩んだ。

『勇者ちゃん』

声がして振り向けば、電柱の上に座る堕天使がいた。

紅「蝕‥」

蝕「ずいぶんと強くなったじゃない。

ドジっ娘最弱勇者ちゃんだったのにねぇ」

紅「いい加減、緋色を返してもらうよ」

蝕「だから、勘違いしないで。

ボウヤは自分の意思で、私についてきたのよ。

力がほしい‥それって男の子なら、誰もが願うことなんじゃないの?」

紅「緋色の力は間違ってる! 力の使い方も間違ってる!!

力は誰かのために使ってこその力なんだよ。

緋色は自分のためにだけ使ってる」

蝕「勇者ちゃんを戦いから遠ざけるために‥それも立派な理由なんじゃないのかしら」

紅「これは私がやろうと私が決めたこと。

それを力ずくで、やめさせようとするのは私、間違ってると思う。

力で私を止めようとするのっておかしいよ。

なんでも力が強ければいいの? 力で解決すればそれが正しいことなの?

そんなのおかしい!」

蝕「頑固な勇者ちゃんねぇ。

弟の言うこと聞いてればいいのに‥私の妹みたいで ちょっとムカつく」

電柱から飛び降りて、スッと着地。

ゴルゴダを持ち、穂先を紅へ向けた。

蝕「とにかくコッチもイロイロあってね‥悪いけどボウヤはまだ倒させない。

連れてこいって言われてるし」

紅「誰から? 誰からそう言われてるの!?」

蝕「話す必要はないな」

紅「だったら余計に、緋色は渡せない」

着心する紅。

蝕「へぇ、かなり本気ね」

紅「当たり前でしょ‥ふざけて戦いなんて出来ない!」

まず蝕が短槍で突いてくるのを避け紅は

身体ごと突っ込んで蝕を押退かせ、離れ際に横一文字の斬撃。

短槍で受けて抑え、そのまま肩で紅に当たる蝕。

態勢を崩されながらもレットウを振って
刺しにくる蝕をけん制した。

蝕「もう、イライラするわね」

紅「だったら邪魔しないでよ」

蝕「イヤよ、コッチにはコッチの都合ってモノがあるの」

紅と蝕はさらに激突。

攻撃の威力を増す堕天使を凌駕する勇者。

蝕「ホント、強くなっちゃって」

タタンと地面を踏むとそのまま背面跳び蹴り。

紅は蹴りから逃げることなく、自ら額をぶつけることで逆にガードととし

そのまま押し倒して、蝕へパンチを放った。

蝕「がはっ!」

勇者の拳と地面に挟まれ、頭部が激しく軋む。

紅「ゴメン‥でも、緋色を助ける邪魔をするなら
いくらルナさんのお姉さんでも私は倒す‥あなたを倒す」

蝕「ほぅら、それが人間よ‥自分の都合で、相手を生かしも殺しもする」

紅「話をすり替えないで。

最初に聞く耳を持たず、槍を向け襲ってきたのはアナタじゃない」

蝕「だから私は殺していいのね」

紅「誰がそう言ったの? 私は倒すと言ったのよ‥命を奪う気はない。

話をすり替えないで、勝手に決めこまないで!」

蝕「ったく!」

紅を突き飛ばし、跳ね起きてゴルゴダを構える。

紅もレットウを構えて蝕を強くにらんだ。

クリムゾン「う‥うぅぅ‥」

ようやく気を取り戻すクリムゾン。

薄っすらと明けた瞳に映るのは、倒れた緋色。

その向こうで紅と蝕が戦っていた。

クリムゾン「マスター‥蝕さん‥」

助けるべく、フラフラとようやく起き上がる戦竜。

スッと息を吸い、勢いよく吐き出すと火炎が巻き起こる。

紅はとっさに避けて、難を逃れる。

クリムゾン「蝕さん!」

蝕「クリムゾン、アンタはボウヤを連れて帰んなさい」

クリムゾン「ダメですっ、私も一緒に戦います!」

蝕「なに言ってんのよっ」

クリムゾン「私、あなたに地上へ連れてきてもらって嬉しかったんです。

天獄には、私の居場所はなかったから‥」

蝕「アンタじゃ繊細過ぎて、あそこじゃ暮らせないでしょうね‥

日々、殺し合い喰らい合う世界だから。

でも、この人間世界だって同じようなものじゃない」

クリムゾン「いいえ‥そんな人間も多いですけど、マスターは優しい」

蝕「そう? 別にそれらしいことをしているようには思えないけど」

クリムゾン「いえ、マスターは不器用な人ですから
愛情や優しさをしっかり伝えられないだけです。

初めて会ったとき、私を見て怖がらなかった‥

それからずっと、誰かに接するのと同じように私に接してくれた。

天獄では、強いものに弱いものは徹底的に従い
逆らうことは決して許されない。

逆らったときは喰われて消えるだけ‥それが掟」

蝕「そうね‥光の欠片さえない場所よね」
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